11話 心の歯車の軋む音

書きたいことを書き散らした為に読み難い文章になっているかと思いますが、、、
自分の心の整理として書きました。
かなり私見も混ざっていますが、もし宜しければお読みください。


11話。

人の心が読める魔法なんて、完全なるファンタジーのはずのに、現実に訴える葛藤があった。

もうこんなに辛いなら、自己嫌悪に苛まれるなら、いっそ魔法の力なんてなくなって欲しい。黒沢に心が読めることなんて知られたらきっと拒絶される。怖い。

だから、いつでも自分に優しい黒沢を欺いて、誤魔化して。
そしてまた自分を責めて。

でも、、だからと言って魔法の力がなくなって、黒沢の心が読めなくなったら・・?
黒沢の心の声まで愛してしまって、心の声を聞くことでうまく関係を保てている部分もあって。
魔法の力のない、空っぽな自分は、黒沢ときちんと向き合えるだろうか。
魔法の力のない、空っぽな自分をも、黒沢は愛してくれるだろうか。
結局全部全部、魔法の力のお陰だったんじゃないのか。

どちらに向かうにも怖い。

そんな安達の気持ちが、、、見ていてとても辛かった。


そして、黒沢の気持ちも。

きっと、いくら安達を好きだと言っても、「心が読めるんだ」なんて言われたら、黒沢も正気ではいられなかったと思う。
でも、荒れる安達を取り敢えず落ち着かせたいという黒沢の優しさ。
「嘘なわけない」
どんな荒唐無稽なことでも、安達のことを信じているから、嘘だなんて思わない。
そこはぶれない。でも、、

自分から手を離すこと以外、どうしていいか分かんなかったんだと思う。
心の声を聞かれることへの不快感とか、そういうことじゃない。むしろ安達に心を読まれることには何の抵抗も示してない。
ただ、心の声が読めてしまうってどんな気持ちなのか、安達が何を苦しんでいるのか、それは黒沢があの一瞬で察するにはあまりあるものだったんだと私は思う。

安達が苦しむ原因は自分だと、ただその事実だけを心につき立てて。
自分さえ手を離してやれば、心の声が読める安達も、自分との関係性で思い悩むことはない。
思えば最初から、自分のわがままなんじゃないか、安達を無理やり付き合わせているんじゃないか、て思ってた黒沢がどこかにいたような気もする。

だから、どうしていいか分からなくなった時に、優しく、そう、あんなにも優しく、手を離してしまった、、と。


違うんだ、二人とも、違うんだ。
もう色々書かずにはいられない。。

まず、安達。
心の声なんか聞こえなくても安達は安達だし、優しくて仕事が丁寧で、全然空っぽなんかじゃない。魔法を利用してしまう自分を責め立てるくらい、真っ直ぐな心の持ち主だ。
現に、黒沢が惚れた安達は魔法使いなんかじゃなかったわけだし。
それに、安達からの黒沢への思いは、魔法なんか関係なく本物だったじゃん・・・

そして、黒沢。
安達が苦しんでるのは、黒沢が安達を拘束しているからなんかじゃない。
いや、ある意味それは正しいんだけど、安達は「黒沢とうまくいかなくなることが怖い」って言っている。
安達が苦しんでいるのは、魔法が使えても使えなくても、どちらにしても黒沢の心が離れてしまう未来が見えてしまうから。
それだけ黒沢のことを好きになってしまったから。
心の声を利用してしまう自分を責めて、でも魔法を失ったら黒沢と今まで通りでいられるのか自信がなくて、ますますそんな自分に幻滅して八方塞がりで。


と、客観的に見れば、違うんだってことは言えるけど。
でも、もし自分が安達だったら?黒沢だったら?ああする以外にどうしたら良かっただろう。

その答えは、簡単には見つけられない・・・

安達のように、一度失ってしまった自信を取り戻すのは自力では難しいし、ことに魔法が絡んでいるから、完全にぶれてしまった自分の軸を、どこに戻していいかが分からなくなっている。

ちょっと考えてみると、魔法はともかくとしてこういうことは現実にもあることだと思う。

自分が自分でいられる根拠は、案外突き詰めて考えてみると自分自身の外側にあることも多くて。
いろんな情報に溢れた世の中だからこそ、アイデンティティを正常に保つことは難しいなと私も思う。
結局人間の意識なんて、基本的にはニューロンの電気的な反応のネットワークで生まれてくるだけのものであってどこにも基盤みたいなものはないし、「自分」なんて、外界とたえずやりとりする関係性の中にだけある存在と考えることもできる。
自分のどんな性質も、必ずそれ自体が単独では成立しえなくて、何らかの自分以外のものに影響を受けているものだから。
冷静に人間の存在性を見つめるほど、宇宙の中で自分の意識が、ただ他と区別されずふわふわと漂っているだけのような気さえしてくる。
安達の言う「空っぽ」ってそういう気分に近いんじゃないかな。
魔法がない自分は、一体何者だろうって。

でも人間は、その恐ろしい想像を何とか封じ込めてある程度の自信・自己を持って生きていけるような特殊な能力を持っている。(いや、むしろそういう能力自体が意識ということなのかもしれないし、そこを前提として個人が成り立っているということなのかもしれないけど)
ただもちろん、その能力を駆動する為には大きなエネルギーが必要で。
20代までの安達も、その能力が機能していなかったわけではないだろうけど、黒沢からの愛がエネルギーを注ぎ込んだからこそ、安達はあんなにもきらきらした瞳で、他人に向き合うようになったはず。

でも、人間の心の歯車は簡単に噛み合わなくなるから、、、
安達の心の歯車が、あるものは動きを止めて、またあるものは逆回転して、軋み暴走していく様が、あまりにも辛かった。

そこからどうやって、再びその歯車がかみ合い、少し前のように、前へ前へと力を伝えていけるように戻るのか、、、
そこが12話の見どころになりそうだと思う。

もはやこれは、ただの恋愛ドラマじゃない。
人間がどうやって生きていくのか、深淵なテーマが描かれている気がする。

魔法は現実にはないけれど、アイデンティティについての葛藤はリアルだった、というよりリアルを超えるレベルだった。
だからこそ、ファンタジーから生まれた気持ちなのにこんなにも共感して辛いのではないか。

ともすれば見終わる頃には、私自身のアイデンティティのあり方も、少し変わってくるかもしれない。

最後に、安達と黒沢がまた笑い合える時が来ることを願いながら。

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