報告基準九 追記情報

監査人は、次に掲げる強調すること又はその他説明することが適当と判断した事項は、監査報告書にそれらを区分した上で、情報として追記するものとする。
(1)会計方針の変更
(2)重要な偶発事象
(3)重要な後発事象

報告基準 九

2 監査人は、次に掲げる事項を監査報告書に記載するに当たっては、別に区分を設けて、意見の表明とは明確に区別しなければならない。

(4) 財務諸表の記載について強調する必要がある事項及び説明を付す必要がある事項

報告基準 二2

◆追記情報
監査人が監査報告書において監査意見とは別に情報として追記するものをいい、強調事項その他の記載事項からなる。

◇強調事項区分
財務諸表に適切に表示又は開示されている事項について、/利用者が財務諸表を理解する基礎として重要であると監査人が判断し、当該事項を強調するため監査報告書に設ける区分をいう。

継続企業の前提に重要な疑義が認められるという事実は、事業活動の継続という財務諸表作成の前提に関わる重大な問題であり、企業に及ぼす影響は著しく重要である。たとえ財務諸表に注記されていても、当該注記について利害関係者に注意を喚起し、企業の状況に関する利害関係者の判断を誤らせないようにするための情報として監査報告書に必ず追記しなければならない絶対的記載事項である。

◇その他の事項区分
財務諸表に表示又は開示されていない事項について、/監査、監査人の責任又は監査報告書についての利用者の理解に関連すると監査人が判断し、当該事項を説明するため監査報告書に設ける区分をいう。


追記情報は利害関係者に対する意見の表明ではなく、情報の提供である。

利害関係者は監査人に対し、単なる財務諸表の適正性に関する保証だけでなく、保証以外の有用な情報の提供を期待する、という期待ギャップが存在する。期待ギャップの解消が追記情報の記載が要求される理由となる。

 追記情報を記載するか否かは、専門家としての監査人の判断による。記載の目的は利害関係者への情報の提供であり、利害関係者の判断に資するものでなければならない。
 追記情報の記載の仕方によっては、利害関係者に誤解を与えるものとして監査人の責任が問われる可能性があるため、監査人は追記情報の記載に当たり慎重に対処しなければならない。

 監査人の責任は、財務諸表の適正性に関する意見の表明によって、情報としての信頼性について保証を与えることにあり、/経営計画等の顛末について予測し、企業の存続そのものについて保証を与えることには及ばない。
 予見的ないし追加的な判断を監査人からの情報として追記情報の記載に含めると、将来における疑義の解消及び企業の存続に保証を与えることになりかねず、監査人の責任の範囲を越えることになると考えられる。

★追記情報として監査報告書に記載される可能性のあるもの
連結損益計算書の売上高と、事業の状況に記載されている連結売上高の金額とが大きく食い違っていること
事業再編を契機として売上計上基準をより合理的な方法に変更したこと

★監査意見と区分して記載する理由
監査意見と同じ欄に記載すると二重責任の原則に反し、利害関係者からの誤解を招き、監査人自身の責任を問われることがある。

■監査基準の改訂2002
従来、除外事項とされていた正当な理由による会計方針の変更
→除外事項の対象とせずに、追記する情報の例示とした。
不適切な理由による変更と同様に取り扱うことは誤解を招くためである。

監査人は、次に掲げる事項その他説明又は協調することが適当と判断した事項は、監査報告書に情報として追記するものとする。
(1)正当な理由による会計方針の変更

2002報告基準七

会計方針の変更理由が明確でないものがあるとの指摘もある点を踏まえ、監査人には厳格な判断が求められる。

会計基準の変更に伴う会計方針の変更
正当な理由による会計方針の変更として取り扱うこととすることが適当である。
会計方針の変更があった場合における財務諸表の期間比較の観点からは、変更後の会計方針による過年度への影響に関する情報提供についても、財務諸表の表示方法の問題として検討することが必要である。

追記する情報には、「監査報告書を添付した財務諸表を含む開示情報」と「財務諸表の記載内容」との重要な相違を挙げている。
財務諸表と共に開示される情報において、財務諸表の表示その根拠となっている数値等と重要な相違があるときには、監査人が適正と判断した財務諸表に誤りがあるのではないかとの誤解を招く虞があるため、追記する情報として例示した。


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