監査サンプリング

監査人が、監査対象となった母集団全体に関する結論を導き出すための合理的な基礎を得るため、母集団内の全てのサンプリング単位に抽出の機会が与えられるような方法で、母集団内の100%未満の項目に監査手続を適用することをいう。  

◇母集団
監査人がサンプルを抽出し、結論を導き出そうとする項目全体をいう。

◇サンプリング単位
母集団を構成する個々の項目をいう。

◆試査
 試査とは、特定の監査手続の実施に際して、母集団(監査の対象とする特定の項目全体をいう。)からその一部の項目を抽出して、それに対して監査手続を実施することである。
 試査には、一部の項目に対して監査手続を実施した結果をもって母集団全体の一定の特性を評価する目的を持つ試査(サンプリングによる試査)と、母集団全体の特性を評価する目的を持たない試査(特定項目抽出による試査)とがある。

①サンプリングによる試査
サンプリングによる試査では、母集団の一部から項目を抽出して監査手続を適用するため、発見リスクをゼロとすることはできない

サンプリングによる試査には、ランダム・サンプリング(無作為抽出法)の適用と確率分布を用いた母集団の特性の推定・検定をすることを目的とした統計的サンプリングと、必ずしもそのような統計的手法を用いない非統計的サンプリングがある。

◇統計的サンプリング
以下の特性を持ったサンプリング手法をいう。
①サンプル項目の無作為抽出
サンプリングリスクの測定を含めサンプルのテスト結果を評価するに当たっての確率論の利用
①及び②の特性を持たないサンプリング手法は、非統計的サンプリングとみなされる。


サンプリングによる試査においては、監査リスクサンプリングリスクとノンサンプリングリスクとに分けられる。

サンプリングリスク
抽出したサンプルが母集団全体の特性を正確に反映しないために、監査人が母集団について誤った結論を形成するリスクである。

◇ノンサンプリングリスク
監査手続の適用の誤りや、監査証拠に対する判断の誤りのリスクである。
抽出したサンプルに対して監査手続が適切に実施されない場合、当該サンプルが母集団の特性を正確に反映しないこととなり、ノンサンプリングリスクが生じる。

②特定項目抽出による試査
監査人は、潜在的に誤謬を含む可能性が高い項目などを判断して抽出し、当該特定項目に対して監査手続を実施する。

注意:
・無作為抽出ではない。(統計的サンプリングや監査サンプリングではない)
・実施した監査手続の結果から、母集団全体にわたる一定の特性を推定してはならない。

 サンプリングによらない試査を行った場合でも、ノンサンプリングリスクは排除できない。
 特定項目抽出による試査においても、サンプリングによる試査におけるノンサンプリングリスクに相当するリスクの存在のほか、/母集団の中で特定項目として抽出されない非抽出項目に潜在し得る誤謬について判断を誤ったり、/非抽出項目に対して実施された他の監査手続が非抽出項目について誤った結論を導いてしまう可能性があるため、/発見リスクをゼロにすることはできない

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