「これは確かにヴェンダースのロードムービーだった」映画【PERFECT DAYS】の感想をパーフェクトでない程度に。
お読みいただきありがとうございます。
なんと、主演の役所広司さんがカンヌ国際映画祭で最優秀男優賞を受賞しましたね。賞取りレースと作品の良し悪しは関係ないと思っているいち映画ファンですが、これは流石に嬉しい知らせでした。
尚、この後の感想は作品のネタバレ満載ですので、未観の方はそっと閉じてください。で、観終わった後に開いてもらえると幸いですw
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夜明け前。
2階建ての古アパート。男は隣の神社の、竹箒で掃除する音で目を覚ます。
起き上がり、慣れた手つきで掛布団を4つ折りに畳み、敷布団は3つ折りに。
きちんと重ねて部屋の隅に。
階下に降り、台所で歯磨き。顔を洗い、また2階に戻り、
別室に並べてある小鉢の植物たちに霧吹きで水をやる。
仕事着のツナギを着込み白いタオルを首に引っ掛け階下へ。
玄関先に丁寧に置いてある、
車のカギ
コンパクトなフィルムカメラ
そしてお皿の上に乗せた小銭をちゃらりと掬ってポケットに入れる。
玄関ドアを開けて、彼は空を見上げる。
そして満面の笑みを浮かべる。
さあ、今日も彼=平山の一日が始まる。
アパート前に停めてある作業車。乗り込む前に横の古びた自販機でコーヒーを買う。
缶を持って車に乗り込むも、すぐにエンジンは掛けず。
フロント上部に置いてあるカセットテープを数個引き抜き、
今朝はどれかと選んだ後、缶コーヒーをぐびりと飲んでエンジン始動。
ここまでが、いや、ここからまだ先が通して平山の日常。
幸せの「ルーティン」なのだ。
平山の仕事は、公衆トイレの清掃員。
毎日、決められた箇所を従順に回って清掃してゆく。
そしてその仕事っぷりは、後輩に
「平山さーん、やりすぎっすよ~・どうせすぐ汚れるんだからw」
と言われても、手鏡を使ってまで便器の裏の汚れを気にする徹底っぷりだ。
数件終えてお昼ご飯。
これまたいつも行くのであろう、神社の境内に腰掛け、コンビニのサンドイッチをほうばる。
合間、
見上げた境内の木々の「木漏れ日」に微笑んで
ポケットからフィルムカメラを取り出し、木々をパシャリと写す。
仕事終わり。
自転車に乗って近所の銭湯へ。
銭湯のシャッターは閉まっているが、彼が自転車を停めたとたん
シャッターが開く。
なるほど、な計算しつくされたルーティン。
そこから駅中のドヤ街の安い飲み屋に。
店長は「おかえり!」と出迎え、いつものチューハイが置かれる。
小皿2~3皿平らげてご馳走様。
帰宅。
文庫本の数ページに目を通し、枕元の電気スタンドを切って就寝。
以上!!!!!!!
な、彼の静かな「ルーティン」に、そのうちじわじわと
「ルーティンを乱す」
事象が発生してきます。
流石にその具体的な内容はここでは割愛しますが、
それでも、彼:平山は、
「ちょっと困ったなー」
位には思ってても、自分ができること、を
一生懸命やります。
「あー下手引いたな」
なんてこともあるし、実際、そう思ってるだろーなーなんてシーンも
あります。
けど、
ほとんどセリフの無い中で、役所広司さんは魅せるのです。
「それでもま、いいか」
と笑うのです。
「空を見上げて微笑む」
というのは、この作品の「肝」というか
ヴェンダース監督が一番押し出したかったところなのでは
と感じました。
ヴェンダース監督は、「パリ・テキサス」で素晴らしいロードムービーを仕上げたけれど、
今回の作品では、僕は「内なるロードムービー」を仕上げたのでは?
と感じました。
平山という男の、ともすれば毎日なんともつまらないルーティンの中に生きている男、かもしれないが、
平山は、作中、ことあるごとに「空を見上げて」そして
「笑顔」
なんですよね。
平凡なルーティンのなかでも、作中、色々な「イレギュラー」が起こります。
毎日、同じことをしているようで、世界は毎日同じじゃない。
それは、ルーティンを粛々とこなすある男の
ロードムービー
ではないか。
最後に、
エンドクレジットの終わりに、
「木漏れ日」
という言葉の解説がテロップで入ります。
監督の意向で、多分、日本語でしかありえない
どの国の言葉にも訳せない
「風景描写」
だそうなのです。
KOMOREBI
平山は今日も木漏れ日を見上げて微笑みながら
シャッターを切っていることでしょう。
そんな毎日は、彼にとっての
「素晴らしい日常」
PERFECT DAYS
なのだから。
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