見出し画像

宮崎県双石山登山ガイド       ~初心者・観光客向けの超基本情報~

 双石山は宮崎市民にとって一番人気のある山で多くの登山客が訪れるそうです。
 途中には他では見られないような天狗岩や象の墓場、空池などの奇岩・巨岩群があり宮崎市を一望できる展望所など見どころ満載で、宮崎の日南海岸方面を訪れたら青島や鵜戸神宮などの海岸の観光地ばかりでなく、双石山も訪れることをお勧めします。
 しかし人気の山というと首都圏の高尾山や御岳山のように登山道が整備され多くの登山客に踏みならされた登りやすい山を思い浮かべてしまいますが、低山(509m)だと思って甘く見て登ると毎年滑落事故や迷子で死者が出ていると噂されるぐらいに苦労させられるので注意が必要です。


基本的な注意点

① NHKの番組「日本百低山」でも取り上げられていましたが、番組では登山口、天狗岩、象の墓場、空池が双石山頂上までに直列に並んでいるかのような説明であり誤解を与えるものでした。象の墓場は寄り道していく必要があるなど登山ルートはかなり複雑です。
 ※ 実際は象の墓場には寄り道をしなければ行かれないのですが、なぜかそれを親切に説明しているネット上の情報は見つかりませんでした。
② また番組では登頂して吉田類さんがハイタッチをすると次は下山後の祝杯に場面が移るのですが、双石山に関しては下りも急な斜面を降りなければならないので、それなりの体力と気力を残しておく必要があります。一般的にも登山での滑落などの事故の大半は下山時に起きるそうです。
③ 途中に分岐点が多く標識はありますが登山道が全て整地されているわけではなくはっきり登山道と識別できない道も多く迷子になってしまう危険も大いにあります。
 ※ ところどころに赤いテープが結ばれていて登山道を表しているようなのですが、聞くところでは中には何度も登った人がマイルートを開拓してその目印にしている場合もあり、うかつには信用できないそうです。500m程度の山で遭難死というのはしゃれになりませんが現実には起きているそうです。道に迷ったら元の所に引き返す決断を心がけましょう。
④ 登山ルートの大半は樹林帯の中にあり太陽が差し込まないため、岩などには苔がびっしり張り付いていて滑りやすいです。筆者も何度も尻もちをつきました。とにかく、滑落事故には細心の注意が必要です。
⑤ 事前にブログやユーチューブで情報を得ましたが、概して楽観的な内容のものばかりでした。特に登りや下山時の難行苦行が十分描かれていない印象なのですが、実際は筆者が事前に想像したよりもずっときつく危険な登山でした。
⑥ 登山道の大半はうっそうとした樹林帯の中なので風が通らず夏はかなり蒸し暑いそうです。元々が南国なので暑さも半端じゃないと思いますので、登山には秋から春にかけての季節が適しているそうです。

★双石山へのアクセス

 青島周辺の宿泊地からは車なら、国道220号⇒県道339号⇒376号⇒27号と通って20分程で登山口まで行けますが、鉄道もバスもありません。
 ブログやユーチューブなどでは「宿の人に車で送ってもらった」「自転車で行った」などの情報もありますが、車で送ってもらったら帰りはどうするのか、自転車だと2時間はかかるようでそれだけで体力を消耗しそう、などの理由でお勧めはできません。
 従ってやはりレンタカーを借りて小谷登山口まで車で行って駐車スペースに車を停めるのが正解だと思います(駐車スペースはそれほど広くなくせいぜい20台程度しか駐車できないようですので、旅行シーズンの週末などは早めに行く必要はあるかもしれません)

 ちなみにレンタカーに装備されている大半のナビはローカライズされておらず、目的地を「双石山」や「小谷登山口」などの名称で検索してもヒットはしません。電話番号での検索しかなさそうです。
 じゃあ筆者がどうしたかというと、電話番号検索で目的地に「宮崎大学木花キャンパス」の電話番号(0985-58-2889)を入力して案内してもらい、県道339号に乗ったらそのまま道なりに進んで(勿論大学には寄らない)い行けば27号に入るので山道を登って行きました。27号は二手に分かれいますが清武方面ではなくそのまままっすぐ北郷の方へ道なりに進むと、そこから数分で小谷登山口が左手に見えます。

小谷登山口周辺                                    
駐車スペース                                     

★小谷登山口

 手前に塩鶴登山口というのがあるそうなのですが、こちらがメインの登山口のようです。
 登山後の登山靴を洗う水道(飲料は不可)や注意点や地図などが書かれた看板がたくさん立っています。
 下の二枚目の写真の中央にある茶色の郵便箱のようなものの中にガイドマップが用意されていると解説された動画がありましたが、筆者が訪れた時にはアンケート用紙しか入っていませんでした。常にマップが補充されているわけではなさそうです。
 その箱の横に登山用の杖に使える木や竹の棒が置いてあり自由に使ってよいようです。筆者は竹棒を借りていきましたが、登山道では重宝しましたが崖上りには邪魔になりました。やはり折り畳み式ストックを持っていくべきでした。

左側の石段から登って行く                               
                                     

★登山の準備と心構え

① 筆者はウォーキングシューズで登りましたが前述した通り苔が生えた石は滑りやすくやはりちゃんとした登山靴で登るのが正解です。そうはいっても日南海岸観光がメインだとなかなか重い登山靴を持って行くのは大変ではあります(=_=)
② 折り畳み式ストックは持っていったほうがよいと思います。登山口に杖替わりになる棒が何本か置いてあり利用できますが、岩登りでは邪魔になります。
③ YAMAPのアプリをダウンロードしておいて、自分の位置が確認できるようにしておきましょう。とにかく道に迷いますので適時自分の位置を確認しましょう。

■ 登山の目的地の設定 ■
前述しましたがこの山の目玉は天狗岩や象の墓場の奇岩・巨岩群を堪能することを最優先で考えるべきです。
観光客として軽装で上るなら頂上への登頂は二の次と考えるべきです

〇【観光目的&登山初心者で体力に自信のない人
天狗岩までにすべきです。天狗岩までなら”普通の登山”のように比較的楽に登ることができます。岩窟神社、天狗岩、針の穴神社ならば30分程度で危険もなく登ることができます。

〇【もう少し体力に自信のある人
天狗岩から空池、象の墓場と回る。これだけでも圧倒的な巨岩・奇岩を見ることができ十分双石山を堪能できますし、それなりのスリルを味わうこともできます。

〇【登山に慣れていてアドベンチャー気分を味わいたい人
象の墓場に寄ってから、3段梯子や8本ロープを伝った崖上りをして第二展望所へ向かう。かなりの急な勾配の崖をロープを頼りによじ登っていきます。登山に慣れた人なら変化に富んだ少しスリリングな気分を味わうことができると思います。
 第二展望所では宮崎市内が一望できます。その先に第三展望所もありますが、正直眺めはそれほど変わりませんし、頂上へはまた戻らなければなりませんのでお勧めはしません。
 第二展望所から頂上までは比較的楽な稜線歩きになりますが、登るかどうかは体力・気力がどれくらい残っているかを考えた上で判断すべきです。下りのルートもかなりの勾配と滑りやすい岩を踏みしめていかなければならないので緊張を強いられます。筆者はここまで道に迷ったりして結構時間を使いましたし下山時の体力を考えてあきらめてここから下山しました。
ちなみに頂上手前には山小屋があり運が良ければお茶が飲めるそうですが、頂上自体は見晴らしはそれほど良くはないそうです。

★実際の登山記録

筆者が辿ったコースは
小谷登山口 ⇒ 天狗岩 ⇒ 空池 ⇒ (象の墓場へ往復) ⇒ (尾根ルート)⇒ 大岩展望所へ寄り道 ⇒ 第二展望所 ⇒ 第三展望所往復 ⇒ 第二展望所へ戻り ⇒ 谷ルートを通って小谷登山口まで下山
第二展望所から下山した場合は往復で休憩や巨石見学、迷子時間も含めて4時間ほどでした。

★朝の9時に登山口を出発

★最初は伐採地を上っていく

★9時10分、最初の分岐点(天狗岩・空池経由ルートと3段梯子に直行ルート)に到着。ベンチがあります。天狗岩には左のルートになります。ここからいよいよ樹林帯の中に入ります。右のルートを行くと天狗岩などをパスして3段梯子の下に出られるそうです。

★9時14分ごろに塩鶴登山口からの登山道との合流点に到着。山頂方面の矢印の方に進みます。すぐに先の方に岩窟神社の社殿が見えてきます。

★9時16分ごろ、岩窟神社に到着。社殿や賽銭箱が新しくなっているようです。近くに古い賽銭箱が捨てられていました。

★最初のロープを登ると天狗岩が見えてきます。

★9時20分ごろ、最初の目的地・天狗岩に到着\(^o^)/
ここまでは特に迷うこともなく順調に登ってこれました。
天狗岩はやはりかなり大きくてユニークな岩です。見上げているとくらくらと目が回ってきて後ろにひっくり返りそうになります。周辺に十分なスペースがないため全体像が入るようなショットはスマホではなかなか撮れませんでした。

★ここから天狗岩の右側の崖を上って空池に向かいます
 ※ ユーチューブには別の楽なルートがあるような解説がされているものもありましたが、筆者が探した限りではそういうものはありませんでした。
ここは右側を登るしかなさそうです。その後の登りと比べればまだまだ楽な登りです。
★登りきると左側に岩の隙間がありますので、そこをくぐって空池に降りて行きます。
 ※ 左の方にも比較的大きな岩の隙間があるようですが、そちらは行き止まりだそうです。

空池への岩の隙間                                  
空池全貌                                     

★チョップストーンをくぐって山頂(第二展望所)に向かいます。しかし象の墓場の案内板がないので不安になります。新しい案内標識が立てられていますが、看板には「象の墓場」も書いておいて欲しいところです。

チョップストーン                                 

 ★空池を抜けたところに案内板がありますが、ここにも象の墓場の文字はないのですが・・・・                                  

★最近反対側に新しくこの看板を立ててくれたようです。これで分かりやすくなりました。矢印が下向きなのは、ここから3段梯子を下りていくことになるからです。

★3段梯子を下りたところにこの看板があります。最初の分岐点で3段梯子方面ルートを取るとここに出るようです。ここから矢印に従って象の墓場を目指します。

★但し、最初はかなり道なき道を進むことになり正しい道なのか不安になりました。10分ほど進むと大きな岩がゴロゴロしていて近づいて来たことが分かります。

★象の墓場直前の最後の難関の狭い隙間を慎重に降りていきます。苔がびっしり岩に付いているので滑りやすくて苦労しました。

★10時ちょうどに象の墓場に到着\(^o^)/
ここも両側の間のスペースが狭くて全体像を撮影するのは困難でした。でもゾウさんの顔は良く分かります。

★象の墓場を堪能したら来た道を引き返して元の分岐点に戻りました。
 ※ 先に進めそうなルートがあり、そちらからも行かれるそうなのですが聞くところではかなりの急な崖があり危険だそうで引き返した方が良いそうです。
★元の分岐点に戻ったらいよいよ3段梯子から始まる最大の難所を上っていきます。

★3段梯子を上って少し行くと5分ほどで下記のような尾根コースと谷コースの分岐点に着きます。そしてこれが最大の不可解標識です。
 尾根コースには「初めての人はこちらのコースへ」とあり、どう考えても初心者には尾根コースを推奨しているように思えます。
 しかし、どうやらこの案内板は、「初めて登る人は両方のコースを体験してみてください。でもロープが沢山張られている尾根コースを降りるのは大変なので、登りには尾根コースを登り、下りは谷コースを下りてくるのがお勧めですよ」という意味のようです。
 要するに、「初めての人」=「登山初心者の人」ではないのです。実際、この尾根コースが全行程の中で最大の難所であり最も慎重を要する危険ルートです。

初めての人=初心者ではない紛らわしい案内板

★10時30分ごろ、いよいよ第二展望所へ向かって崖上りを始めます。聞くところでは途中に設置されたロープの数は合計8本なのだそうですが正直3本目ぐらいで数える気力もなくなりひたすら無心で登り続けました。途中寄り道として大きな岩の上に大岩展望台なるものがありますが、ロープにしがみついて苦労して上った割には大した眺望でもなく、降りるのが大変でパスしてしまった方が良かったと後悔しました。

大岩展望台へのロープ                               

★11時ちょうどごろ、大岩展望台などに寄っていて時間がかかりましたが、ようやく第二展望所に到着しました\(^o^)/\(^o^)/
ベンチやテーブルがあって休憩ができます。木々のすきまから宮崎市内が一望できます。

第二展望所からの宮崎市内の眺望

★そこから3分ということなので第三展望所に行ってみました。看板が根元から折れて打ち捨てられていたので起こしておきました。
しかし眺望は第二展望所と大差なく、下山するにも頂上を目指すにも第二展望所に戻らなければならず、正直行く価値はないと思いました。
 ※ 麻畠の方へ降りてしまうと小谷登山口とは反対側に行ってしまうので注意。

★下山時の苦労話

 ここまででかなりの体力を消耗し心身ともに疲れていたきたので、ここから頂上までは比較的楽な稜線歩きだそうですが下山することにして第二展望所に戻ることにしました。
 この時点では登ってきた急峻な崖のルートを迷うことなく滑り落ちることなく降りられるのか不安がいっぱいでした。

 第二展望所に戻ると筆者が第三展望所を往復している間に頂上から降りてきた男性の人が昼食を食べていました。地元の自治体に勤めていて退職された方で双石山は何度も登っているそうです。世間話などをしばらくしていると、筆者の不安そうな雰囲気を察してくれたのか、「一緒におりますか」と声を掛けてくれました。
大げさではなく、地獄に仏と思いました(-_-;)
 下山ルートは登ってきた尾根ルートではなく、今度は途中から分岐する谷ルートの方を降りるそうです。
 おそらく一人で降りていたら何があるかも分からない谷ルートは選ばなかったかもしれません。初心者ルートと思われた尾根ルートではない方なのでもっと大変なルートなのだろうと思い込むのは当然だと思います。しかしネットなどでは下山について解説された情報はほとんどありません。
 谷ルートは尾根ルートほどにはロープが必要なような崖が少なく多少なりとも楽ではあるのですが、それでも踏みならされたような道はほとんどなく、谷底に向かって降りて行くばかりなので一人だと果たしてこれは正しい道なのだろうがと大いに不安になったと思います。
 また、深い樹林帯の中なので石にはびっしりと苔が生えていてウォーキングシューズでは滑りやすく何度も尻もちをつきました。とにかくひたすら先導者の方の後に従って慎重に降りて行きました。
 
 午後の1時前には登山口の駐車場に帰り着くことができました。途中で迷ったりしましたが、巨石の見学時間も含めて4時間ほどだったと思います。正直疲労困憊だったので山頂は目指さなかったのが正解だと思いました。

 再び登る機会があるかどうかは分かりませんが、今回の登山で双石山の全体像が理解できたのでもし次の機会があったら頂上まで登ってみたいと思います。

以上これから登山を計画している方に少しでもご参考になれば幸いです。




                               




登山口から天狗岩までは比較的楽に上ることができます。そしてそこから、象の墓場を訪れましょう。この二か所は絶対に訪れることをお勧めします。他ではこれほど圧倒されるような巨岩・奇岩はなかなか簡単にはお目にかかれません。
象の墓場へのアクセスは岩の狭い隙間を通るなどちょっとてこずるかもしれませんが、とにかく圧倒的な空間を見上げることができます。
なぜ観光目的ならこの二か所だけにするのかというと、天狗岩から第二展望所に登るには途中に双石山登山最大の難所といわれる8本のロープを伝った崖上りがあるからです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?