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グッズ製作の知られざる裏側。エヴェッサ×オリックス×セレッソのグッズ担当対談

<掲載日:2018年11月6日>

※こちらは過去に実施した舞洲Voiceのインタビュー記事になります。

チームにとっては収益を得るため、ファンにとってはチームを応援するために必要不可欠な「グッズ」。試合会場では様々なグッズが並んでいるが、それがどのような過程で出来上がっているのかは、ファンには意外と知られていない。
そこで今回は、大阪エヴェッサの森美奈氏、オリックス・バファローズの大倉敏男氏、そしてセレッソ大阪の浅田力氏というそれぞれのチームのグッズ担当者を招いた。グッズ製作の過程と知られざる裏話を語り合っていただく。

企画から販売、管理まで全てを行う
—まずはじめに、グッズ担当者になるまでの経緯を教えてください。
セレッソ・浅田:私がセレッソ大阪に入社したのは2010年で、それまでは地域の情報誌やWebに関する広告の営業をやっていました。そして、その経験を生かしてより地域に特化した仕事をしたいと思っていたところ、友人からセレッソの紹介がありました。
実際に説明会へ行ってみて、自分のやりたかったことにすごく近かったのですが、正直に言うと私はサッカー経験者でもなければ、スポーツの世界で働きたいわけでもありませんでした。セレッソは名前を聞いたことがあるくらいで、選手の名前も知らなかったんです。
それでも縁があって入社することができ、入社当初はスポンサー営業を担当して、その後はホームタウン営業を行なっていました。2013年にグッズ担当となり、現在は5年目を迎えています。

エヴェッサ・森:私は前職で営業をしていたのですが、学生時代にずっとバスケットボールをしていたので、バスケットボールの仕事に就きたいと思っていました。エージェントに依頼して転職活動を行なっていたところ、大阪エヴェッサの公募を紹介していただき、すぐに応募しました。
2015年に入社して、最初は総合学園ヒューマンアカデミーバスケットボールカレッジという、プロを目指す選手が集まる学校の学生募集の営業を担当しました。
その後にグッズ担当へ移ることになりましたが、当時はちょうどBリーグ開幕時で、これまで製作を業者に依頼していたところから、自社製作に切り替えるタイミングでした。

オリックス・大倉:私は2008年にオリックス・バファローズへ入社しました。もともとはファッション業界で勤めていて、その後はメジャーリーグの代理店であるIMGに所属していて、当時メジャーリーグで活躍していた野茂英雄のマネージメントを行なっていました。
その後はメジャーリーグのグッズ製作を経て、現在に至りますが、公募ではなく欠員募集で採用されたので少し時間が掛かりました。

—お三方ともに、スポーツの経験は豊富だったのでしょうか?
オリックス・大倉:野球の経験は全くなく、バレーボールをやっていました。

セレッソ・浅田:中学では陸上部でしたが、高校は帰宅部だったので、そこまでスポーツマンではありませんでした。見た目のスポーツマン感がすごいので、ファンの皆さんから良くサッカーの話をされるのですが、実は全然分からないんです(笑)。

エヴェッサ・森:私はバスケットボール一筋だったものの、女子の選手しか見てこなかったので、bjリーグ(現・Bリーグ)で活躍していた選手のことは全然知りませんでしたね。

—グッズ製作の過程はなかなか知られていないと思いますが、どのように行なっているのでしょうか?
オリックス・大倉:オリックスの場合は直営店を持っていますし、試合開催日は自分たちで販売をしているので、企画から販売まで全て自分たちの手で行なっています。現在は来シーズンに向けて、新商品の仕込みをしている最中です。
1月の初売り、キャンプ、そしてシーズン開幕に向けて、各時期に販売する商品を準備しています。当然ながら、人気選手の商品の入荷数は多くなるのですが、今年は吉田正尚のグッズが群を抜いて売り上げています。

エヴェッサ・森:エヴェッサは企画から製造、販売、管理まですべてを行っています。Bリーグは10月開幕なので、つい最近までシーズンに向けた準備を行なっていました。

セレッソ・浅田:セレッソは現在シーズン終盤ですが、来年2月・3月のシーズン開幕に向けてすでに準備が始まっています。まずは予算を立てて、年間でどれくらい売り上げるかの目標設定をした上で、どのような商品を作るかを決めていきます。そして、業者と打ち合わせて企画を形にし、実際にスタジアムやECサイトで販売を行います。

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グッズ制作は「在庫との戦い」
—ダービーマッチなどでは限定商品も販売されるイメージがあります。
セレッソ・浅田:記念試合や、ダービーマッチなどの注目度の高い試合では、普段は売らない限定商品を販売することがあります。ただ、プロ野球と比べれば限定商品の数は少ないですし、売り上げも低いと思います。
中心選手が節目の出場試合数やゴール数を達成した時に、そういった商品を出すことはありますが、すべての選手で実施するわけではありません。記念試合やダービーマッチの商品も、基本的にはその試合で売り切ることが多いので、在庫はあまり用意していないんです。

オリックス・大倉:在庫との戦いはありますよね。どの時点で売り切れるのを100点とするかを良く考えています。例えば、3連戦に向けて商品を用意したものの、思いのほか売れてしまい、初日の試合前に在庫がなくなってしまったら0点です。
完売させたとしても、プレーボール後と残りの2試合で売るものがなくなってしまいますから。一番良いのは、3連戦最終日の試合終了直前でなくなることです。なかなかできることではないですけど(笑)。

セレッソ・浅田:入場者数や天候など、様々な要因がありますからね。過去の実績やチーム状況を踏まえて、これがベストだと思って準備をしていても、なかなか売れなかった経験は何度もあります。
選手にフォーカスしたグッズを作っても、急に選手が怪我をしたり、移籍したりして売れなくなることもありますし。その時はすごく切なさを感じます(笑)。
【▷次ページ】予想以上の活躍でグッズの売上げが跳ね上がることも

選手の活躍や結婚などで売上げも変わる!?
—グッズ担当として何か不安に思ったエピソードはありますか?
セレッソ・浅田:私はずっと営業をしていた人間なので、2013年にグッズ担当へ異動と言われた時はかなり不安でした。2013年はチームの調子が良く、4位でリーグを終えることができたので、選手もメディアに露出する機会も数多かったので、余計にプレッシャーがありました。
セレッソのグッズ売り上げが最も良かった年は2014年です。当時は日本代表選手が多かったですし、(※)ディエゴ・フォルランという大物選手も海外から移籍してきました。
※ディエゴ・フォルラン・・・元ウルグアイ代表のフォワード。2010年のFIFAワールドカップ南アフリカ大会では自国の代表を4位に導き、大会MVPに選出された。

今でこそイニエスタ選手やフェルナンド・トーレス選手など、世界的スーパースターがJリーグで活躍していますが、当時はそのような存在が彼しかいなかったんです。だからこそグッズが爆発的に売れましたが、経験による相場も分からなかったので、在庫が足りなくなってしまうことは良くありました。だいぶ悔しい思いをしましたが、かなり勉強になりましたね。
僕から大倉さんへ聞きたいのですが、野球は選手の数もグッズの種類も多いですが、やはり年内に売り切ることに苦労はありますか?

オリックス・大倉:主に何年も売り続ける定番商品と、そのシーズンで売り切る商品の2つがあって、加えて野球は限定商品も数多く出てきます。ただ、中には在庫限りで販売を終える予定だったものの、ファンの皆さんの要望で再入荷をする商品もあります。
野球は選手が多く、しかも全選手のグッズを販売しているので、かなりグッズ売り場のスケールが大きくなります。

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エヴェッサ・森:Bリーグはまだ3年目なので、正直なところ、掴めていないことが多いのが現状です。グッズ担当になって1カ月くらいの時に、Bリーグに所属する各クラブのグッズ担当者が集まる会議が東京で行われたのですが、たまたまそこで講演なさっていたのが大倉さんでした。
当時は右も左も分からない状況で、グッズもすべて業者に委託していたので、社内でも誰かに聞くことができなかったところで大倉さんに突撃で相談して、業者なども紹介していただきました。

セレッソのスポーツクラブに知り合いがいた関係で、浅田さんとも繋がることができ、ECサイトを開設するタイミングでご相談させていただいたこともあります。ただ、その時は電話で相談していたので、お会いするのは今回が初めてです(笑)。
bjリーグからBリーグになって、選手の顔ぶれや来場者数も大きく変わったので、何をどれくらい作れば良いのかが全く分からなくて。最終的には在庫がほぼない状態でシーズンが終わってしまい、機会損失していました。選手の活躍ぶりや結婚などでも売り上げに変化が見られましたね。

—セレッソでは2016年に柿谷曜一朗選手が結婚して話題を呼びましたが、グッズの売り上げに何か影響はありましたか?
セレッソ・浅田:多少は影響があったかもしれません(笑)。それ以上に、ある選手が予想以上の活躍をしてグッズが足りなくなることは良くあります。

エヴェッサ・森:前のチームでは目立った活躍をしていなかったのに、移籍してきて才能が開花することはありますよね。あとはホームゲームが続くと在庫は当然少なくなるため、ファンの皆さんが欲しい商品を確保しきれなかったこともあります。
来週には在庫が届くと説明しても、1週間後には購買欲がなくなってしまう可能性もあるので、欲しい時に買っていただけるようにしなければいけません。ファンの皆さんにアンケートを実施した時には、商品数が少ないという意見もたくさんありました。

[後編へ続く]

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