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世界史の針は巻き戻らない

現在起きている右傾化(保守化)を、単なる回帰でなく、グローバリゼーションの終焉と、《近代》の終わりという、大きな時代の流れとして捉える必要があります。

日本の「右翼」というものは、賀茂真淵らの国学や平田篤胤の復古思想によるだけでなく、明治維新による国民国家(nation state)の樹立、即ち日本の《近代-化》の現象として、人類史の規模で考えるべきだと思います。

因みに、右翼と左翼の語源は、フランス革命に由来するそうです。フランス革命期の国民議会において、旧秩序の維持を支持する勢力(王党派、貴族派、国教派など)が議長席から見て右側の席を占め、左側に旧勢力の排除を主張する共和派・急進派が陣取ったことが語源となっているようです。

日本は明治維新によって「国民国家(nation state)」を作ろうとしました。江戸時代の人々には「日本」という概念はなかったはずです。国民国家としての日本の精神的支柱を作るために、「日本精神」の古層を掘り下げる必要がありました。流れとしては賀茂真淵らの国学と、『神皇正統記』があります。「万世一系の天皇」という言い方をしているのは『神皇正統記』ですが、これを書いた楠木正成は室町幕府を作った足利尊氏と対立した、後醍醐天皇側についた武将です。後醍醐天皇は、網野善彦の『異形の王権』が書いているように、それ以前の院政や摂関政治の歴史に比べると、珍しく自ら政治を行なった天皇です(天皇親政)。

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「後醍醐天皇像」藤沢市清浄光寺

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