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死刑執行人シャルル=アンリ・サンソンが見たフランス革命

NHKBSプレミアム『ダークサイドミステリー』「美しき処刑人が見たフランス革命 なぜ理想が恐怖に?」を視聴。フランス革命の死刑執行人シャルル=アンリ・サンソン、フランス革命で2700人以上を処刑。克明な日記。サンソン家は処刑の特殊技術を継承する一族。サンソンはパリ高等法院という重要な司法機関に所属する官吏で、国王から給料を貰っている。サンソンは国王の代わりに自分は正義の剣を振るっているという確信があった。「あなたの悪名高い職業は、ただの市民と一緒に食事をすることさえ許されないものです」「死に関わる仕事を忌まわしく思うのはごく自然な感情です。彼が人間を殺して血を流している限り反感を抱かれるのは当然のことでしょう」。映画『ベルサイユのばら』池田理代子原作。出演:❶松浦義弘さん。著書に『フランス革命とパリの民衆』『ロベスピエール 世論を支配した革命家』など。ルイ14世時代以来の度重なる戦争、特にアメリカ独立戦争への参戦をしたことがきっかけで財政が完全に破綻状態に陥った、それにもかかわらず第三身分の平民だけが重税を課されて特権身分は免税だった、これがフランス革命の直接の原因。当時は17世紀後半の「刑事王令」という刑事裁判に関する手続きを定めた王令に基づいて裁判がなされていた。サンソンは裁判所で出された判決を正当なものと考え、それを忠実に粛々と実行・執行した。人間は権利において平等だと宣言した「人権宣言」はそれ以前の社会の全面的な否定という意味があり、歴史家の間では「アンシャン・レジーム(旧制度)の死亡証書」と形容する人もいる。当時のスローガンとして「自由か然らずんば死か」というスローガンがあるが、国王を犯罪者として処罰して共和国を守らなくてはいけないという考え方が強かった。元国王ルイ16世をギロチンが設置された革命広場で公開死刑することによって、過去の悪しき封建社会との決別を国民に非常にはっきりと印象付けた。出演:❷西川秀和さん(「サンソン家回顧録」翻訳のほかアメリカ歴代大統領を研究)。出演:❸フランス国立科学研究センター研究室長アンヌ・シモナンさん。//身分により異なる処刑方法を平等に、無用な苦痛を与えないようにすべきというサンソンの意見書がきっかけで開発された処刑道具ギロチンの発明。それまでの重い剣を振るうやり方よりはるかに正確で合理的。サンソンはひもを引くだけでいとも簡単に処刑できるようになった(⇨処刑される人の苦痛を減らすという目的だけでなく、処刑人自らの心理的負担の軽減という理由もあった?)。身分によらず平等にと目指した道具は、見境もない最悪の大量殺人機械に。少しでも人道的にというサンソンの願いは、より残酷に彼の手を血で染め上げていく。死の感覚が麻痺していく人々。元国王ルイ16世の死刑が議会で決まる。国王は憲法によると不可侵な存在であり、サンソンにとってこれはとんでもない話。ギロチンが設置された革命広場でルイ16世はギロチンで処刑。革命の敵とみなされた人々は次々とサンソンの手に委ねられる。シャルロット・コルデ。革命を進める国民公会では議員たちの派閥の対立が激しくなっていく:❶これまで国内での改革の主導権を握り、外国との戦争を進めてきたジロンド派。❷このジロンド派の政治は失敗だと攻撃したのが山岳派。指導者は弁護士出身のマクシミリアン・ロベスピエール。ロベスピエールは理想の革命を目指すため、ジロンド派の排除を決意。ロベスピエールの扇動でパリ市民8万人が議会を包囲、この圧力を利用しジロンド派議員29人を逮捕。ジロンド派議員は抵抗してパリを逃げ出し地方で内乱を扇動。悪化する事態に議会は1793年9月17日『反革命容疑者法』を制定。革命後、政治犯を裁くために新たに設置された「革命裁判所」では、容疑者が身の潔白を訴える弁明も制限された、そして判事と陪審員の下す判決の多くは死刑。サンソンの日記に「判事たち陪審員たちを見ていると死の狂乱とでも呼ぶべき病にかかっているかのよう」。人々が一種の集団的なパニック状態になって、極端な行動が人から人へ伝染することを「病」と表現。❸平原派(中道派)。//ジロンド派の女王と呼ばれた理論的指導者ロラン夫人の言葉「自由よ汝の名のもとでいかに多くの罪が犯されたことか」。バスティーユ襲撃の1ヶ月前、国民議会を率いて貴族と対立、革命運動の先駆けとなったジャン=シルヴァン・バイイ。//革命指導者ロベスピエールは当時、清廉の人Incorruptibleと形容されたが、Incorruptibleは腐敗し得ない人・買収し得ない人という意味。特に憲法制定、国民議会の時は、人権宣言の二大原則である国民主権と権利の平等を徹底的に実現しようと情熱を注いだ。フランス革命で人権宣言が出されたが、人権宣言の下で恐怖政治が起きてしまっている。ロベスピエールは革命初期にはロベスピエールは死刑廃止論を唱えるが、国王裁判では国王の処刑を積極的に主張する。要するに状況とか内外の危機とかそういうものの変化に応じてロベスピエールも変わっていっている。//サンソンの発言「ロベスピエールは斧🪓を使う人で、自分は単なる斧🪓だ」。斧と言っても実際は人間なわけで、人間だけど斧として死刑対象を処刑しなければならないという苦悩。//映画🎬『ダントン』。ロベスピエールの演説「恐怖とは即座に行われ厳格で確固とした正義である」。厳しい法律を制定すると政敵を生み出すだけ。「永続的な粛清システム」が出来上がってしまった。ロベスピエールは遂に「プレリアール22日法」というとんでもない法律を制定。しかしサンソンは、執行しないといけない、自動機械のように。ものすごい犠牲の上に人権宣言は現代まで届けられている。

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