実施基準 一 3 監査要点、十分かつ適切な監査証拠、自己の意見を形成するに足る基礎

監査人は、自己の意見を形成するに足る基礎を得るために、経営者が提示する財務諸表項目に対して、「実在性、網羅性、権利と義務の帰属、評価の妥当性、期間配分の適切性及び表示の妥当性等」の監査要点を設定し、これらに適合した十分かつ適切な監査証拠を入手しなければならない。

実施基準一3

監査人は、十分かつ適切な監査証拠を入手するに当たっては、財務諸表における重要な虚偽表示のリスクを暫定的に評価しリスクに対応した監査手続を、原則として試査に基づき実施しなければならない。

実施基準一4

監査人は、財務諸表項目に関連して暫定的に評価した重要な虚偽表示のリスクに対応する、内部統制の運用状況の評価手続及び発見リスクの水準に応じた実証手続に係る監査計画を策定し、実施すべき監査手続、実施の時期及び範囲を決定しなければならない。

実施基準二4

監査人は、ある特定の監査要点について、内部統制が存在しないか、あるいは有効に運用されていない可能性が高いと判断した場合には、/内部統制に依拠することなく、実証手続により十分かつ適切な監査証拠を入手しなければならない。

実施基準三2

監査人は、監査意見の表明に当たっては、監査リスク合理的に低い水準に抑えた上で、自己の意見を形成するに足る基礎を得なければならない。

報告基準一3

重要な監査手続を実施できなかったことにより、自己の意見を形成するに足る基礎を得られないときは、意見を表明してはならない。

報告基準一4

監査人は、監査の実施において、内部統制を含む、企業及び企業環境を理解し、これらに内在する事業上のリスク等が財務諸表に重要な虚偽の表示をもたらす可能性を考慮しなければならない。

実施基準一2

監査人は、企業が利用する情報技術が監査に及ぼす影響を検討し、その利用状況に適合した監査計画を策定しなければならない。

実施基準二6

監査人は、企業の内部監査の目的及び手続が監査人の目的に適合するかどうか、内部監査の方法及び結果が信頼できるかどうかを評価した上で、内部監査の結果を利用できる判断した場合には、/財務諸表の項目に与える影響等を勘案して、その利用の程度を決定しなければならない。

実施基準四3

 財務諸表の監査の目的は、「経営者の作成した財務諸表が、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況をすべての重要な点において適正に表示しているかどうか」について、監査人が自ら入手した監査証拠に基づいて判断した結果を意見として表明することにある。
 財務諸表の表示が適正である旨の監査人の意見は、「財務諸表には、全体として重要な虚偽の表示がないということについて、合理的な保証を得た」との監査人の判断を含んでいる。

監査基準第一1

監査人は、適正性に関する意見を表明する場合には、経営者の作成した財務諸表が、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況をすべての重要な点において適正に表示しているかどうか」についての意見を表明しなければならない。

報告基準一1

三 無限定適正意見の記載事項
監査人は、経営者の作成した財務諸表が、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況を全ての重要な点において適正に表示していると認められる判断したときは、その旨の意見を表明しなければならない。この場合には、監査報告書に次の記載を行うものとする。
(1)監査人の意見
…経営者の作成した財務諸表が、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況を全ての重要な点において適正に表示していると認められること
(2)意見の根拠
一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して監査を行ったこと、監査の結果として入手した監査証拠が意見表明の基礎を与える十分かつ適切なものであること
(3)経営者及び監査役等の責任
経営者には、財務諸表の作成責任があること、財務諸表に重要な虚偽の表示がないように内部統制を整備及び運用する責任があること
(4)監査人の責任
…監査は財務諸表項目に関する監査証拠を得るための手続を含むこと、…監査手続の選択及び適用は監査人の判断によること、財務諸表監査の目的は、内部統制の有効性について意見表明するためのものではないこと

報告基準三

◆監査要点
監査人が自己の意見形成の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手するために、経営者が提示する財務諸表項目に対して設定する立証すべき目標をいい、/実在性、網羅性、権利と義務の帰属、評価の妥当性、期間配分の適切性及び表示の妥当性等をいう。

◆監査手続
監査人が監査意見を形成するに足る基礎を得るための監査証拠を入手するために実施する手続をいい、実施する目的により、リスク評価手続とリスク対応手続(運用評価手続又は実証手続)に分けられる。

◆監査証拠
監査人が意見表明の基礎となる個々の結論を導くために利用する情報をいう。監査証拠は、財務諸表の基礎となる会計記録に含まれる情報及びその他の情報からなる。

★監査要点の直接的な立証
有価証券の実在性
→株券や債券のような文書の閲覧

■監査基準の改訂2002
監査要点とは、財務諸表の基礎となる取引や会計事象等の構成要素について立証すべき目標である。
実施基準において、監査要点に適合した十分かつ適切な監査証拠を入手することを求めている。
監査要点は、監査を受ける企業の業種、組織、情報処理システムなどに対応して監査人が自らの判断で設定することが基本となる。

監査人は、自己の意見を形成するに足る合理的な基礎を得るために、「実在性、網羅性、権利と義務の帰属、評価の妥当性、期間配分の適切性及び表示の妥当性等」の監査要点に適合した十分かつ適切な監査証拠を入手しなければならない。

2002実施基準一2

■監査基準の改訂2005
 財務諸表の監査の目的は、財務諸表の適正性に対して、監査人が自らの意見を表明することにある。/そのためには、監査人は、経営者が提示する財務諸表項目について立証すべき監査要点を設定し、監査要点ごとに監査手続を実施して監査証拠を入手し、監査要点に関して立証した事項を積み上げて統合化し、財務諸表の適正性に関する結論を得ることになる。
 経営者の提示する財務諸表項目は経営者が責任の主体であるのに対し、監査要点は監査人が設定した立証すべき目標であることを明示することにより、両社の関係を明確にすることとした。


◆監査要点
監査人が自己の意見形成の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手するために、経営者が提示する財務諸表項目に対して設定する立証すべき目標をいい、実在性、網羅性、権利と義務の帰属、評価の妥当性、期間配分の適切性及び表示の妥当性等をいう。

 財務諸表の基礎となる取引や会計事象等の構成要素について立証すべき目標である。
 経営者の主張の適正性を立証するために、監査人側が設定した具体的な立証命題である。
(例示)
・実在性
・網羅性
・権利と義務の帰属
・評価の妥当性
・期間配分の適切性
・表示の妥当性

監査要点は、監査を受ける企業の業種、組織、情報処理システムなどに対応して監査人が自らの判断で設定することが基本となる。

★ 実在性と評価の妥当性の具体例
<棚卸資産>
・実在性…被監査会社に実際に存在していないものを貸借対照表に計上していないか?
・評価の妥当性…陳腐化した棚卸資産が正常品と同様に評価されていないか?被監査会社に実際に存在している棚卸資産について、貸借対照表に計上されている評価額は妥当か?

◇債務保証についての監査要点
履行可能性が高く、かつ金額の合理的な見積りが可能であり、引当金の計上が必要な場合→評価の妥当性
これらの要件を満たさず、注記を必要とする場合→表示の妥当性
債務保証の有無→網羅性

自己の意見を形成するに足る基礎とは、監査人が適正性意見を表明するための根拠である。
十分かつ適切な監査証拠とは、監査要点を立証するに足る監査証拠の集合である。

財務諸表監査の目的は適正性意見の表明にあるが、財務諸表の適正性は大局的・抽象的な命題であり、これを直接立証することは困難である。/監査人は適正性命題を階層的に細分化し、監査要点として立証目的を特定化した上で、十分かつ適切な監査証拠によりこれを立証し、これらを統合化することにより自己の意見を形成するに足る基礎を得ることが可能になる。

監査人は、経営者が提示する財務諸表項目について立証すべき監査要点を設定し、監査要点ごとに監査手続を実施して監査証拠を入手し、監査要点に関して立証した事項を積み上げて統合化し、財務諸表の適正性に関する結論を得ることになる。

財務諸表の適正性を直接的に立証することはできないので、立証可能な財務諸表の構成要素レベルにブレークダウンし、それらについて監査要点を設定する。
→監査要点ごとに監査手続を実施して監査証拠を入手する。
→監査要点に関して立証した事項を積み上げて統合化し、財務諸表の適正性に関する結論を得る。

◆監査手続
監査人が監査意見を形成するに足る基礎を得るための監査証拠を入手するために実施する手続をいい、実施する目的により、リスク評価手続リスク対応手続に分けられる。

監査要点を立証するための監査証拠を入手するために監査人が採用する監査技術の選択と適用のプロセスである。
監査技術とは、監査人が監査要点を立証するために必要な監査証拠を入手するために利用可能な監査実施上の手法をいう。

◇監査要点と監査手続(例示)
売掛金の実在性を立証するために
確認という監査手続を
リスク対応手続の一環として
試査により実施する。

現金の実在性を立証するために
有形資産の実査という監査手続を
リスク対応手続の一環として
精査により実施する。


◆監査証拠
監査人が意見表明の基礎となる個々の結論を導くために利用する情報をいう。監査証拠は、財務諸表の基礎となる会計記録に含まれる情報及びその他の情報からなる。
監査人は、監査手続を実施して監査証拠を入手する。

◇監査証拠の十分性
監査証拠の量的尺度をいう。
監査要点を立証するために入手する監査証拠が過不足のないことを意味する。

必要とされる監査証拠の量は、評価した重要な虚偽表示リスクの程度及び監査証拠のによって影響を受ける。
重要な虚偽表示のリスクの程度が高ければ、必要とされる監査証拠の量は増加する
監査証拠の適合性や証明力が高ければ、必要とされる監査証拠の量は減少する

◇監査証拠の適切性
監査証拠の質的尺度をいう。
意見表明の基礎となる監査証拠の適合性証明力をいう。
入手する監査証拠が監査要点の立証に適合しており、また必要な証明力を有することを意味する。

 監査証拠の十分性と適切性の決定に影響を与える事項として、重要な虚偽表示のリスクがある。
 重要な虚偽表示のリスクが高いほど、より強い適合性証明力を有した監査証拠が、より多く必要とされる。

◇監査証拠の証明力の強弱
外部証拠>内部証拠
内部統制が有効なときに入手した証拠>内部統制が有効でないときに入手した証拠
直接入手した証拠>間接的又は推測により入手した証拠
文書化された証拠>口頭による証拠
原本による証拠>コピーによる証拠

★監査要点の立証に有効な監査手続
支払手形の網羅性→会計システムにデータを入力した際の連番をチェックする。
売上の期間配分の適切性→期末日前後の出荷伝票を査閲する。
(2008短答)


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