有機JASを越えて 本質的価値をとる

今回は日本の有機野菜の証明、有機JASを軸に、野菜の本質はどこにあり、それを実現するにはどうしたらよいかというお話をしてみます。

順をおっていきたいので

1そもそもなぜ野菜を食べるのか

2なぜ有機野菜を買うのか

3有機JASの購買動機の分析

4野菜の本質的価値を高めるには

5まとめとこれから

の章立てでやっていきます。

*多くの部分であくまで僕個人がそう思うというお話になります。ツッコミあれば是非コメントにください!(ツッコミは成長の源。うれしいです)

1 そもそもなぜ野菜を食べるのか

①健康に良いから

②おいしいから

大きくはこの2つになると思います。これが野菜の本質的な価値であり、健康増進効果(栄養等)や、おいしさ(食味、糖度、うまみ等)が高ければ高いほどその野菜には価値があるという事になります。

2なぜ有機野菜を買うのか

①安心、安全だから

②なんか環境によさそうだから

有機野菜を買われる方は基本的に「健康に良いから」の野菜の価値が、有機の安心安全と結びついて購入されると思っています。

①については農薬も基準とおり使用していれば安全だというお話も聞きます。農薬の勉強をしたことがあるわけではないので一概に言えませんが、それはあくまで基準どおりに使用されればであって人間のやる行いですからどこかでイレギュラーが起こるのではないかという疑念。それと残留農薬基準値以上検出的なニュースをたまに目にすることで農薬に対して完全に安心とは僕はなっておりません。

なので日本の食料消費を賄う上で今のところ農薬がかかせないのはいうまでもありませんが、消費者としてどこか安心できないというのは共感できるところであります。 農業界にいる僕がこのレベルなのでもっと知識のない一般的な消費者の中には気にされる方も多いと思います。

②は僕の思いつく限りでは有機農業は土壌消毒はしないので土壌生物の量の多さ(生物多様性の保護)や、化成農薬散布によるハチなどへの影響が少ないという点で環境負荷が少ないかなと思います。

3有機JASと購買動機の分析

有機JASの規定の中には「使用する肥料や農薬は天然物質又は化学的処理を行っていない天然物質に由来するもののみ」というものがあります。

この文を受けて、なぜ有機野菜を買うのかの①②の解説をよくよく考えてみたいのですが

安心安全の部分で多くの消費者の方が気にされているのは化成農薬の使用による残留農薬の体への影響だと思います。化成肥料に不安を覚えられる方も中にはいるかもしれませんが、農薬に対して安心しきれていない僕でも化成肥料に対しては、化学合成されたとはいえ原料は鉱石や空気中の成分、有機物から取り出したものなど自然に由来しているものですので気にしておりません。

環境に良いの部分で説明したとおり、土壌消毒もハチなどへ影響を与えるのも化成農薬です。

ということは有機野菜の価値を作り出しているのは化成肥料不使用の部分ではなく化成農薬不使用の部分だということです。

4野菜の本質的価値を高めるには

何故、化成肥料を擁護したかといいますと化成肥料を禁止することは野菜の本質的価値である栄養と食味をあげることを阻害すると思っているからです。

栄養と食味をあげる方法はおおざっぱに行ってしまえば野菜にどれだけ光合成をしてもらうかという事になります。栄養も食味も化学式まで分解し、元をたどれば光合成産物であるブドウ糖に行きつくからです。

なので農家のできる事は植物の生理を理解し、持っている光合成能力をいかんなく発揮できる環境(土の柔らかさ、土壌微生物、肥料の量とバランスなど)を作ってあげる事になります。

基本的には考えられた有機栽培がその環境をつくるのに一番適していると思い、僕は有機農業をしています。

ですが、農業にはさまざまな状況があり、いつも恵まれた条件というわけではありません。有機農家であるばかりに環境を整える段階で化成肥料を使えない事は本質価値向上の阻害要因になっていると思うのです。

具体例をあげてみます。

①植物の生理を活性化する資材が使えないこと

土中酸素発生粒剤というものがあります。これは土に混和することで水分に反応して空気を放出してくれる資材です。長いものでは6カ月近く効果が持続するものもあるのでだいたいの作物は栽培期間中効果が出続けているということです。 植物は根で呼吸をし、養水分を吸収したり、根を伸長させるエネルギーを取り出しています。酸素がない環境だとそれらの活動が低下して、生育全般を弱めてしまいます。これでは健康な植物にはなりません。この粒剤はその酸素の部分を補ってくれる資材になります。ですが有機JASでは認められていないの有機農業では使用できません。ちなみに酸素放出後は放出期間の短いものは水になり、長いものは消石灰というカルシウムの肥料になります。

②化成肥料の利点である即効性や養分の濃さ、値段の安さを有効利用できないこと

有機肥料のリン肥料は効いてくるのが遅いという特徴があります。長く効かせるという使い方には向いているのですが、撒いてすぐ効いてほしい、新しく借りた畑で種まきまでもう時間がない、という時には即効性の化成肥料が使えたらいいなと思います。

カルシウム資材は植物の細胞壁や細胞膜の構成に関与し腐りを抑えたり、人間でいう骨格の機能をはたしたり、とにかく大活躍の養分なのですが、その分、要求量も多く、とくにここぞという作物に値段を気にせず使えると健康な植物栽培に大きく近づけると思います。

5まとめとこれから

僕は基本的には有機肥料を使用し、場合によっては化成肥料も使える柔軟な農家が野菜の価値の高さとしては最強かなと思います。

有機JASは一定の説明を省力してくれるのでありがたいものであることは間違いありません。その利点から僕自身も有機JASはとると思います。ですが同時に本質的価値の高い野菜があるということを伝え、それを消費者の方が選べる仕組みと知識を浸透させていきたいというのが目標の1つです。

みんなで賢くなり、健康になり、生きやすい社会を作っていきましょう。

ではこれにて!



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