報告基準七 監査上の主要な検討事項

監査人は、監査の過程で監査役等と協議した事項の中から特に注意を払った事項を決定した上で、その中からさらに、当年度の財務諸表の監査において、職業的専門家として特に重要であると判断した事項を監査上の主要な検討事項として決定しなければならない。

報告基準七1

監査人は、監査上の主要な検討事項として決定した事項について、関連する財務諸表における開示がある場合には当該開示への参照を付した上で、監査上の主要な検討事項の内容、監査人が監査上の主要な検討事項であると決定した理由及び監査における監査人の対応を監査報告書に記載しなければならない。ただし、意見を表明しない場合には記載しないものとする。

報告基準七2

監査人は、監査の各段階において、監査役、監査役会、監査等委員会又は監査委員会(以下「監査役等」という。)と協議する等適切な連携を図らなければならない。

実施基準一7

■監査基準の改訂2018
★監査報告書における位置付け
「監査上の主要な検討事項」の記載は、財務諸表利用者に対し、監査人が実施した監査の内容に関する情報を提供するものであり、監査報告書における監査意見の位置付けを変更するものではない。

★「監査上の主要な検討事項」の決定
監査人は、監査の過程で監査役等と協議した事項の中から、
・ 特別な検討を必要とするリスクが識別された事項、又は重要な虚偽表示のリスクが高いと評価された事項
・ 見積りの不確実性が高いと識別された事項を含め、経営者の重要な判断を伴う事項に対する監査人の判断の程度
・ 当年度において発生した重要な事象又は取引が監査に与える影響
等について考慮した上で特に注意を払った事項を決定する。
当該決定を行った事項の中からさらに、当年度の財務諸表の監査において、職業的専門家として特に重要であると判断した事項を絞り込み、「監査上の主要な検討事項」として決定する。

★「監査上の主要な検討事項」の記載
監査人は、「監査上の主要な検討事項」であると決定した事項について、監査報告書に「監査上の主要な検討事項」の区分を設け、/関連する財務諸表における開示がある場合には当該開示への参照を付した上で、
・「監査上の主要な検討事項」の内容
・監査人が、当年度の財務諸表の監査における特に重要な事項であると考え、「監査上の主要な検討事項」であると決定した理由
監査における監査人の対応
を記載することになる。

★監査意見が無限定適正意見以外の場合の取扱い

意見不表明の場合において、その根拠となった理由以外の事項を「監査上の主要な検討事項」として記載することは、財務諸表全体に対する意見表明のための基礎を得ることができていないにもかかわらず、当該事項について部分的に保証しているかのような印象を与える可能性がある。このため、意見不表明の場合には、「監査上の主要な検討事項」は記載しないことが適当である。

監査の信頼性確保のための取組みの一つとして、財務諸表利用者に対して監査に関する説明・情報提供を充実させる必要性が指摘されている。
監査プロセスの透明性を向上させる観点から、監査報告書において「監査上の主要な検討事項」の記載を求めることとした。

監査報告書における監査上の主要な検討事項の記載は、監査人が実施した監査の透明性を向上させ、監査報告書の情報価値を高めることにその意義がある。

■監査基準の改訂2019

★監査意見が無限定適正意見以外の場合の取扱い
◆財務諸表に重要な虚偽の表示があることにより無限定適正意見を表明できない場合
→その理由、影響等について、区分を設けて記載しなければならない。

◇不適正意見の場合

◇限定付適正意見の場合

◆重要な監査手続を実施できなかったことにより無限定適正意見を表明できない場合
→その理由、影響等について、区分を設けて記載しなければならない。

◇意見不表明の場合
監査上の主要な検討事項は記載しない。

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