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兄の犬

我が家には先住犬のセカン君がいる。先代にミックという名前のポメラニアンのミックス犬がいた。まだ父が居て母も元気な頃兄が購入した犬だった。利口な犬で「ボールは?」と話しかけると必ずどこからか小さなお気に入りのボールを探し咥えてくる。それを投げて僕と遊んでって事。お手もお座りもできた。少しこだわりが強くて自分にとってのお気に入りを見つけるとそれを身の回りに隠す。そうなると大変で物凄い顔で誰もを威嚇した。
何でも【ちょうだい】と甘えてくるのに負けてしまい人間の食べ物を与えてしまった結果酷い歯肉炎になってしまった。
父がが亡くなり、母が認知症になった。それまでは母がミックの世話をしていたのだが、母がグループホームへ入居を機に兄との2人暮らしになった。
兄が散歩へ連れて行き、兄の部屋で寝る。そんな生活に変わっていったのだった。
ミックが亡くなる1週間前突然ひどく痙攣をした時がありもうダメかと思ったが持ち直した。ところがその時から兄の事を全て忘れてしまったかの様に兄に全く尻尾を振らなくなった。ただ元気だったので兄も仕方ないか…と諦めてミックに接していた。そして10日後夜中にミックの苦しそうに息をする音で兄は目を覚ます。兄は口元に水を含ませたガーゼを持っていったり、身体を摩ったり見守っていたらしい。そして朝方…ミックは苦しそうに大きく息を吸い込んですっと静かになった。兄は初めて泣いたとその後言っていた。
もう犬は飼わないと決めていた兄だったが1週間後には2代目セカン君を買った。ネットでセカン君を見つけた時はまだふわふわの仔犬でとても可愛い姿だった。近くの商業施設の中のペットショップに連絡をしてセカン君を見に行った。店員は店の奥へと案内した。セカン君は写真よりも成長していて写真とは全く違う姿だった。兄に尻尾を振り連れて行ってと懇願していた。店員は「ほらパパが来てくれたよ」って言ったらしい。ふわふわもふもふ君がガリガリ細々君になっていたが置いては帰れないと購入を決めた。元々の値段より相当安くなって。
セカンの名前の由来はミックセカンド。先代ミックと同じくポメラニアンのミックス。その2代目だったからセカンド。そして略してセカン君。
兄との2人暮らしが始まった。

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