平安京でワンネスを体験する その1
なんとも言えない臭いがしたのはある夜のことだった。
猫の糞尿なのか?はたまた、どこかで生ごみが腐っているのか?
私は鼻をくんくんさせながら、1階の廊下から階段を上がりながら臭いの元を探る。
臭いの発生源は見つからない。
セージのスプレーを振りながら歩いたら、少し消えたが、しばらくするとまたフッと臭う。
「古い汚れた衣のような臭い・・・」
思い当たることがあって、少し嫌な感じがした。
ある人から「臭いが取れない。」という話を聞いたのは少し前だ。
そこは、昔の平安京の大内裏の中心に当たる場所だった。
「穴だ。」
平安京は何層にもその時代の想念が積み重なった都である。
所々に穴があり、そこに何かが詰まっている。
その詰まりを取り去らないと、地下水盆の清らかな水に行き当たらない。
私と住職が令和に開いた泉妙院も、実際にとてつもなく大きな穴が空いていたところを埋めて寺が建っている。
鞍馬からの玄武からの流れが反転し、今度は南、朱雀門から清らかな水を注がなければならない。それには詰まりを取り去らなければならないのだ。
その詰まりを取り去るのは容易なことではない。
私が生きている間にできるかどうかもわからない。
「ニュ〜平安京」
公家も神官も僧侶も民衆も妖怪も大調和する新しい平安京を再建する。
そんな壮大なビジョンを言挙げしたのは、令和元年に泉妙院が再開することになった時だ。
「臭いのは古い衣をまとった僧侶なのかも・・・」
セージスプレーのおかげか臭いは感じなくなったが、何故か胸が少しざわつく感じが続く。
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4年間も全く休んでいた能の仕舞をイベントで舞わないか?と電話があったのは6月の半ばだった。
それから1ヶ月で西王母の仕舞をお稽古して、祇園祭に京都駅南、東寺近くのイオンモールで舞った。
その少し前から気になっていた西寺跡で西王母を舞うと覚悟を決めたのは、イベント最終日の前日の帰りのバスの中だった。
そして最終日、黒い鰻の夢を見たという方と能の面々と共に、
地の底を掻き回し抱き参らせて天に上げる西王母の舞を西寺跡にて奉納した。
いよいよニュ〜平安京の碁盤の目を織り直すスタートだと確信した。
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お盆も無事終わり、明日香でのエジプシャンオイルの会で久しぶりに友人の水鏡師さんに会った。徳之島に一緒に行った仲間だ。
それから、私の周囲で私の感情を揺さぶる出来事がいくつか起こった。
最初に始まったのは少し前の出来事の思い起こし。
すっきりしない私の感情に未だ共感出来ずにいた。
共感するためには相手を知り理解することから始まる。全く無意識にだ。
それを彼と共有したいと思ってメッセージを送ると、彼は電話をくれると言った。
電話を受け取るために寝床のある家へ帰ると、
何故かトイレが水浸しになっている。
理由がわからないまま、またシャワートイレの誤作動か?と仕方なく雑巾で拭き取り、そのタイミングでかかった彼からの電話に出た。
「どこかで誰かに会われました?臭いがする。」
水鏡師の彼はそう言った。
「え?まだ臭い主はいるの?」
思い出した。
数日前、夜中にトイレへ行った時G(ゴキ)がいて、
スリッパで叩こうとしたけれど、下水管と床の隙間へ吸い込まれるように隠れたのを目撃したことを。
まだ出入りしている。
西寺跡をかき混ぜたら、いよいよ平安京大内裏のど真ん中の穴から噴き出したヤツが私の前へ現れたのか・・・・・
私は丁寧にトイレを拭き掃除し、お香を焚いて、
トイレの中で西王母の謡を謡った。
そして床の隙間を丁寧にピンクのゼロポイントテープで封印した。
(続く・・・)
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