動かないボーナス

うちの会社のボーナスは変わってる。

普通なら給料数ヶ月分、六月と十二月あたりに支給されるものと相場は決まっているが、うちの会社はお金のかわりに、不動産をくれる。

不動産といっても戸建てやマンションの一室をもらえるわけじゃない。そんなに気前はよくない。

もらえるのは会社の工場の横にある空き地のほんのほんのひと区画である。会社の業績に応じて受け取れる数センチ四方の小さな土地。

でもそんな小さな土地でも、毎年貯めていくとけっこうな大きさになるので、勤続五年の○○さんはようやく灰皿を置ける大きさに広がり、ベテランの××さんは自前のキャンプ椅子を置くことができるほどに成長したらしい。誰にも冒されることのない自分だけの休憩所ができて彼らは満足げだった。

こうして動かないボーナスを受け取った社員たちはしだいに辞められなくなっていくわけで、これは会社の離職率対策の一環なんじゃあないかとわたしは疑いの目を向けている。