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建具屋、継がない。

大きくなるにつれて、家業の建具屋の
お手伝いの内容が段々と高度になり、
工程を任されるようになってきたのが
前回まででした。

小学校へ上る前は、
「たてぐやになる」
と言っていた少年も高校生になると
進路を考える時期がやってきました。

父から店を継いでほしいとは
兄弟3人とも言われたことはなく、
すでに、一番上の兄は東京へ出て
会社勤めをしていました。
すぐ上の兄は実家にとどまり
建築士として名古屋の設計事務所に
勤めていました。

兄たちと同様、父からは、
「大学へは行かせてやる」
と言われていましたので、
どこを受験するか。

理系の進学に強い県立高校だった
のですが、数学は1年生の1学期で
つまづき、高校で学ぶ数学のことは
まったく覚えていません。
卒業できたのが今でも不思議。

なので当然、選択肢は文系。

ある日、すぐ上の兄が私の部屋へ
入ってきて、
「大学で経営を学んでこないか?」
と聞きました。

将来独立して自分の設計事務所
を開く夢を持っていた兄は、
その事務所と家業の建具屋の経営を
まとめて私がみてはどうか、
というのです。

ものづくりは職人さんたちに任せて
経営だけをみればいい。
このまま父一代で終わらせるのは
もったいない、ということでした。

私の答えは、

「やだ」

高校3年生当時の私にとって、
経済学部とか経営学部って
一番興味のない学部だったんです。

それに、木製建具の注文が減る一方で
その分をアルミサッシが埋め合わせて
おり、この状況は進むだろうな、と
感じていました。
アルミサッシって、ずっと手伝って
いて、魅力がなかったんです。

だから大学は自分で選びました。
そのとき思い描いていた将来のために。

この時点で、兄弟の中から
建具屋の後継者が出ないことが
確定しました。

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