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真夜中に警察を呼んだ話
ギシッ、ギシッ・・・。
ギシッ、ギシッ、ギシッ・・・。
夜11時半を少し過ぎた頃。
既にベッドで寝ていた私は、その物音に目を覚ました。
息子は自分の部屋で寝ているし、こんな日に限って夫は出張で留守だ。
耳を澄ませ、音のする方をたどる。
シーンと静まり返った夜、しばらく何も聞こえなかった。
そしてまた、
ミシッ、ミシッ・・・。
ミシッ、ミシッ、ミシッ、ミシッ・・・。
屋根の上を大人の男の人が歩いているかのようだ。
「えっ、泥棒?まさかこんな夜中に、なぜうちの家?」
一度そんな風に思うと、恐怖しかない。
「警察呼ぶかなぁ。自分で屋根の上には上がれないし。かと言ってこんな時間に電話するのもなぁ。」
警察への連絡をためらって、両手で自分を抱き締めて、天井を見上げながら玄関側と裏庭側を行ったり来たり。
ミシッ、ミシッ、ミシッ、ミシッ。
「あっ、裏庭側にまわった!どうしよう?どうしよう?ひとりではどうしようもない。怖い~!」
と、アメリカ生活2回目の911コールをした。
オペレーター:「どうされました?」
私:「私の家の屋根を誰か男の人が歩いているみたいなんです!怖くて電話しました。」
オペレーター:「そうですか。そこからその人は見えますか?」
私:「いえ、裏庭側にまわったようですが、私からは見えません。」
オペレーター:「そうですか、では近くにいる警官に出動してもらいますね。」
私:「ありがとうございます。」
オペレーター:「あなたの名前と住所を教えて下さい。」
私:「(名前と住所を言う。)あの、どれぐらいで来ますか?」
オペレーター:「そうかからないと思いますよ。来るまで私と話しておきましょう。」
ミシッ、ミシッ。
もう怖くない!私ひとりではないのだから!
ミシッ、ミシッ。
真っ暗な夜空に、突然クルクルと赤白青の光の線が描かれて、家の周りが明るくなった。パトカーが来た!
私の家の屋根の上を白いライトで照らしている。右に左に大きな白い光の線が動く。
「コンコン」
警官が玄関に立っていた。
まだ繋がっているオペレーターに
「警官が玄関に立っているんですけど、開けて良いと思いますか?」
と尋ねた。
「もちろん!私と繋いだままでいいですよ。あっちょっと待って!今、あなたの目の前にいる警官から連絡が入りました。ドアを開けずに待ってて下さい。」
ドア越しに立ってる警官がトランシーバーで何やら話している。
オペレーター:「屋根の上にいるのが何者か分かりましたよ!スカンクです。それも親子の。どうも、あなたの家の屋根裏に巣を作って住んでるみたいです。夜中に親がエサを探しに出て来たんでしょう。人間じゃなくて良かったですね!」
私:「・・・スカンクですか?そうでしたか。夜遅くにお騒がせしてスミマセンでした。ありがとうございました。」
オペレーター:「いえいえ、ではお休みなさい!」
そう言って、オペレーターは電話を切り、ドア越しの警官は軽く手を挙げて挨拶して帰って行った。
「はぁ~っ?スカンク~?」背筋がぞーっとするほど怖かったのに、ホッとしてその場にしゃがみこんだ。
「いや、でも、住んでるって言われても・・・」と屋根裏を気にしていたら朝まで眠れなかったある月夜のことでした。
(続)
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