報告基準 三 無限定適正意見の記載事項

(1)監査人の意見
・監査対象とした財務諸表の範囲
・経営者の作成した財務諸表が、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況をすべての重要な点において適正に表示していると認められること

(2)意見の根拠
一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して監査を行なったこと
・監査の結果として入手した監査証拠が意見表明の基礎を与える十分かつ適切なものであること

報告基準三前半

「一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して監査を行なった」旨の記載には、監査人が正当な注意を払って監査を実施したという意味が含まれている。

監査報告書は、財務諸表に対する監査人の意見を表明する手段であるとともに、監査人が自己の意見に関する責任を正式に認める手段でもある。
監査報告書において監査人の責任の範囲を明確に記載した上で意見を表明することは、監査人自身の利益を擁護するという効果も有する。(2014Ⅱ)

■2018年改訂
監査人の意見を監査報告書の冒頭に記載する。
新たに意見の根拠の区分を設ける。

(3)経営者及び監査役等の責任
経営者には、
・財務諸表の作成責任があること
・財務諸表に重要な虚偽の表示がないように内部統制を整備及び運用する責任があること
継続企業の前提に関する評価を行い必要な開示を行う責任があること

監査役等には、
財務報告プロセスを監視する責任があること

(4)監査人の責任
・監査人の責任は独立の立場から財務諸表に対する意見を表明することにあること
・監査の基準は監査人に財務諸表に重要な虚偽の表示がないかどうかの合理的な保証を得ることを求めていること
・監査は財務諸表項目に関する監査証拠を得るための手続を含むこと 
・監査は経営者が採用した会計方針及びその適用方法並びに経営者によって行われた見積りの評価も含め全体としての財務諸表の表示を検討していること
・監査手続の選択及び適用は監査人の判断によること
・財務諸表監査の目的は、内部統制の有効性について意見表明するためのものではないこと
・継続企業の前提に関する経営者の評価を検討すること
・監査役等と適切な連携を図ること
・監査上の主要な検討事項を決定して監査報告書に記載すること

報告基準三後半

■監査基準の改訂2002
いわゆる二重責任の原則についても記述することを明記した。
経営者によって行われた見積りの評価も含まれることを明記した。
監査の内容に関する利用者の理解を促すようにした。

◆二重責任の原則
会計基準に準拠して財務諸表を作成し適正に表示する責任は経営者にあり、監査人の責任は財務諸表に対する意見表明にあるという二重責任の原則が記載される。

経営活動の結果を示す財務諸表の作成及び開示についての責任は、経営者に負わせる。
当該財務諸表の適否に関する監査意見の表明についての責任は、監査人に負わせる。

ディスクロージャーをめぐる経営者の責任と監査人の責任を峻別することを要求している。

監査人が意見を表明しない場合であっても、二重責任の原則に関する言及は行われる。

◆合理的な保証の意味
財務諸表監査は、経営者による見積りの要素を含む財務諸表に対して試査によって行われるため、財務諸表の適正性について絶対的な保証を付与するものではない。

◆内部統制の整備及び運用
不正及び誤謬
を防止又は発見する基本的な責任は経営者にある。適切な内部統制を構築し、維持することで責任を遂行する。

監査人は、内部統制に重大な欠陥があるならばその改善を求め、財務諸表の重要な虚偽の表示を発見した時にはそれを修正するように指導する。
経営者が監査人の助言指導を拒否した場合には、監査人は批判機能を発揮して監査意見に反映させなければならない。

■短文式の監査報告書
監査基準設定当初より、監査報告書は、監査の結果として、財務諸表に対する監査人の意見を表明する手段であるとともに、監査人が自己の意見に関する責任を正式に認める手段であることから、その内容を簡潔明瞭に記載して報告する、いわゆる短文式の監査報告書が採用されている。

監査人は、「経営者の作成した財務諸表が、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況をすべての重要な点において適正に表示している」と認められると判断したときは、その旨の意見を表明しなければならない。

★電子公告の方法による貸借対照表及び損益計算書の全部の公告
重要な会計方針に係る事項に関する注記を明らかにしなければならない。(企業法2022Ⅱ)

■監査基準の改訂2010
監査の対象に含まれていた「財務諸表の作成責任は経営者にある」という記載を経営者の責任の区分に記載することにより明確化した。

■監査基準の改訂2018
経営者の責任を経営者及び監査役等の責任に変更する。
監査役等の財務報告に関する責任を記載する。

◆二重責任の原則
経営者の財務諸表の作成責任と、監査人の意見表明責任を区別することをいう。経営者は、適用される財務報告の枠組みに準拠して、財務諸表を作成する責任を有している。これに対し、監査人は、経営者の作成した財務諸表について意見を表明する責任を有している。

■監査基準2002→2020で追加された事項
(3)経営者及び監査役等の責任
経営者には、
・財務諸表に重要な虚偽の表示がないように内部統制を整備及び運用する責任があること
継続企業の前提に関する評価を行い必要な開示を行う責任があること

監査役等には、
財務報告プロセスを監視する責任があること

(4)監査人の責任
・監査は財務諸表項目に関する監査証拠を得るための手続を含むこと
監査手続の選択及び適用は監査人の判断によること
・財務諸表監査の目的は、内部統制の有効性について意見表明するためのものではないこと
・継続企業の前提に関する経営者の評価を検討すること
・監査役等と適切な連携を図ること
監査上の主要な検討事項を決定して監査報告書に記載すること

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