反応 と 返事

あかね:ねぇ夫くん、あとでスーパー行かない?
夫:(スマホで通販サイトを見ながら)このデニムほしいんだよね
あ:お?なんで今無視したかな?
夫:無視してないよ!
あ:(ん…?)
夫:デニムほしいって言ったよ!
あ:うん、それは言ってたよね

驚いて目を見開いてしまいました。
そしてすぐに、そういうことか…!と理解したのでした。

「無視」は、相手の表現への無視と、相手の存在への無視があるわけですが、夫にとって「無視」と認識されるのは後者のみなのでしょう。

夫は「私の存在を無視するな」と言われたと捉え、「無視はしていない、デニムの話で君に投げかけたのだから当然君の存在を認めているのがわかるだろ」と答えたわけです。

今の文脈で使われる「無視」の対象を「存在」だと捉えるというそのルートは私には想像つきませんが、とにかく彼にとっての「無視」は存在へ向かうもののみを指すということはわかりました。

説明をせずに「無視」の対象の共有することは私には困難なので、今後は「無視」という言葉を使わずに表現しようと考えています。



それとは別に。


夫は「なんらかのアクションがありさえすればそれがレスポンスとして成立する」と考えている可能性がかなり高いと私は感じています。

あかね「今日はいい天気だね」
夫「今週家賃引き落としだな」
夫にとっては
あかねの話に返事をした
なのだろうということです。

10年前の夫は会話が意思と意味のやりとりであることを知らず、ゆえに相手の言ってることを受け止めようとする意思がありませんでした。
私の話が途切れたのことに気づいたらこう言っていたのです。
「あ、終わった?」
(気づかないこともよくありました、なにしろ基本的には聞いていないので)

私の話に(噛み合っていなくても、別件であってもなににしてもなんらかの)反応をするようになったのは、ここ5年のことです。

そして4年ほど前、夫が英語を学ぼうとした時期に「どんな話にも共通して使える返事を教えて」と言われました。
返事をする、ということに夫は必要性を感じるようになっていたのでした。

ただ…これはウンやそっかぁなどの相槌のことではありません。相手がどんな話をしたとしても必ず返事として成立するただひとつの言い回しを教えてほしい、と言ったのです。

私はそんなものあるはずがないと答えましたが、夫はないということを信じませんでした。

あ「『ここからラフォーレまではどうやって行くのですか?』と『明日は雨だよ!』と『うちのパパのチャーハン最高なんだよね!』とに、全部答えられる言い回しがあると思ってるってこと?」
夫「短いやつならいけるでしょ?」.
あ「短いとかじゃなくて。相手の言ってることに対して答えようとするならオールマイティな返事とかないでしょ」
夫「別に答えないから」
あ「それは…会話じゃないし返事でもないね」


10年をかけて夫は少しずつ理解し続けていますが、理解ぜずに生きてきた時間の方が圧倒的に長いので、相手の話に(とにかくなんらかの形で)反応をする、というところに今いるのではないかと、思います。

意味の成立する返事まで行けるかどうかはもうわからないし、説明するのはやめると決めたので、ただただこうやってひとつづつ捉えることにだけ集中しようと思っています。

もしかしたら捉え間違っているのかもしれない可能性を理解してはいますが、説明されることはほとんどないのでどうすることもできない、むしろ今できる最大がこれなのだと自分に話す日々です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?