NHKラジオアーカイブス「声でつづる昭和人物史〜臼井吉見」2の記録
カルチャーラジオ NHKラジオアーカイブス「声でつづる昭和人物史〜臼井吉見」2を聴く。1946年、臼井吉見は雑誌『展望』の初代編集長になる。太宰治を紹介。59歳で『安曇野』の執筆を始めて10年掛けて全5巻の大著完成。『獅子座』は未完に終わる。録音の音源は「みんなの茶の間、話題の人」R1からで、敗戦の日を振り返っている(1974年10月8日放送、聞き手:中西龍アナウンサー)。敗けた時とても嬉しかったと言う。左翼でもなかったし臆病だったから、呑気で無責任ゆえに嬉しかった。敗戦によって日本の過去が展望できた。未来は分からんがとにかくここまで歩んできた日本の姿というものが非常によく展望出来た。『展望』という雑誌を作ったのは、やっぱり過去をもう一度展望しよう、見直そうということ。敗戦の日は日本が象徴的に生き返った日だと述べている。安曇野という地名はない。『安曇野』には、『暗黒日記』を書いた清沢洌という人がきちんと紹介され引用されている。ものぐさで怠け者の、聡明な、明治の初年から日本はダメだと分かってた(あんなに早く諦めていた人はいない)西園寺公を主人公にして幕末から明治中期までを書きたいと抱負を語っている。西園寺公望は青春はパリで過ごしてパリコミューンにぶつかっている。10年に及ぶフランス留学。西園寺公は教育勅語に根本的な疑問を持った人。一国に強制的に通知させるものは道徳ではないと、明治天皇に教育勅語は間違っていると進言。青年西園寺公望を通して、軍事主導の間違った時代の原点を見る小説。
なお、西園寺公望は晩年に教育勅語の改訂案を提起したが、岩井忠熊『西園寺公望』岩波新書にその全文が付録としてついている。
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