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隣の乗客との距離は、大人1/3人程度だった。
途中駅で乗車してきた老人は、他の空いたつり革を無視して、その隙間に体を滑り込ませてきた。

1つのつり革を両手で握って背中を丸め、ぶらさがるように立っている。
1.5人分の空間を捻出したにも関わらず、体を大きく揺らして体当たりしてくる。

停車中も。

時折こちらを盗み見て、確認しては背中を擦り付けてくる。
なにも言わないことをいいことに、揺れ幅を大きくしてくる。

いい加減にしろ。

「うっ…うう…」

小さくうめくと突然、丸めた背筋をぴんと伸ばし、硬直した。

くそじじいなど知ったことか。
人波越しに、まっすぐの背中を見送った。

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