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1番先に忘れるのが声なんだよな

くまちゃんの紹介文出てきた

角田光代のくまちゃん
 この本は簡潔に言うと、ふった登場人物が次の物語の主人公という連作短編小説です。具体的にいうと、最初に苑子という女の子が出てきて、苑子はもちだくんという男の子にフラれて、ふった側のもちだくんは次の話でゆりえちゃんという女の子にフラれて、またそのゆりえちゃんは別の男の子にフラれて、、というふうに、ふった人が振られる話が永遠に続きます。
 読んだのが、少し前で、忘れてる部分が多かったので読み返してたんですが、読むのが二回目でも、どうせみんな振られるってわかってても面白くて、ついこの人はどんな振られ方をしたんだっけ?と夢中になってページをめくってました。
 特に振られたことがある人とか、失恋した人におすすめで、共感できるポイントもたくさんあって、そうそうこんな感じ!!ってなる本です。本の中で何度か呪詛(呪い)という言葉が出てくるんですけど、失恋で相手のことを呪うってどういうこと?となるかもしれないんですが、出てきた文章として「こんな女、大ッ嫌いだ。一生へんな芝居してろ。一生成功を夢見てくだまいてろ。一生火影で下手な歌うたって笑われてろ。」のながれで、相手を呪詛した、呪った、恨んだみたいな表現が出てきて、私はすごくわかるなぁと思ったし、それを呪詛と表現するのが上手いなぁと思いました。失恋したときにすごく好きなのに、心の中で悪口というか、暴言を吐いてしまうみたいな感じがすごくよくわかるなぁと思いました。こういう風に、人によって共感できる箇所はさまざまだとは思うんですけど、少なからずどこかは共感できるポイントがある本だと思います。
 この本の1番すごいところとして、ふった人がフラれるっていうので話を続けていく構図も面白いんですけど、読んでる中で、例えば苑子が持田くんにフラれる話から始まってるんですけど、苑子が主人公なので、もちだくんについては謎が多いというか、苑子目線でしかかかれてないので、読者側としてはもちだくんのことをもっと知りたいな、気になるな、この後どういう生活してるんだろなとか、思い出したタイミングで、つぎに持田くんが主人公の話がはじまるっていうのが、どんどん気になるポイントが出てきて、ページを捲る手が止まらなくなるっていう感覚が味わえるところが、この本のすごいところの一つだと思います。
 また、些細な文章にも、いいなぁこの表現と思うものがたくさんあって、角田光代さんの表現力、ストーリー構成力って化け物レベルですごいんだなぁと実感した一冊でした。



そういうの、全然よくて、何回も何回も何回もやってるうちに自然と飽きてきて、それが最終的にベストな状態だから


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