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サンタさん問題と銀の鈴

12歳になる長男が最近、懐かしの玩具「ベイブレード」のコレクションをゴソゴソと取り出して一人で熱心に遊び始めています。

「ベイブレードで夢中になって遊んでいたころは、この子もまだまだもっと無邪気だったよなぁ・・・」と懐かしむ気持ちで、3年前のクリスマスストーリーをふと思い出し、書いてみたくなりました。


9歳は一区切り

「サンタさんが、親だって学校で噂になってるんだけど・・・」

長男が9歳の頃のある日、私の心の中を探るような妙な目つきで聞いてきました。

ああ、サンタさん問題が発生したのね!!!

ついに、我が家にもやってきました。その前の年までは1ミリたりとも疑うそぶりもなかったのに。

それでも一応、長男はサンタさんにプレゼントをおねだりする手紙を熱心に書いていました。

「サソタサんへ、ベイブレードバーストのちょうZカスタマイズセットをください。〇〇〇より」

「サンタさん問題以前に、学力低下問題じゃー!!!」と母はガックリ・・・。


さて、サンタさんを信じるか否か。その年齢について、ある調査結果があります。

子どもとお出かけ情報サイト「いこーよ」の調査によると、3歳の子どもの69%がサンタクロースを信じていることがわかった。サンタクロースに対する意識が変化するのは10歳・11歳が多く、友達との会話など周囲からの影響が大きいようだ。

だとすれば、9歳児のクラスでサンタさん問題が話題となっているのもうなずけます。

シュタイナー教育では「9歳」は象徴的な年齢です。ぼんやりとしていた幼児期の世界がこの頃にはっきりと終わると言われているからです。そしてこの時期に現実世界と出会い、孤独を知るとされます。

そして日本にも「『』がつくうちは膝の上」という言葉があります。「九」はまだ母親の膝の上、でも「十」になるともう膝の上から降りるというもの。

やはり、このあたりの年齢が一つの区切りなんですね。


『北極号』を頼りに

その年の12月のある日。あまりに天気が良かったので、仕事の合間に子どもと一緒に品川駅にほど近い、だけど穴場でひっそりとしたお気に入りの公園へ行きました。うちの子がまだ本当に幼かったころ、2人でよく一緒に遊びに行って、お弁当を食べたり、冒険ごっこをしたりして遊んだ大好きな公園です。

だけど長男が小学生になると私はフルタイムの仕事で忙しく、一方で長男も友達と遊ぶのに忙しく、二人で一緒に公園に行くことはもうほとんどなくなっていました。

柿の実。12月になっても、まだ枝にかなりの数が残っていました。この子が拾って食べて、渋柿でウェ~ってしてたのはまるでつい最近のよう。

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黄金色に輝くイチョウ。落ち葉をたくさん集めては、宙に放り投げて遊んでいました。

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急な斜面も、何度も滑りながらドロドロになって、初めて上までのぼったのは3歳のとき。今や、ほんの数秒で駆け上がっちゃうけど。

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ふと近くの切り株を見ると、ファンタジーの形跡がありました。小さな子どもが赤い葉や黄色い葉を集めて、おままごとでもして遊んでいたのでしょう。

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で、いきなりひらめいた!!!

サンタさん問題のスマートな解決法です。

夢から覚めるのも、ファンタジーの力で!

オールズバーグの絵本『急行「北極号」』がピッタリだと。この絵本は村上春樹の洒落た訳で、発売当時に話題となりました。

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(画像はあすなろ書房よりお借りしました)

これって自分のために買った私のスペシャル絵本コレクションの中の一冊。だから長男に読んであげたことは、当時はまだありませんでした。

クリスマス前夜、サンタを信じる子だけが体験する不思議な旅を描いた絵本。コルデコット賞受賞作。

で、夕食後に久しぶりの読み聞かせタイムです。

物語の最後に、少年がサンタさんからもらったのは不思議な銀の鈴でした。大人にはその音色は聞こえません。そして物語はこう締めくくられています。

昔、ぼくのともだちはだいたいみんな、その鈴の音を聞くことができた。でも年月が流れて、彼らの耳にはもう沈黙しか聞こえない。サラだってそうだ。彼女はあるクリスマスの朝に、その鈴を振ってみたのだが、もうあの美しい音は鳴り響かなかった。ぼくはすっかりおとなになってしまったけれど、鈴の音はまだ耳に届く。心から信じていれば、その音はちゃんときこえるんだよ。

夢から覚めるのだって、ファンタジーの中で。

9歳になって、これからもし厳しい現実世界に立ち向かうことになるっていったって、急にぬくぬくしていたお布団から引っ張り出して現実を見せつけるようなマネはしたくない。

まるで霧が晴れるように、ボンヤリしていたものが少しずつ、少しずつ・・・サンタさんのリアルな姿が自然と現れてくるように。


ファンタジーは心の栄養

そしてその年はサンタさん問題は「サンタさんがベイブレードじゃなくて、銀の鈴をくれちゃったらどうしよう問題」にすり変わりました。

9歳の子どもは、もし銀の鈴がプレゼントされたら、・・・「ランドセルにつける!」といたずらっ子の笑顔で言っていました。「だって大人に聞こえないんだから、どうせ先生にはバレないじゃん」って。

で、その年のクリスマスの朝。

なんと、枕元にはサンタさんにお願いした「ベイブレードバースト超カスタマイズセット」と一緒に、本当に銀の鈴がコロリと置かれていたのです!!!(メルヘンクーゲルという不思議な音がする銀の鈴を、実は私が欲しかったというのは内緒なのですが。)

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それを最後に、我が家にはサンタさんはもう来なくなったのでした・・・。

12歳になった長男は、もはや「サンタさん」の「サ」の字も言わなくなったけれど、いまだに不思議な銀の鈴を自作の糸掛け曼荼羅にかけて大切に飾っています。そして時々嬉しそうに鈴を手に取り、その不思議な音色に耳を澄ましているのです。

それを見ると、ファンタジーって心の栄養なんだなぁと思うのです。

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(年に一度の更新となってしまったnote・・・来年はもう少し頑張ります!)

今回は、母親アップデートコミュニティ公式のアドベントカレンダー「クリスマス ストーリー」(https://note.com/huc/n/n1f310d3ac306)の記事です。

明日は Yoko Suzukiさんがご担当です!


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