実施基準 二 3 全般的な対応

監査人は、広く財務諸表全体に関係し特定の財務諸表項目のみに関連づけられない重要な虚偽表示のリスクがあると判断した場合には、/そのリスクの程度に応じて、補助者の増員、専門家の配置、適切な監査時間の確保等の全般的な対応を監査計画に反映させなければならない。

実施基準二3

監査人は、監査の実施の過程において、広く財務諸表全体に関係し特定の財務諸表項目のみに関連づけられない重要な虚偽表示のリスクを新たに発見した場合及び当初の監査計画における全般的な対応が不十分であると判断した場合には、/当初の監査計画を修正し、全般的な対応を見直して監査を実施しなければならない。

実施基準三4

監査人は、監査計画の前提として把握した事象状況変化した場合、あるいは監査の実施過程で新たな事実を発見した場合には、適宜、監査計画を修正しなければならない。

実施基準二8

監査人は、職業的専門家としての懐疑心をもって、不正及び誤謬により財務諸表に重要な虚偽の表示がもたらされる可能性に関して評価を行い、その結果を監査計画に反映し、これに基づき監査を実施しなければならない。

実施基準一5

監査人は、専門家の業務を利用する場合には、専門家としての能力及びその業務の客観性を評価し、その業務の結果が監査証拠として十分かつ適切であるかどうかを検討しなければならない。

実施基準四2

■監査基準の改訂2005
財務諸表全体レベルにおいて重要な虚偽表示のリスクが認められた場合には、そのリスクの程度に応じて、補助者の増員、専門家の配置、適切な監査時間の確保等の全般的な対応を監査計画に反映させ、監査リスクを一定の合理的に低い水準に抑えるための措置を講じることが求められる。

◆財務諸表全体レベルの重要な虚偽表示リスク
財務諸表全体に広くかかわりがあり、アサーションの多くに潜在的に影響を及ぼす。当該リスクは、アサーション・レベル、すなわち、取引種類、勘定残高及び注記事項における特定のアサーションと必ずしも結び付けられるものではない。

 経営者による内部統制の無効化のように、様々なアサーションにおいて重要な虚偽表示リスクを増大させるものである。
 不正による重要な虚偽表示リスクに関する監査人の検討に特に関連することがある。
 評価した財務諸表全体レベルの不正による重要な虚偽表示のリスクに応じて、全般的な対応を決定する。

監査人による財務諸表全体レベルでの重要な虚偽表示リスクの評価には、固有リスク及び統制リスクの評価は含まれない

◇財務諸表全体レベルの重要な虚偽表示リスクの例
・経験不足だが強い権限を有する2代目オーナー社長が、内部統制を不当に無視する。
・経理部門の脆弱性により、財務諸表の広範にわたり重要な虚偽記載が生じる。
・取締役及び監査役の中に、代表取締役に対して反対意見を述べる人材が乏しい。
・経理部長が頻繁に交代しており、営業職を行っていた者が経理部長に就任している。

◆全般的な対応と監査リスク
財務諸表全体レベルにおいて重要な虚偽表示のリスクが認められた場合、そのリスクの程度に応じて、補助者の増員、専門家の配置、適切な監査時間の確保等の全般的な対応を監査計画に反映させ、監査リスクを一定の合理的に低い水準に抑えるための措置を講じる。

◇全般的な対応の具体例
・補助者を増員する
・監査チームのメンバーが職業的懐疑心を保持する
・監査チームのメンバーへの指導監督を強化する
・被監査会社が想定しない監査手続の選択を考慮する

監査人は、財務諸表全体の適正性について意見表明する責任があり、財務諸表全体レベルでの重要な虚偽表示のリスクの評価と対応を行う。

★導入の背景
 財務諸表における重要な虚偽の表示は、経営者の関与等から生じる可能性が相対的に高くなってきている。
 従来のリスク・アプローチでは、財務諸表項目における固有リスクと統制リスクの評価、及びこれらと発見リスクの水準の決定との対応関係に重点が置かれており、/監査人が自らの関心を財務諸表項目に狭めてしまう傾向や、財務諸表に重要な虚偽の表示をもたらす要因の検討が不十分になる傾向があった。
 そのため、広く財務諸表全体における重要な虚偽の表示を看過しないための対応が必要と考えられた。そこで、財務諸表における重要な虚偽表示のリスクを、財務諸表全体及び財務諸表項目の二つのレベルで評価することにした。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?