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山 (10分間短編小説)

連峰を見て思った。
私はここに聞いて、本当に良かった・・・。

随分と下界の中で走っては、飛び跳ね、休むことなく怒声の中、混沌とした都市で生きてきた。今日はちょっとした、慰安旅行。
旅行と言うことでもないか・・・。

山登だし。一度は思いとどまったりはしたのだが、ここへ来て山に登っている。

自然のなかにいると自分が何故か腑抜けに見えてくる。いつも下界ではいい気になって威張っている自分だが、自然にはなんだか嘘を見破られている感じだ。

でも、なぜか心地いい。時間的なスパンを恐れることなく自由気まま。やきもきすることなんてないし、打算もいらない。ここでは、競合相手に水をあける必要もないし、そのための理路整然とした言葉たちも必要ない。
他人の受け売りだろっ!と相手を罵る必要もないし、

戯言を言って、本当はチクリと痛むんでいる心もない。

ジンクスに感じることもなければ、偽悪に染まる必要もない。インターンシップの子たちにも、受け入れの言葉をはなして、変な羨望な眼差しで見られることもない。

山はいい。本来の自分と見つめ合うことができるから。

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