分析的手続

財務データ相互間又は財務データと非財務データとの間に存在すると推定される関係を分析・検討することによって、財務情報を評価することをいう。

財務データ相互間又は財務データ以外のデータと財務データとの間に存在する関係を利用して推定値を算出し、推定値と財務情報を比較することによって財務情報を検討する監査手続である。

分析的手続には、他の関連情報と矛盾する、又は監査人の推定値と大きく乖離する変動や関係の必要な調査も含まれる。

財務諸表上又は監査上留意すべき通例でない取引、会計事象、金額、比率や傾向が存在するかどうかを識別するのに有益となる。

リスク評価手続としての分析的手続
→趨勢分析、比率分析が中心

実証手続としての分析的手続
→合理性テスト、回帰分析が中心

◆分析的手続の種類
①比率分析
財務データ相互間又は財務データと財務データ以外のデータとの関係を用いる手法である。

②合理性テスト
監査人が算出した金額又は比率による推定値と財務情報を比較する手法である。

③趨勢分析
財務情報の変動分析であり、一般的に、財務情報の変動に係る矛盾又は異常な変動の有無を確かめるために効果的な手法である。

◆分析的手続の目的
①  監査計画の策定に際し、適用すべき監査手続、実施の時期及び範囲の決定に役立たせる。(必ず実施)
②  実証手続の実施に当たり、勘定や取引に係る監査要点に適合する監査証拠を入手する。
③  監査の最終段階で財務諸表を総括的に吟味する。(必ず実施)
総括的な吟味の結果、監査手続の追加が必要であると監査人が判断した場合、監査手続を追加して実施する。

◆リスク評価手続としての分析的手続
目的:
財務諸表全体レベルの重要な虚偽表示リスクとアサーション・レベルの重要な虚偽表示リスクを識別し、評価する。/重要な虚偽表示リスクを暫定的に評価する。/監査上留意すべき通例でない取引等を識別する。/重要な虚偽表示がなされる兆候を調べる。

◆実証手続としての分析的手続(分析的実証手続)
目的:アサーション・レベルの重要な虚偽表示を看過しない。/評価した重要な虚偽表示リスクに対応する手続として、重要な虚偽表示を発見するために実施する。/重要な虚偽表示の存否を判断する。

計画した分析的実証手続は、反証がない限り、データ間の関係が存在し継続するという推定に基づいて実施されるが、/これらの関係を変化させ得る状況の例として、通例でない取引や事象、会計処理の変更、事業の変化、虚偽表示等が挙げられる。

◆分析的手続等を中心とする監査手続(中間監査)
リスクや重要性の低い子会社等については、分析的手続等を中心とする監査手続を実施することで十分と判断することもある。

◆分析的手続の推定値の算出に必要なデータの利用に際して、監査人が留意すべき事項

◇データの入手可能性
データの入手が容易であるか。

◇データの信頼性
内部統制の運用評価手続を実施する。

◇推定値の精度

◇データ間に存在する関係の合理性及び推測可能性


分析的手続は、財務諸表全体に適用する場合も、また取引記録又は財務諸表項目に適用する場合も、大局的に、適用対象に重大な矛盾又は異常な変動がないかどうかを確かめる手続である。(2000短答)

分析的手続の有効性は、関連するデータに異常な変動がなければ、当該データ間に存在する合理的な関係は存続することが予測されるということを前提として成り立っている。

監査の最終段階における総括的吟味に用いられる分析的手続の目的は、/財務諸表の適否に関する監査人の意見表明に合理的な基礎を与えるに足る十分な監査証拠を入手したかどうかについての監査人の検討に役立てることにある。

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