真輝志

真輝志がまかり通ります。

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最近の記事

バトンの世界線

弁当箱を開けると、ごはんやおかずが飛び出してきた。 どうやらびっくり箱も兼ねていたらしい。 顔面に張り付いた米どもを腕で拭う。 なんだか違和感を感じて、スマホのカメラを鏡代わりにして確認する。 驚いた。 モチモチでツルツルでピカピカなのだ。 どうやら弁当の成分が奇跡的に美容パックとして成立したようだ。 しかも効果は規格外。 顔面が15年は若返った。 それからというもの、僕はお酒を売ってもらえなくなった。 身分証を提示しても、顔が違うと門前払い。 小学生に

    • ロックスターの世界線

      アンコールが鳴り止まない。 流石に二曲で終えたのはまずかったか。 渋々ステージに戻るも、歌った二曲以外は自信がない。 仕方なく母の天然エピソードを話す。 苛立った観客がオチを待たずに、飲みきってもいないラムネを投げつけてきた。 ビンの軌道が全て足元に向かっていたので、機動力を奪ってから確実に仕留めようとしているのがわかった。 事態は最悪だ。 思わず蕁麻疹が出た。 そう、僕は最悪アレルギーなのだ。 くしゃみが止まらない。 そこで、僕は閃いた。 くしゃみが止

      • 入り直しの世界線

        勉強し直すために小学校へ入った。 転校生扱いになった僕は、一か八か年齢をクラスメイトと同じていで挑んでみたが、声変わりを指摘されすぐにバレた。 まずは算数の授業で割り算を習った。 どうやら割り算はこの授業が初めてだったらしく、クラスのみんなは苦戦していた。 僕はもちろん修得済みだったが、尊敬されるために、もう完全に忘れているし、なんだったら自分の時代は習わなかったかもしれない感じを出しながら解いた。 男子には尊敬されたが女子にはバレた。 二限目は体育でバスケだった

        • ボディビルダーの世界線

          「ボディをビルドするからボディビルダーなんだと何度言えば分かるんだ!」 出来の悪い弟子に怒鳴りつける。 こいつは彫刻みたいな体になりたいと大口叩きながら、近道ばかりしようとする。 今日はジムに腕利きの彫刻家を連れてきやがった。 どうやら自分の体を彫らせようとしているらしい。 そうじゃないだろ。 確かに彫刻家に頼めば彫刻のような体になれる。 ただ、そうなるとボディビルダーじゃない。 その場合のビルダーは彫刻家だ。 お前はただのボディ イズ ビルテッドになる。

        バトンの世界線

          シェフの世界線

          どうすればお客様に喜んでいただけるか。 常にそんなことばかり考えています。 ええ、プライベートでもそうです。 他のことは一切考えません。 おかげでボードゲームをしても連敗続きです。 将棋の際に一度だけ八歩をしたことがあります。 やはり、その時もお客様の笑顔しか考えていませんでした。 現在考案中の新メニューはウニ丼。 北海道の漁港で「1番高いのください」と言って手に入れたウニを贅沢に使っております。

          シェフの世界線

          キャプテンの世界線

          スコアは86対0、試合時間は残り1秒。 流石にみんなも諦めムードだ。 確かにバスケに逆転満塁ホームランはない。 だがキャプテンの俺が折れるわけにはいかねえんだよ。 今日は緊張で一本も入っていないが、体育館の電気代で学校経営が傾くほど、毎日遅くまでシュート練習をしてきた。 目の合った人が振り返すほどだった、手の震えも抑まりだしている。 相手も油断しているのかディフェンスが甘い。 幸いにもマイボール。 僅かだがチャンスはある。

          キャプテンの世界線

          喧嘩王の世界線

          久しぶりの客だな。 大阪で最大勢力を誇るグループ 「舞怒大鬼尼(まいどおおきに)」に囲まれながらぼんやりと思う。 喧嘩なんてのは子供の遊び、いい加減に卒業してえところだが、周りが許しちゃくれねえ。 そもそも俺から吹っかけたことは一度もない。 売られた喧嘩を買ってる内に名前が広まっただけだ。 今じゃあ俺を倒して名を上げようって輩が後を絶たねえ。 迷惑な話だ。 チンピラから軍人まで相手してる内に「喧嘩王」なんて

          喧嘩王の世界線

          上漫コンテストの世界線

          全く眠れなかった。 賞レースがこんなに怖いモノだとは。 目の下に規格外のクマを作り、NHKホールへと向かう。 電車の途中で寝てしまい、何度も乗り過ごしてしまったが、入りより3時間早い電車なのでなんとかなった。 会場入りしてからはあっという間に本番になった。 Aブロックのネタが始まり、プードルがエゲツないウケ方をしている。 メラちゃんがとにかくハマり、老若男女が腹を抱えていた。 心臓が整わないまま僕たちの出番になった。 プレッシャーがピークに達した僕は

          上漫コンテストの世界線

          大卒が仇

          朝起きると右手が痺れていた。 おそらく寝相で腕が体の下敷きになり、圧迫されていたようだ。 なかなか痺れが止まなかったので不安になり、 左手でスマホを使って解決法を検索する。 逆手なので上手く使いこなせない。 苛々した僕は痺れた右手に持ち替えた。 すると、スマホの充電がみるみる回復していくではないか。 どうやら、このビリビリとした痺れはちゃんと電気らしい。 まあ、血中の鉄分が圧迫によって流れを失い、それぞれが結合しあった結果、電導率の高い右手になったのだろう。

          大卒が仇

          ありがとな

          最近の若い鳩はなっていない。 昔は人間が歩けば必ず道を空けたものだが、 最近では自転車が迫っていても腹を括ったように動かない。 今日も道を歩いていると、三羽の鳩が進行方向でたむろしていた。 例によって道を空けそうになかったので、 こちらが横に避ける形で通り過ぎる。 うんざりしてため息が出た。 すると 「え、なんでため息なん?」 振り返ると鳩の中の一羽がこちらを睨みつけ、 他の二羽が「やめとき〜や〜」となだめている

          ありがとな

          西へ飛ぶスタッフ

          岩と岩の間に挟まった。 ちくしょう、油断しちまった。 ニトリは広いと聞いていたが、奥に大自然が広がっているとは。 多種多様な家具に興奮して、気を抜いた。 いつもの僕なら、このミスはない。 更に悔しいのは挟まった箇所が 腕や足ではなくお腹の右側だということ。 もう少しくびれておくべきだった。 辺りを見渡したところ、ゼッケンを着用した店員らしきコンドルはいるが、通じる言葉を持ち合わせていない。 どころか、その眼光は僕が

          西へ飛ぶスタッフ

          続・最古のスベり

          どうすれば「バカ」の一言を引き出せるか。 僕は狙いを母親に絞ることにした。 父親だと怖すぎるからだ。 中々訪れないチャンスに苛立ち、 ある強行策に出た。 床をドンドンしながら歩いたのだ。 当時の我が家はマンションの一室で、 建物の甘さから足音をドンドン鳴らすと、 下の階からよくクレームが来ていたのだ。 母からは足音に関する注意を再三受けている。 覚悟を決めた僕は、明らかにクレームが来る音量で足音を立てた。

          続・最古のスベり

          最古のスベり

          突然だが、僕は人生で最初にスベった時のことを覚えている。 あれは確か5、6歳の時分。 当時の僕は待望の第一子ということで非常に可愛がられていた。 特に母方の家系にとっては初孫ということもあり、それはもう無双状態だった。 当時の写真を見ても、やはりスベり知らずな表情をしている。自分がウケているのは初孫だからとも知らずに。 その日、僕はアニメにかぶりついていた。 観ていたのはクレヨンしんちゃん、もしくは ルパン三世だった気がする。 とにかく、

          最古のスベり