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OKRについて本を読んだ

チームのキックオフの後、OKRを設定することになった。でも私はOKRを知らなかった。ということで本を読んだのでまとめておきます。

そもそもOKRとは?

OKR=Objectives and Key Results(目標と成果指標)
という目標目標管理ツールのことらしい。ふむふむ。
まずは、チームのメンバーにシェアしてもらったおすすめの参考リンクを全て読んでみた。

OKR:組織内のコミュニケーション効率化と重要なゴールへの集中を促すシステム
戦力を集中すべきところ、分散すべきところ
OKRを設定する
OKR を支える CFR
Googleやメルカリも導入する目標管理手法、OKRの基礎知識

ざっと読んでみて要点を絞るとこんな感じ。(以降Oについては目標、KRについては成果指標と表すことにする)

Googleをはじめとした有名企業で採用されている手法である
野心的な目標とその達成度を測る指標を設定する
目標は3~5個に絞る
達成度が60~70%程度になるような目標がよい目標とされる
そのためOKRの達成率は評価制度とは切り離して運用する
組織的に取り組むことで大きな成果をあげることができる

ふむ、なるほど。その他にもいろいろ眺めると、OKRでうまくいかなかったケースの話もたくさん出てきていたのが興味深い。そんな感じで予習をして、いざ自分でも目標を考えてみることにしたのだが、

いざ設定しようとすると非常に難しい

というのが正直な感想。チームのミッションに照らして目標を立てるのは分かる。だけど野心的な目標ってどうやって決めるのか?しかもそれを計測可能な目標にするにはどうしたらいいのか?気付いたら目標と主要な結果が混在してきたぞ?!
実際に設定しようとしてみるとこうなってしまった。なんかOKRが俄然フワッとしてきた。

そこでチーム内でお勧めされた一冊を読んでみることに。

本を読んでさらに学んでみることに

タイトルは、『メジャー・ホワット・マターズ』。
OKRを導入して成功した企業の事例を交えつつ、OKRとは何かを掘り下げていく本。Googleやインテルなどをはじめ、多くの会社でのOKR運用のケーススタディは、OKRについて知るだけでなく読み物としてもとても面白く読めた。いろんな会社の空気を感じることができ、成功しているスタートアップで働く人たちのマインドセットを垣間見ることができる。ワクワクしながら読み進めることができた。

ケーススタディを通して学んでいくスタイルということもあり、要約ではなく個人的な気づきにフォーカスを当てたいと思う。
OKRの具体的なハウツーが知りたい人は上記の本の巻末にまとめてあるので読んでもらえばいいと思う。

通読して感じたことは、OKRで一番難しいのは良い目標を設定することだということ。これについてはいざ自分でやってみようとした時にも感じたので大いに納得だった。

目標(O)とは「何を」達成すべきかである。それ以上でもそれ以下でもない。当然ながら、重要で、具体的で、行動を促し、(理想を言えば)人々を鼓舞するようなものだ。

もちろん運用や振り返りも難しいが、会社&チーム&個人にとって『何が大切か』が分かっているということが一番重要だということ。これがOKRが効果を発揮するための大前提だ。

そしてOKRで難しいのは野心的な目標にした結果、60~70%の達成度になる、という順番だと思う。
会社であれば、社員はストレッチがかかる状況でコミットしてもらう前提になっているので、OKRを成功させるための社内の文化(空気)もかなり大事だ。あえて緩めの目標設定をしたり、どうせ100%達成しなくてもいいから、というような空気があると全く意味がない。
つまりOKRは運用のハードルも非常に高い。その代わりにこれをやり切れる組織であれば、自分で目標を掲げて自走できる社員が揃っているということだし、常にストレッチ目標を追いかけているので成果も上がっている、ということになるのだろうと思う。

またOKRには2つのカテゴリーがあるとも述べられていた。Googleでのケースだが、そのカテゴリーは『コミットする目標』と『野心的(ストレッチ)目標』だ。
例えば売り上げなど、経営資源に関わる目標は『コミットする目標』として達成率は100%でなければならない。
一方で『野心的目標』は、壮大なビジョン、高いリスク、未来志向の発想を反映する。達成は困難で平均4割が失敗に終わるが、それは織り込み済みである。
この2つのカテゴリーの重み付けが企業文化に大きく関わるとされる。部門によって、また時期によってフレキシブルに対応しなければならないらしい。やはり目標設定が一番難しい。

また一方で、野心的な目標達成のための数値目標が一人歩きしないように、成果指標には数値目標と品質目標を対にして取り入れる、という考え方も大切だと思った。
かんぽの不正営業など、達成不可能な目標数値(ノルマ)だけが一人歩きした例は世の中にいくらでもある。ただ上から押しつけられるだけの達成不可能なノルマは、OKRの対極であるということがこの本を読むとよく分かるのだが、この辺りまで深く考えずに目標設定してしまうとOKRが失敗するだけでは済まず、製品やサービスの品質を疎かにした会社として、信用問題に発展する可能性がある。

他にもポイントを挙げると枚挙にいとまがない。そもそもOKRが上手くいくには、オープンな企業文化がかなり重要だ。会社は、経営陣は、他の部門は、直属の上長は、同僚は、何を目標として何を考えているのか。個人のOKRが誰にでも公開されていることや、上位下達のみをよしとしないボトムアップの文化、継続的パフォーマンス管理の体制づくり(これは評価制度そのものの見直しも含んでいる)など、組織の透明性や個人のエンパワーメントが最大限に発揮できる環境整備がOKR導入の前に必要だということが読み進めるうちによく分かってくる。
この点では、今の社内の環境はかなり整っていると個人的には感じている。幸運にも下地づくりは十分できているから、チームとしてもトライアンドエラーでOKRを上手く活用できる組織にしていければ最高だと思う。

印象に残った章

個人的に好きだった章がいくつかあったので紹介する。

第3章のインテルのクラッシュ作戦は個人的には序盤のハイライトで、会社全体が野心的な目標達成に向けて一丸となっている様子がありありと浮かんできた。これこそまさに、人々を鼓舞する目標だと感じた。
各章で紹介されているケーススタディでは、社内での取り組みと一緒にそこで掲げられたOKRを見ることができる。会社ごとにどのような考えのもと、どんなOKRが設定されてのかを見ることができて興味深い。

第12章ではストレッチ目標の大切さと威力について語っている。その中でのビル・キャンベルの言葉と、「10倍主義」という考え方の解説で引用されるのラリー・ペイジの言葉に心が揺さぶられた。

ビル・キャンベルはよくこう言っていた。「企業はイノベーションを続けなければ、死んでしまう。繰り返しではない、イノベーションだ」。保守的な目標設定はイノベーションの芽を摘む。イノベーションは酸素の様なもので、それなくして私たちは生きていけない。
ペイジは、何かを10%改良するのは他社と同じことをしているに過ぎないと見る。とんでもない失敗をすることはなさそうだが、ケタ違いの成功を治めることも決してない。〜中略〜
1000%の改善を達成するには、問題を新たな視点から考え直し、技術的に何が可能かを探求し、そのプロセスを楽しむことが必要だ。

14章では、You tubeが動画の視聴回数ではなく、視聴時間を成功の指標としたエピソードが紹介されている。サービスにとって本当に大事なことは何か、本質を見誤るといくらストレッチの効いた目標設定をしていても行き先が全く変わってしまう。検索エンジンで成果を上げているGoogleだからこそ、この視聴時間を重視する考え方への転換が難しかったことが語られている。
結果としてこの視聴時間を成果指標にしたことがその後のサービスの躍進につながったことは言うまでもないが、改めて目標とその測定指標の設定の難しさを感じるエピソードだった。

全体を通して一番読んでいてワクワクしたのは第17章のズーム・ピザのケーススタディ。スタートアップが目標達成だけではなく組織づくりにOKRを活用して成功した例で、OKRを導入することで、会社が大きくなる前に、社員にマネージャーになる準備をさせる機会を提供するという考え方が素晴らしいと思った。
限られたリソースの中で最大限のパフォーマンスを出すために、組織が本当に達成すべきことを明確にして全員で突き進む体制を作るには、OKRは確かにうってつけだと思う。さらにいいことに、この目標は達成率が計測可能になっている。全体の目標に沿って、個々人が自走してリーダーシップを発揮できる組織が成長しないはずがない。

以上が特に印象に残った章だったが、本編が終わった後の献辞も特徴的だったので書き添えておく。著者が大きく影響を受けた故人、”コーチ”ビル・キャンベルとの過去について10ページが割かれていて、思い出を辿りながら優れたリーダーの人となりについて触れることができる。
なんだか著者と一緒に感慨にふけって読了した。いい本だと思った。

ということで、改めてチームのOKR以外に個人のOKRも設定しようと思った次第です。OKRを通して組織の話や、個人の成長の話も出てきたので大変勉強になりました。

見てくださってありがとうございます。サポートは本を読むときのお供のコーヒー代にあてさせていただきます。