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ゴッタン

「箱三味線」と呼ばれるゴッタンの低く素朴な音が、打放しのコンクリート壁の会場に広がる。ゴッタンは鹿児島、宮崎など南九州に伝わる伝統工芸品の民族楽器。 主に杉を材料とした板張りに3本の弦が張られている。北九州生まれの私にまったくなじみのない楽器だった。

鹿児島で仕事を始めた40年程前に、ゴッタン奏者・故荒武タミさんを地元新聞社や放送局が取り上げ、初めて知り興味を持った。しかし演奏会などもあったが、仕事にかまけて足を運ばないまま、記憶からほとんど消えかかっていた。ゴッタンも時代の流れとともに姿を消していったのだろうと思っていた。

それが勝手な思い込みであったことを演奏会で知った。3人の奏者(プラス飛び入り1人)の形は違うが、ゴッタンの音色のバトンが今に確実につながっていた。

タミさんの最後の弟子として彼女の生き方ごと演奏を続けている方。学校教育の中にゴッタンを取り入れ子供たちに伝承している方。歌のツレ(伴奏)としてのゴッタンをインストゥルメンタルが可能な楽器にしている方。
三様のゴッタンへの思いを込めた演奏に聞きほれた楽しい3時間だった。

これを企画したのは京都で伝統芸能の研究や情報発信している団体。会場では「ゴッタンを語れ!」という34頁の小冊子も配られた。ゴッタンについての分かりやすい解説や現在の奏者や製作職人の紹介が掲載されている。500円のドリンク一杯でこの冊子とゴッタンライブ。これでは、花見などしている場合ではない。


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