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DVCPROとSX(TBC30)

世界の映像はもうずいぶん前にデジタル化して久しいですが、フィルムなどの光学式映像記録メディアから今のデジタルになる間の時期にアナログビデオという記録方式がありました。
なんて、書く時代が来ようとはね・・・随分変わったものです。その変遷の時代を映像の現場で生きた技術者として記録します。弱り始めた記憶力と感傷にまかせて。

家庭用ビデオの規格競争でSONYのBetamaxは圧倒的に高画質でありながらVHSの低価格と技術普及戦略に敗れました。
しかし放送機器としてのVTRと言えばSONYが唯一のブランドでAmpexなどの他社がVTRを出すことがあってもそれはラベルを張り替えただけのOEMが当たり前でした。
SONYの放送用VTRはアナログ1インチ、3/4U‐matic、1/2BETACAM、デジタルの3/4D1、D2と変遷しながらも、最小サイズはSP(※1)もデジべ(※2)も1/2インチ幅の磁気テープで記録することにこだわって来ました。
そこにPanasonicのDVCPROが割って入るスキがありました。
デジタルビデオ・DVの規格はすでに家庭用として普及しつつありましたが、Panasonicはそれを高速回転で放送用高画質のVTRシリーズDVCPROとして開発(考え方としてはBetamaxがベータカムになったのと同じとも言える?)コンパクトさを活かして屋外や出先で編集できるポータブル編集機を作り放送局にデモンストレーションをかけました。

写真はTRUST Inc.様より

早速、全英オープンゴルフの中継現場でテストとなりましたが、他のシステムとの互換性が無いのでカメラも持ち込まなくてはならないのですが、ENGはFPU(マイクロリンク)で繋いで中継も行う互換性が必要だったり、DVCPRO自体PAL方式には対応していなかったりで実用に供する事はありませんでした。
コンパクトなポータブル編集機という点で、SONYはデジベからMPEG2圧縮するタイプのベータカムSXシリーズを開発、ポータブルVTRを連結して圧縮データのまま編集でき、画質が落ちないという物を作りあげました。

今はもうデータも見つからないのでイメージ図です

MPEG2 422@MLだったかな?
現在のデジタル放送の根幹ともなった規格、MPEG2は時間軸で映像を貫いて平均化してデータ量を圧倒的に減らす事が出来ましたが、そのために常に遅延との戦いが付きまといました。

ところで、これらのコンパクトポータブル編集機には共通の弱点がありました。
振動に弱いことです。
高速で回転するヘッドに振動を与えるとトラックを捉える事が出来ずに破綻する。デジタルは書き込みのヘッダだ乱れると後ろでリカバーできません。
移動中の車内や船内で試しましたが、クッションを沢山敷いてようやく使える状態でした。やがて現場から局内へ簡単に映像伝送ができるようになって、ポータブル編集機のニーズは消えて行きました。

技術解説
※1SP
SONYが開発したアナログVTRのBetacamシリーズを高画質化したベータカムSP
※2デジベ
同じくデジタルベータカム。高画質・高価格でイマイチ普及しなかった。

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