延命(10分間 短編作品)
あいつどうする・・・。
口を切ったのは、部長だった。定例会議も終盤に差し掛かった時に聞かれた。ズキリと心がなった。ある部下の事であった。もう、会社は彼を長い目で見る気はないだろう。
可愛そうだがここで、身も蓋もないことを言えば、彼は終わりだ。僕は冷静を装いながら、
頑張ってますいますよと
スマートに伝えた。。。
しかし、鼻を明かすような成果は何一つあがっていない。
もともと、営業には向いていない子だ。内気で、成果が出ないから、危うい状況になっているということを伝えると罰の悪そうな顔をした。
顔に素直に出てしまうのも、内気だからだろう。顔を寄せて相談する相手もおらず、不憫に思ったものだから、俺が何とかしてやるよと言うと、
すみません。
とだけ言って可愛く、顔に紅葉を散らした・・・。
正直の頭に神宿る。この諺を覚えたのは、恥ずかしながらつい最近だ。正直に言ってしまった方が、彼のためにもなるかもしれない。
だが、もう少し何もできなくても、居させてやりたいと思った。
鼻を折るような子でもない。
調子に乗ってすぐにその調子が長続きしなければ、すぐに辞める奴は多いが、この子は愚直に熟す子だと感じていた。
一緒に居て、居心地のいい風を吹かしてくれるのも彼かもしれない。
仕事の成果とかではない。
成果より重要なこと。それが、彼にはできる。
だからこそ、延命を図るのだ。
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