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日本の経済状況の落ち込み×個別の収入格差×子育てのコスト=少子化という問題について

マル激 経世済民オイコノミア第6回
経済から考える少子化対策と家事労働の価値 
ゲスト:是枝俊悟氏

日本経済の状況、市場原理に基づいた収入の確定、子育てを担うユニットの規模、マクロ的な少子化問題の構造的な結びつきについて、いいヒントをもらえる番組だった。

・少子化が問題になり始めたのは、第二次ベビーブーム以降の合計特殊出生率が2.0を下回ってからで、合計特殊出生率を変数として危機意識がもたれるのは年金財政の持続性。
・年金財政を維持していくためには、少なくとも現状の合計特殊出生率以上を維持しないといけない。
・そもそも、合計特殊出生率は1.3台だが、婚外子が少ないという日本の状況を前提にすると、結婚している世帯の子どもの数を示す完結出生児数は1.9台。
・結婚して子どもをもつ世帯の出生率がほとんど低下していないことを踏まえると、少子化の要因は、出生率ではなく未婚率の増加にある。
・政府は、少子化対策として①児童手当などの経済的支援、②子育て支援サービスの拡充、③働き方改革と制度充実、としている。

・しかし、「少子化対策」と「子育て支援(福祉)」は分けて考える必要があると指摘。
・「子育て支援」は子育てをする親の支援であり、直接的に「少子化対策」につながるとはかぎらない。
・「子育て支援」は、正社員と非正規社員、専業主婦とでかなりの格差があったりして、そもそも働いている人の支援が前提になっている。
・政府の施策としては、「少子化対策」を目標にした「子育て支援」ゆえに、費用対効果として所得制限が設けられ、高所得者に対する子育て支援の不平等を招くおそれもある。

・それでは、そもそも、子どもを育てるのにお金は何に必要なのか。
・多くの人が教育費と回答。
・いい塾、いい私立校に通わせたく、浮いたお金はどんどん教育費につぎ込まれるという構造。
・例えば、「子育て支援」によって教育費が低下しても、さらなる良い教育をさせようとする投資によって一人当たりの教育費が変わらなければ、出生率の伸びにはつながらないことも。
・シンガポールや韓国の状況をみると、一方で、教育競争の過熱によって出生率が下がるという構造と、他方で、教育競争の過熱によって国際競争力を支えるという構造がある。
・そして、シンガポールや韓国では、教育競争の過熱自体を緩和し、競争からケア(福祉)へ舵を切っている。
・仮に、教育のあり方が問われて、教育競争の過熱が是正されたとしたら。
・少子化によって人口それ自体(出生率の分母)が減少している中で出生率を上げるとなると、大人一人あたりの子どもが増えることになり(人口ピラミッドのつぼ型からつりがね型へ)、核家族で子育てをする場合には現在よりも負担が増えるため、やはり福祉の観点は外せない。

・福祉(すべての人に等しい水準の教育を)の観点からすると、そもそも良い教育とは何かという論点と、そもそも子育てを担うユニットの規模はどうかという論点が生じる。
・良い教育とは何かという論点は、教育業界において既に学力偏重の受験競争の是非や、画一化された教育システムの是非、能力別編成システムによる勝ち組/負け組図式が問題となってきた。
・がしかし、今回さらに見えてきたのは、日本の経済的な落ち込みと収入格差を踏まえると、これまでの子育てを支えてきた核家族という単位が、そもそも子育てを担うユニットの規模として限界をむかえているのではないかということ。
・仕事と子育ての両立をどの単位で抱える問題とするのか。
・子育てシェアや、子育てシェアハウスなどの実践が広がっているが、こうした理路が背景にあるのではないかと考えられる。
・働き方、ワークライフバランス、仕事と子育ての両立支援、といったフレームに加えて、「血縁的家族を超えた子育てのあり方はどうか」といったフレームにも注目していきたい。

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