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OCICでTCGジャッジ稼働した話


 海外の大型大会で今回初めてTCG部門でジャッジデビューし、激忙の金土日を乗り越え(?)ました。まだ身体が怠いです。「29あたりで体力の衰えを感じるよ」は本当だった。
今回は約9年半の時(!!!)を超え、やってみたかったことをやれたので記事にしてみます。

OCICで何やってたかが気になる方は前半を飛ばして中盤〜後半の目次を読むといいかもしれません。

【自己を語る】

なぜ海外でジャッジしてるのか?

 簡単に自分の話をすると、5年ほど前から日本のCLでジャッジ稼働
していましたが、(2020,2021年は除く)会社(※ポケモン系列とは関係ありません)のプログラムで2022年7月に大学院に進学するためにオーストラリアに赴任しました。
赴任当初は全くポケモンカードするつもりなかったのですが、その直後にWCSが日本で開催されると聞いて、今後のことを考えて海外でジャッジ稼働を目指すことにしました。(日本のルールエキスパートやオーガナイザーだけでは海外でジャッジやイベントを開くことはできません)
 8月の下旬にオンライン試験を受けて、犯罪チェックを受けて・・・待たされること約4ヶ月、12月の中旬にやっとジャッジになれました。オーストラリア国内の直近大会はOCIC。あとあと知ったのですが、OCICでジャッジ発稼働はかなり珍しいらしく、採用して頂いたことに感謝しかありません。この後も修行は積める限り積んでいきたいと思います。

 正直勉強との両立は滅茶苦茶キツいですが、本番まであと半年しかないんだって思うとちょっとは頑張れる…気がします。そのあともどうやって大会に貢献していけるかが本当の課題なんですけども。

世界大会の運営について

 多くの方がご存知の通り、世界大会は株式会社ポケモン(TPC)ではなく、The Pokemon Company International (TPCi)が運営しており、”ベテラン”ボランティアジャッジ達がジャッジ兼スタッフを務めています。日本のオーガナイザー制度は2015年にできたもので、TPCiでオーガナイザー制度に該当する制度は遅くても2003年に始まっています。世界大会で日本からのボランティアがいないのは、2015年までは該当する人がいないから。(昔は当日受付でもいけたという噂がありますが、真偽は不明)それ以降は海外ジャッジたちと同じくらい経験がまだ私たちは積めてないからではないかなと私は推測しています。
 しかし、実際に通訳は必要なのでWCSではTPCの社員さんや日本語がある程度話せる外国人ボランティアの皆さんによって通訳業務がこなされています。また、応募した人全員が世界大会のスタッフをやれるのではなく、何年もジャッジ業務を経験し、英語がかなり話せないと採用されないそうです。

通訳をやってみたいと思ったきっかけ

 私はWCSの本戦に出場したことはないのですが、自分が会場に遊びに行った2013年と2014年はLCQ (Last Chance Qualifer)といって本戦の前日にBO3・勝ち抜き方式の大会が開催されており2013年だけ参加したことがあります。(日本人は無条件で参加できたはず)LCQは勝ち抜いた5〜6名だけ翌日の本戦から対戦できるようになっていました。ちなみに私は第3ラウンドで敗退しました笑
 当時、日本から世界大会に出場するのは大変厳しく、5月に毎週のように開催される大型大会で優勝した人にだけTAとWCS出場権利が渡されていたので他国との参加者バランスが悪かったと嘆かれているのを耳にした記憶があります。
LCQに参加したあとはサイドイベントで遊んで楽しい思いをしたのですが、日本人選手へのインタビュー通訳を聞いていると「インタビュアーが聞きたかった質問」や「選手が伝えたかった思い」が伝えきれてない印象があり、「通訳をやってみたい!」と思うようになりました。
 2014年については、当日「私スタッフやりたい!」と言えばスタッフをやらせてもらえるという口コミを聞いてWCSの会場に行きましたが、その年から明らかにWCSへの来場者が増え、ボランティアスタッフも人数が増えすぎていらないと言われその年もサイドイベントで遊ぶ人になってしまいました。

「目指すべきは世界大会でジャッジではないか?」という考え

 「通訳業務をやってみたい」と思ったものの、それは普段プレイヤーの人でも英語さえ話せればその業務は務まるなぁとここ数ヶ月で考えるようになりました。でも流石にジャッジは経験がないと厳しい。自分は通訳よりもジャッジをメイン業務にした方が総合的に大会運営における貢献度や日本から世界大会のスタッフ招待してもらえる可能性が高くなるのではないかと思い、通訳じゃなくてジャッジとしてのスキル(つまり英語で裁定を出す、カードの効果の順番を説明する)を上げた方がいいのではないかと考え始め、OCICに臨みました。

【OCICでの稼働】

海外でジャッジをするには

オーストラリアでは海外版ルールエキスパートに合格したからといって、ジャッジが出来るわけではないです。コネクションがないと厳しく、普段からジャッジ稼働をしていたり、店舗バトルを運営している人とお話をしたり、自分の場合はFacebookのコミュニティに投げてなんとか稼働に辿り着けました。

ジャッジ採用通知

参加登録の受付より前に採用通知が配られる予定だったのですが、なかなか来ず。
結果的に案内より12日遅れで届いたのですが、待たされている間飛行機代は払ってしまっていたので選手として参加するべきか凄く悩みました。
 そして1月末に送られてきた採用通知メールには「ステージで日本語のアナウンスをお願いすることは可能か?」と聞かれたので「大丈夫ですよ」と返事をし、ついでに「配信通訳をすることはあるのか?」と聞いたところ大会前日(選手チェックイン日)まで明確な答えは頂けませんでした。
※メールの返事が来ないのはオーストラリアではあるあるです。
他にも時間割きたいことがあったので配信通訳対策は全くやってませんでした。

※ちなみに前日の段階では「日本人が決勝まで上がってこない限りは配信に出さない」という話(日本人がそのラウンドを勝利すると日本人をインタビューしなくてはならないため)でしたが、「可能な限り頑張ります」と答えたら日本人が高確率で選ばれてて「試されてるなぁ」と勝手に思っていました。

大ベテランすぎるジャッジたち

 IC= International Championships なので、日本以外の各国から選手が参加することができるのですが、ジャッジもそれに対応するように様々な国からOCICに派遣されます。オーストラリア国外からのジャッジは10年超えの大ベテランが多く、大半が世界大会でジャッジを務めたことがある人達でした。中には全ての世界大会でジャッジを務めたことがあるという強者も。
 さらにはジャッジ歴12年あるのに初めてOCICのジャッジをやると聞いて、TPCi圏内のジャッジ資格もらってから3ヶ月の身分で稼働させてもらえる異例さと「ああ、これは試されてるんだな」と悟り、「パフォーマンスについて合格を勝ち取らなきゃ!!」と思いました。(実はジャッジ業務が厳しいなら通訳に専念しても構わないとも言われてました)

【大会中の業務など】

Day 0 > チェックイン業務

※笑い話です
今回と全く関係ない話なんですけど、Brisbane Regionalsでチェックイン(受付)した時に「日本と比較してこちらのチェックインはどうだーい?スムーズかーい?」って聞かれて固まってしまって答えられなかったんですよ。そりゃそうだ。受付業務は日本ではジャッジは担当していないから答えようがないんですよね。こちらでのジャッジは本当になんでも屋になるという印象があります。(で、後から「自分なんでこれやってたのかわからない(笑)」とネタにします。)

Day 1 > TCGジャッジ(マスターリーグ)

 日本と同じで対戦卓を巡回しながら、手が上がれば対応しに行きます。
全てのコミュニケーションは英語で行われ、必要があればtranslator(通訳者)を呼びます。通訳者として呼ばれるときは他のエリアから直接呼びに来る場合もあれば、見当たらなければ他のジャッジにオープンなメッセージアプリで呼ばれます。
余談ですがDay1の通訳希望は95%日本語だった思います。

 大体1ラウンドにつき3回ほど通訳をしましたが、自分のジャッジ案件を片付けてると別の卓で通訳待ちが発生し、その通訳も対応に時間がかかるものだとさらに別の卓で通訳が待ちが発生するなど、「待ちが出る通訳者」状態になってしまいました。少なくともあと1〜2人は日英通訳がいないと厳しいかなという印象。途中から頭と腰が悲鳴を上げてたのですが、計算を沢山した後みたいな頭痛だったからこれについては慣れ、というか鍛えればなんとかなるのかな。
 配信については通訳が必要になったら対選卓エリアから引っ張るよ、勝者が日本人なら通訳よろしくねでした。(つまり勝者インタビューする可能性があっても試合は見れない)しかも対戦卓エリアから100m離れてるのでそこそこ遠い(笑)さらに、何故か途中から控室の通訳対応も加わったためにフロア巡回しながら配信終わるのを見計らって配信スペースまで出向くということをしてました。対応終わって携帯見たら通訳依頼が大体1個はある。そして走っていくと解決してる(笑)

 第5ラウンドでタケト君の勝利インタビューをしましたが、Ethanの話を聞いている間にプチっと集中力が途切れるような音がし、聞き逃した結果意図ハズレなインタビューになってしまいました。復習のために配信を見直しましたが、アメイジングイベルタルとはかいのさけびイベルタルのワザの名前を復習したのに聞き落とした自分にショックを受けています。多分みんな気づいていたんだろうけど突っ込まないようにしたんだと気を使わせて申し訳ないなと思ってしまいました。
 ちなみにこの直前に2人のキャスターがはかいのさけびイベルタルについて語ってるのですが、実は別室で収録が行われているので私は聞くことができませんでした。

あとプレイヤーの皆さまにお伝えしたいのですが、海外大会に出るならぜひ読みなおして欲しいのがこれ
(Play! Pokémon Tournament Rules Handbook)
「サイドペナルティ」が日本とは違うルールであったり、「カードの選択」がシャッフルするまでがカードの選択中にあたるなど、昔と変わっている部分があるので海外大会出る度に確認することをオススメします。

ペナルティについてはペナルティクイックチャートPlay! Pokémon Tournament Rules Handbookを比較してみればわかる通りかなり違うので苦労しました。それなりに対応も違うことから困惑している選手がかなり多い印象でした。

Day2 > TCG ジャッジ(マスターリーグ)

 本来ならジュニア・シニアリーグ担当のはずだったのですが、あまりにもマスターでの通訳需要が高いためマスターリーグに変更となりました。
日本ではジュニアリーグのジャッジを務めたことがなかったので、それも伝えた上で楽しみにしていたのですが、事情が事情なので仕方ない。自分が経験することも大事だけど、大会の運営に貢献していくことの方が大事。
 この日の第一ラウンド(10回戦)は誰からも通訳の依頼が来なかったので油断していたところ、第二ラウンド(11回戦)が開始した後にVGC(ゲーム)の勝者インタビューをしてほしいと言われて呼ばれました。「ランクマッチなど一回もやったことないんだよな〜〜〜〜」「てかTCGはスカーレットとバイオレットシリーズ発売してないからポケモンの名前知らない〜〜」と思いながら現場に走って行きました。
 「なんとかやってもらうしかないね」と運営に言われつつ、2-3分後に迫ったインタビューでやれることを考える。まずは勝者のYTさんに私にVGCの知識が全くないことをお伝えし、Shelbie(インタビューしてたお姉さん)に配信で聞く予定の質問、TCGが専門なのでVGCが壊滅的にわからないことを伝え、質問内容を確認。ゲーム自体はクリアしているのでIronmothが奇跡的にミラクル交換がで手持ちにいたこと、ソロレイドで活躍中だったのでどのポケモンか把握できたのは良かった。Muddy Waterも泥水のエフェクトで「だくりゅう」のことだとしかしTatsugiriだけは「ヌメヌメ」「オレスシー!」「オレヌシ」しか思い出せず、恥を捨てて「タツギリ」と呼びました。インタビュー中に助けていただきました。ありがとうございます。ごめんなさい。
 インタビュー終わった後はその他選手への連絡事項をお伝えして持ち場に戻ろうとしたところ今度は全力でTCGの配信担当が走ってくる。今すぐ配信へ来いと。
そして待ち構えていたのがこのシーン。

当該ジャッジになると困惑するらしいダブル通訳ジャッジ案件。
ICならではの光景でしょう。反射してしまうので配信エリアに入る時にスタッフパスは外すように指示されるのですが、私は首からかけたまま入っているあたり、緊急性が伝わるかと思います(笑)

普段はジャッジとして動いてるけど通訳も兼ねているので勘違いされやすいのですが、通訳している時は公平性のため裁定に加わることはできません。
あくまで選手本人が言ったことを通訳して、ジャッジが言っていることを通訳します。ここでは選手×2、通訳×2、ジャッジ本人が絡むのでマイクコントロールが早期盤面解決に必要なんだなと学ぶことができました。

このあとまたVGCエリアに呼びだされてYTさんの次戦の対戦環境のセットアップ補助に入り、「ほ〜〜〜〜ん、こうやって対戦つなぐのか〜〜〜〜〜」と見ながら(本当にごめんなさい)セットアップが完了したところで離席しようとしたらVGCのジャッジに止められ、ジャッジ(?)させられそうになるなどなかなかカオスでした。

 そのあとはお昼食べたり、特殊なジャッジ経歴を持っているために運営層に話を聞かれたり、話聞かれている間に通訳コールで部屋と卓を4往復したり。終わって現場戻ったらEthanより特別企画の話があったのでこの日のボス(Will)に許可を頂いてサーニーゴさんインタビューをノリと勢いでやることに。呼びに行ったら側にいた凱くんの目が「連れてって」と訴えていた気がした(大袈裟)ので私の判断で「一緒にいいでしょ?笑」と提案。EthanがOKしてくれたのですが、カウチについた時点で配信まであと2分しかないと言われちょっとあたふた。
座って映りが良くなる魔法の粉をつけてもらって自分の記憶力の悪さを呪いながらも通訳しました。

そして終わってやっとTCG対戦卓エリアに。試合途中からでしたがジャッジ業務を教えていただくことに。しかし10分後に名指しでVGCの配信エリアに通訳業務があると言われて呼び出される。
またTOP8戦に勝ったYTさんのVGC通訳チャレンジが待っていました。
Shelbieにまた何を聞くのか確認したらゲームの内容より意気込みにした、と言われて助けられました。YTさんも「固有名避けます」とおっしゃってくださったので、通訳自体はなんとかなり誤魔化しつつも形になりましたがやはり自分の記憶力の悪さを呪う。
そして何より本来なら聞きたかった内容とか、伝えたかった内容が私の無知により制限されてしまったことが申し訳ないなと思います。
あと人の名前覚えられない病がやばい。ここ数年で進行してる気がする。
次回チャンスがあればここは改善したいところ。
あと日本にはないのですが、VGCのジャッジがTPCiにはあります。
今回の反省も含めて大会進行に貢献するためにも取ろうかなと考えてはいます。

この日の最後はジュニアの75分戦(途中まで)のジャッジ業務をして終了。

この日から私のSNSは大変なことになり、恐らくこの1日でフォロワーが100人増えました()

Day3 > TCGジャッジ(サイドイベント)

「今日は楽しみなさい」と言われながら担当することになったサイドイベント。
「サイドイベント、担当するの私6年半ぶりかもしれない」という話をしながら説明を受ける。
初めて知ったのですが、TPCi公式特殊ルール集があるらしい。
Pokémon TCG Alternative Play Handbook

ここでチャレンジに気付きます。
「これ、英語で説明しなきゃいけないし、小さい子にわかってもらえるようにしなきゃいけない」

 他のジャッジたちは何度もサイドイベントを担当しているので、「お手本たくさん見たいから1番最後に回ってくる人にしてもらえませんか?」と交渉し、ガン見してサイドイベントを開催。Day1とDay2に比べると緩やかでしたが、なんとか担当できそうだなという手応えをもらいました。

 基本ブードラしか担当してなかったんですけど、次はレイドバトルのやつとか普通のスイス形式の大会の運営にチャレンジしてみたいな。

最後にリーダーから評価を頂くのですが(しかも割と対戦卓で話してるので、丸見えな場所で話をする)「近いうちにまた一緒に稼働したい」と言っていただきました。お世辞でもすごく嬉しい。
ちなみに個人間でもお互いにフィードバックする文化で、お絵描きして裏面にメッセージを書いて相手に渡す文化もあります。みんな絵がうまかった….

最後になりますが、この3日間オーストラリアに来てから一番英語話しました!!
あとオーストラリア人の仲間もいっぱいできました!!!

体力つけます!!
実力をつけます!!

何より、配信通訳の裏側を知れたのは良かったです。

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