2021桜花賞観戦記～何度目の青空か？～

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この負けそうで負けない感じ、むしろアパパネなんだよな。

私が再びそう呟いた仁川のマイル戦、ソダシが無敗で二つ目のG1タイトルを手に入れた。

はじめに断っておきたいのだが、私はソダシの事が嫌いなわけではない。いや、なんなら好きだ。そもそも私が競馬に嵌ったきっかけには少なからず金子オーナーの馬たちに対する憧憬があったし、亡くなって間もないクロフネに吉報がもたらされたこともこの上なく嬉しい。ただなんというかーひねくれ者の性でしかないのだと思うー強くて人気のある物には抗いたい性分なので恐らく馬券や予想的に私がソダシを高く評価することは今後もあまりないと思う。ディープもそうだったし、キタサンブラックも、アーモンドアイもそうだった。何が言いたいのかは自分でもよくわからないのだけど、自分の感情がまとまっていなかったので文字にしてみた。おそらくこれからソダシが活躍し続ける限り私の馬券はあまり当たらないだろう、でもどこか自分でもそれを望んでいるふしすらあって、また勝てなかったやっぱり強いなぁって言いながらソダシとは付き合っていくのだと思う。

さて、話を桜花賞に戻す。30年前シスタートウショウが94秒の壁を突破し一昨年グランアレグリアが93秒の壁を破った。それからわずか2年、90秒台に突入しようかという恐ろしいタイムで今年の桜花賞は決着した。勝ち時計は1分31秒1、桜花賞レコードにとどまらずコースレコードである。決して高速馬場が向くとは思えなかったソダシがこの時計に対応するスピードを見せたことは今後を考えても非常に大きな意味があるだろう。

好発を切ったソダシを制しストゥーティーがハナに行った。岩田騎手が慎重に後ろを確認しながら内に切れ込んだのはスターホースへの配慮だっただろうか。好位に付けたソダシだったが、間もなく今日も全く折り合えなかったメイケイエールが外からまくるというよりはぶっ放してハナに立った、メイケイペガスターのダービーを思い出して切なくなった。ただメイケイエールの動きに反応する馬はおらずレースは淡々と流れた、前半45秒2はもちろん速いが全体の時計がこれなので展開の有利不利はあまりなかったように思えた。現に共に人気薄ながら途中までハナに行ったストゥーティーと離れた最後方を進んだククナが最後は縺れるように掲示板を争っている。そんな平均ラップを前受けしたソダシは早めに先頭を伺いリードを広げにかかった。直線を向いたところではアカイトリノムスメが勝ってくださいという絶好の位置におり、後ろからの組ではアールドヴィーヴルと(手ごたえは微妙だったが)シゲルピンクルビーが末脚が嵌れば届く雰囲気でコーナーを回って来た。サトノレイナスは出負けからさらにその後ろの馬群の中で厳しい競馬を余儀なくされた。

そして直線ソダシはその真骨頂を発揮する、一瞬でスッと離した操縦性の高さは皐月賞でのアンライバルドを思わせ、また先に抜け出し差が詰まるものの交わさせない二枚腰は4年前のレーヌミノルを思わせた。鞍上とのコミュニケーションがばっちりで、根性と粘り腰があり高速決着に対応されたのでは後続になす術はない。

なんだろうか、ゲートをしっかり出て、毎回好位で折り合う。馬群も苦にせず変な凡走もなく接戦にも強い。そして、何度目の青空か？この馬が走った日に天気は一度も崩れていない。正統派を地で行くこの馬は一体どこまで無敗街道を突き進んでいくのだろうか。

再び惜しくも敗れたサトノレイナスも力は見せている。次回は関東で迎え撃つ立場、距離延長はむしろ歓迎だろう。三度目の正直を。ファインルージュは直線の進路取りに悔いが残る、もう少し迫れた可能性もあった。母父ボストンハーバーでマイルCに向かう可能性もあるがダンスの血に賭けてオークスに向かう手もある。父キズナに早くG1を届けたい。アカイトリノムスメは出し切ったが今回は力負け。ただ後ろには差をつけており府中に戻っての巻き返しを誓う。レイナスと共に国枝２騎強力。アールドヴィーヴルは直線少し弾かれるシーンがあった、不運な不利とも言えるが馬格の差が出たとも言える。素質は確かなのでパワーアップが急務、桜花賞で軽量馬はほとんど勝っていない。ククナもオークスに出られれば面白い存在、府中巧者だし体調が持つならスイートピーSを使ってほしい。メイケイエールはこれでいよいよスプリント路線か。

本当に個性派ぞろいで今年の三才牝馬戦線は過去に類を見ないほどに面白い。物語はこれまでもこれからもソダシを中心に回っていくだろう。冒頭に書いたように危なっかしくも勝利を拾い続ける姿は同じ勝負服のアパパネを思わせるし、サトノレイナスとのライバル関係はジェンティルドンナとヴィルシーナを思わせる。或いは真っ白ではなかったけれど同じ父を持ちこちらは勝てそうで勝てなかったホエールキャプチャも喜んでいるだろうか。

それでも個人的には、ソダシを倒せる夜明けまで強がってみようと思う。