「ビジネス」の罠 ~中編~

つづきです。

藤川と山本と一緒に車に乗り込んだ。

この車は藤川の所有物なのだろうか。

先程、長時間ファミレスで話し込んでいた私たちはこんなささやかな質問を気軽にできるほどにまで仲良くなっていた。

文からはビジネスの話しかしてないように思えるが、思いの外打ち解けていた。

「俺の車だよ。でもこれはビジネスだけじゃ買えないしアルバイトして貯めたお金も使ったかな。笑」

それでも当時で21歳の私たちの中で車を持っているというだけでも大きな財であろう。

しばらく談笑しながら車に乗っていると大きなマンションについた。

「着いたよ。行こうか。」

大きな家に住んでいるんだなと思った。

やはり家自体がお金持ちだったのか。

オートロックを解除し中に入っていく藤川。

エレベーターで12階まで上がっていく。

余談ではあるが、
私は一軒家に住んでいて
マンションというものに
少し憧れがある。

もし実家を出ていき、
住むとしたら絶対に
マンションに住んでみたい。

マンション独特の雰囲気に気分が高揚した私であったが部屋に案内されるとさらに高揚した。

広い玄関にすぐ見える長い廊下。

「どうぞ入って。」

お邪魔しますと私。

すると藤川は

「誰もいないよ。笑」

一人暮らしだった。

こんなに広い部屋に一人で住んでいるのか。

これがビジネスの力なのであろうか。

ファミレスからここに移動するまでに財力の違いを見せられた私はただただ驚いていた。

リビングに案内され座るように言われる。

飲み物を運んできて3人で一息いれる。

「さっそくだけどビジネスの話をしようか。熱があるうちに。」

とすでに見透かされているのか私がビジネスに興味を持ちつつあることを藤川は解っていた。

「とりあえずなんだけど、俺たちが今絶対にオススメしたいのはこれ。」

といいまたもやiPadから資料を見せてきた。

「この案件は収入を得るまでに中距離くらいかな。すぐでもないし、将来的ってこともない。」

「それでもってかかる費用も少しかかっちゃうんだ。でも、大型投資よりは少ないけど。」

「どれくらいかかるの?」

と私は尋ねた。

「普通は50000円でそこから下方に変動する形になるかな。」

変動する…?
一体どういうことであろう。

「まずはこの案件について説明するね。」

と藤川は30分ほど説明してくれたがその内容は伏せさせていただきたい。

なぜならば文面で伝えようとするとおさまりきらないからである。

それぐらい長くややこしい話であった。

この案件についてはまた別のノートで集中して書きたいと思う。

「で、これに参加、投資するにいたって自分が他の人を紹介すると15000円引かれるんだ。あ、でも引かれるのは一回だけ。けど何人紹介してもいいんだ。」

「じゃあ一人だけ紹介して15000円引かれるとそれでいいじゃないかって話なんだけど、このシステムにはランクってのが存在するんだ」

「一人も紹介しないで50000円支払うだとGランク。そこから一人紹介するごとにAに向かって上がっていく。」

「ランクが高いほど、この僕たちが参加、投資する会社の配当が高くなるんだ。ここに配当率があるから見てみて。」

たしかに…
Aランクになるほど高くなっている。
そしてGランクよりもはるかに高い。

「僕はこれはやった方がいいと思うんだ。なぜなら株やFXという投資よりもお手頃で、かつ絶対に50000円以上のマイナスにはならない。」

「そしてなによりさっき説明した通り配当を待つだけでなく自分達で動いて利益をとりにいける。」

「もし、まこ様がやるなら僕たちも15000円引かれるよう一人紹介するよ。」

私は考えた。

このままダラダラ日々を過ごすならここで50000円支払い、藤川たちのビジネスグループに参加してビジネスというものをやってみてもいいのではないか。

なによりも今、私はお金を持っている。

もし失敗したとしても失うのは50000円だけ。

「やってみようかな。」

と私は返事した。

その日は書類にサインして藤川と山本と雑談をし帰宅した。

後日、指定された口座に50000円入金した。

15000円を引くことはできなかった。

なぜなら期限が迫っていて誰かを誘う時間がなかったのだ。

そのすぐあとに藤川からファックスで書類を送ったという連絡をうけ、私の短いビジネス活動が始まった。

つづきます。