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能登の街並み

震災以降月に2回程度のペースで奥能登へボランティアに行っている。実にところ長い人生で一度も能登へ行ったことがなかったがここ3ヶ月ほどで5回も能登に通い、行くたびに車で被災地を回っている。

輪島朝市

テレビのニュースでご覧になった方も多いと思うが焼け焦げた輪島の朝市や道の両側に倒壊した家屋が並ぶ珠洲市蛸島町では胸が押し潰されそうになる。火災の風景は朝市だけ(多分…)であるが倒壊した家屋は奥能登、いや半島一帯に点在している。

珠洲市蛸島町を車でゆっくり走っていると倒壊した家屋もそうでない家屋も一様に黒い板壁、黒く光沢のある瓦の建物である。半数くらいの家が倒壊してしまっているが黒に統一された街並みは美しいではないか。想像してみよう、夕日に照らされた黒い街並みと通りを歩くお婆さんや家へ帰る子供達。軽トラも走っているだろう。

私は輪島市門前の黒島地区や珠洲市の蛸島地区の美しい街並みを知ったのは被災した町並みを見た後だった。

能登には独特の建築がある。勿論風土に合わせた建築だ。
下見板張り
古くから林業の盛んな能登地方では塩害に強い杉が豊富で杉板を横に打ち付け上部の釘を隠すように板を並べる工法「下見板張り」の家屋が多い。鎧の袖のように重ねるので「鎧張」とも呼ばれる。施工後時間が経つと黒色に変色し更に耐候性が増す。

下見板張り

能登瓦
能登の家屋は全て黒瓦だ。唯の黒瓦ではない。釉薬に漬けて焼き上げた黒く光沢のある瓦である。倒壊した家屋の丁度目の前にある「黒く光沢のある瓦」は目線を奪った。それは綺麗に並んだ陶器の皿のようであった。勿論瓦にも能登の風土もたらす理由がある。能登は豪雪ではないが冬は雪が降り続く。釉薬で焼いた瓦は寒暖差に強く黒いので太陽の光を吸収し雪を溶かす効果もある。但し少々重いのだが。

能登瓦

輪島市門前地区は「重要伝統的建造物群保存地区」であり、珠洲市蛸島町は「街なみ環境整備促進区」に指定されている。門前地区は170世帯、蛸島町は600世帯であるが多くは全壊半壊となり街の景観を取り戻すのは難しいであろう。

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