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3チームが舞州で相互集客することの意義とは。【エヴェッサ×オリックス×セレッソの営業マン対談】

<掲載日:2018年7月30日>

※こちらは過去に実施した舞洲Voiceのインタビュー記事になります。

舞洲スポーツアイランドと呼ばれている通り、スポーツ施設が充実している舞洲地区。この地区の活性化のためには、本拠地を置く3つのプロスポーツチームの力が必須である。
大阪エヴェッサ・オリックス・バファローズ・セレッソ大阪の営業マンに“スポーツチームの営業”とはどういうものか話を聞いた。前編に続き後編である今回は、営業活動の難しさや楽しさを語っていただいた。

相互集客の難しさもあるなかで、横断的に舞洲にホームタウンを置く3チームとして積極的に手を取り合いたいと考える3者。舞洲地区を盛り上げるとしたらどのような取り組みができるかということについても、営業マン目線で考えていただいた。

スポーツの世界でも営業は営業


-スポーツ業界に入る前には、どういう仕事があると考えていましたか?また、持っていたイメージとそのギャップなどがあれば教えていただきたいです。
オリックス・山本:特に考えたことなかったですね。子どもの頃からプロ野球に憧れていて、プロ野球の球団での仕事はものすごく楽しいことばかりをイメージしていましたがこんなに大変だとは思いませんでしたね。

最初は野球の会社だから主な仕事は、チケット売るぐらいかなと。でもまあ入ったら放映権の営業やグッズ販売、飲食販売があったり、スポンサー営業があったりと。また、新卒入社ではなく、社会人3年目での入社、上司も先輩も即戦力で見ているので、営業成果が出るまでは焦りやプレッシャーが大変でした。

また、チームについて全国を飛び回ったり、キャンプの時期など海外や沖縄へ行くというようなイメージもありましたけどね。おそらく一般の人はそういう、選手と近いところで仕事ができるというような華やかなイメージを持たれているかと思いますが実際には泥臭い営業的な仕事が多く、扱っている商材が違うだけで一般的な事業会社の営業職と一緒なんですよね。

今でこそスポーツビジネスが注目されるようになり、また、インターネットの普及で情報もとれるようになったのでスポーツの業界での仕事もイメージしやすくなってきましたが、当時は何もわからないまま今の会社に飛び込んでいきました。野球が好きだからという純粋な理由だけだったので入社後はそのギャップもあり、苦労しました。

エヴェッサ・清水:スポーツチームならスポンサー収入やチケット収入、マーチャンダイジング、放映権など、様々な収入源があります。特にスポンサー収入とチケット収入が大きな収入源なので、そこを担っているとなかなか結果が出ない時は落ち込みますし、逆にスポンサーが獲得できたときや観客がたくさん入っている時は嬉しいです。

セレッソ・猪原:スポンサーの営業をしている時、例えばチームが3回降格するとします。1回目は1年で戻りますからお付き合いくださいと頼めば良いですし、2回目も同じように伝えればご理解をいただけることが多いです。ですが、3回目となるとその話も通用しません。それでもなんとかやりますと伝え続けてご理解いただくしかないですね。

ただ、降格しても「試合の観客動員数はあまり減ってないですよ」ということや、「ファンクラブの会員数が今このぐらいです」というお話もさせていただいたりしています。このように、数字やデータを見せていくことで説得力を出せるので、スポンサーさんも継続しようと前向きに検討してくれますね。単純に「この広告料はいくらです」というより付加価値として何ができるかというのを見せることが大事だと思っています。


-選手を獲得するためなど、スポーツチームの運営に必要なお金は元を辿れば営業を担うみなさんの成果だと思います。
エヴェッサ・清水:我々にとって企業から頂ける協賛金の一部はBリーグとしてのミッションでもある“夢のアリーナの実現”のためアリーナの演出にも使わせていただいています。昨シーズンに限って言えばチームに負けが多かったのですが、エヴェッサの試合を見に来て、「負けてしまったとしても演出が楽しかった」という感覚は、特に子供が得ることが多いんです。そして、子供のときに感じたものは、大人になっても凄く覚えているものです。

舞洲の存在が3チームの距離を近づけた


–平日に3〜4万人を集められるという点では野球は他のスポーツよりも根強い人気が有るように思えます。

オリックス・山本:プロ野球界全体の話になりますが、昨年の12球団合計の年間動員数は2,500万人を超えています。この50年間で2.5倍に伸びています。球団によっては1試合当たりの平均動員者数が42,000人を超えています。メジャーの人気球団と比較しても全く遜色ありません。国内の某球団はチーム成績に左右されながらも主催試合の約70試合をほぼ満員にしているんですよね。世界中のプロスポーツリーグの中でも、観客動員数だけでみると日本のプロ野球の集客力は非常に高いと思っています。アメリカのプロスポーツ、ヨーロッパのサッカーと比較してもスポーツコンテンツとしては、高いバリューを持っています。そういう意味でいうと日本のプロ野球はは約80年の歴史で野球を娯楽の一部として定着させているので、各球団ともにそこの経営努力は純粋にすごいなと思いますね。

そんな中、僕らバファローズの平均人数は現在、約23,000人なんですよね。土日など多い時は35,000人ぐらいは入りますが、平日の少ないときは10,000人台だったりとバラつきがあるので、平日の底上げが課題だと思っています。

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セレッソ・猪原:勝敗が少なからず影響してくる中で、たくさん人が入って、なおかつクレームがないというのが大切です。たくさん入るといろんなところに迷惑かけることになるじゃないですか。無事に何もなく終わることが1番大事かなとは思いますね。

–野球は試合が多いので、毎試合多くの観客を動員させるという取り組みを考えるのは難しそうです。

オリックス・山本:主催試合は年間約70試合あります。試合数に比べるとアイディアの数は限られるので、試合ごとに濃淡をつけながら、ターゲットごとに動員施策やイベントを実施する必要があると感じています。

エヴェッサ・清水:限定的なイベントをどんどんやっていったら良いと思っています。選手に会えるような企画とか、新鮮なものを取り入れていきたいですね。

-スポーツチームを商材として営業活動をする難しさというのはどういうところにありますか?

エヴェッサ・清水:我々は世間認知向上が課題ではありますね。Bリーグ全体で難しいといえばそこですね。ただ開拓する楽しさはありますし、まだまだ伸び代があるなと思っています。ホームアリーナには観客が約6,000人入るんですけど、平均は半分の約3,000人。それでもリーグでは多い方です。その試合の対戦相手にも観客数は左右されますが、それをいかに満杯にさせるかというチケットセールスのミッションがあります。少なくとも毎試合5,000人入るようにしたいと考えていて、そこに難しさも楽しさもあるのかなと思っています。最終的にお客さんが入ったら嬉しいですし、勝ったらもっと嬉しいです。また来ようと思ってもらえますからね。

セレッソ・猪原:最初の頃は商店街に行って、そこにいるおじさんおばさん達と話をして帰ってくるという感じでしたが、自分を知ってもらうことがセレッソを知ってもらうことにもなると考えていました。逆に、そういう人たちからマナーじゃないですけど、コミュニケーションの仕方を教えてもらえたかなと思っています。僕もそういうところに足を運ぶということは大事かなと思っていて、新入社員ぐらいの時に人付き合いを学べたかなというのはありますね。

あとは金額の大小ではないですが、サッカーは色々な海外のチームとやる機会があります。僕が入社してから4試合か5試合ぐらいを長居でやっていて、その内3試合ほど、担当をさせていただきました。僕はそこで直接相手のチームと交渉することあったので、それは良い経験になりましたね。今、Jリーグ全体でアジア戦略をやっている中で、20数年前には考えられなかったことができていると実感すると同時に、そこにとても感謝しています。

あとは、初めて優勝を味わった去年なんかは働いていて良かったなと感じました。優勝争いをすることも何回かありましたし、ロンドンオリンピック後ぐらいからセレ女ブームができてチームが話題になってくれた。加えてその前から香川真司や乾貴士という後にヨーロッパで活躍する選手がいたので、その頃から事業規模が少しずつ大きくなって来ているのかなとは思っています。僕が入社した時の倍ぐらいにはなりましたね。

オリックス・山本:スポーツビジネスの場合、ベースを積み上げていくことが非常に重要になります。これは営業マンの努力だけでは難しいですが、逆に一旦ベースができてしまうと、簡単に崩れることはないように思います。例えばファンクラブ会員数だと、うちは約55,000人ですが仮に今シーズン最下位になっても次の年に会員数が0になるということはないんですよね。当然チーム成績でファンクラブ会員数や観客動員数だとかスポンサーの数は影響は受けますが、そこまで大きく増えたり、減ったりすることはないと考えています。当球団の場合、外部環境やチームのポテンシャルを考えるとまだまだ伸び代があると思っていますので、ファンクラブの会員数や動員数のベースを少しずつ積み上げていくことが重要だと思います。

-オリックスさんは神戸から大阪に移転しましたが、そこで変わったことはありますか?

オリックス・山本:数年前に京セラドームに本拠地を移し、また昨年、ファームの施設や選手寮も舞洲に移転させました。立派な室内設備も揃いました。しっかり育成をしてやるという体制が今まで以上にできたのかなということですね。

私自身も神戸に住んでいますし、少し前は、神戸のシーズンシートのオーナー様から「神戸から大阪に行っちゃったね、寂しいね」という声は聞きましたけど、今は、あまり聞かなくなりました。

今シーズンも神戸で13試合を開催しています。神戸在住で応援していただいている方もたくさんいますし、また、全国各地にファンクラブの会員もいて応援していただいているので神戸だから、大阪だからという感覚は僕はあまり持っていません。

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今シーズンは京都の西京極でも主催試合を開催しました。私の個人的な思いとしては、大阪、神戸ももちろんですが、エヴェッサ、セレッソ、バファローズの3球団で関西を盛り上げていければと思っています。

関西では2020年のオリンピックの後に(注1)マスターズという世界規模な大会があったり(注2)万博開催の可能性があったりします。ジャンルは違いますが、この機会を利用し、インバウンド需要など取り込んだり、東京に負けないようにもっと関西が盛り上がっていくと面白いですよね。こうした機会で関西の人口なんかも増えていくと僕らのビジネスの幅も広がると思いますね。

(注1:ワールドマスターズゲームズは、国際マスターズゲームズ協会(IMGA)が4年ごとに主宰する概ね30歳以上のスポーツ愛好者であれば誰もが参加できる生涯スポーツの国際総合競技大会)
(注2:2025年国際博覧会(万博)の大阪開催を目指している。)

その中で我々3チームで何を協力していくのか?・・・。単純に相互集客を考えたいところですが、これはなかなか難しいんですよ。サッカーを観に行っている人を野球場に、野球好きな人をバスケットボールにというのは、現実的にはターゲットがそれぞれ違うので難しいんです。ただ3チームで、成功体験は共有できるかなと思っています。反応のよかった取り組みの共有ですね。バスケットボールでこういう風にやったら、試合の演出をプロジェクションマッピングをやったら盛り上がったとか、こういったグッズを配ったら成功したとかですね。舞洲プロジェクトができたことによって3チームの距離が縮まりました。これはお互いにとって非常にプラスなのかなと思います。

1つのチームのファンではなく舞洲の3チームのファンに


-3チームでスポーツを横断的にこんなことがやれたら良いなというのがあれば教えてください。
エヴェッサ・清水:舞洲プロジェクトのエイプリルフール企画はBリーグからも評価が良かったですし、このプロジェクトを通じて色々と3チームで連携して行う施策ができたらなというのは思います。

参考:異なるチーム間での大型移籍!?舞洲で行われたエイプリルフール企画の裏側
https://archive-voice.maishima.osaka/post/398/

舞洲は、統合型リゾート(IR)の開業を目指す夢洲地区や、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の中間地点という立地です。僕は舞洲に人を呼ぶということを重要視したいと考えているので、舞洲の地で見るだけじゃなくてプレーする、体験するということができたらいいと考えています。例えば、TV番組でキックターゲットをするという企画をやっているのを見たことがある人も多いと思います。バスケットボールでもそういった遊びがあるので、舞洲プロジェクトの3チーム共同の企画としてやってみたいですね。あとは、ファン感謝デーなどは一緒にやったら面白いかもしれないですね。

セレッソ・猪原: 正直難しい面が多いですね。例えばエヴェッサだとシーズンが重なる部分と重ならない部分があったり、野球のオリックスは年間を通してずっと試合をしていたりとか。アリーナでやるスポーツとそこ以外というのもあります。集客をというところでやるとなっても、果たして同じ客層なのかと言われたら、そこを深掘りしていかないと。さらに、費用対効果の話になると果たしてそれって本当にマッチングするのかなどを分析しないといけなくなります。簡単には「プロジェクトを立ち上げました、相互集客です」というわけにはいかないだろうなと思います。

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ただ、今回ような企画で常に一緒にやっているというのを出しながら、大阪にはこういうチームがあるよとPRしていくことはできますしそれはとても必要だと考えています。舞洲でサッカーと言えばセレッソ、バスケはエヴェッサ、野球はオリックスと、認知度を高めることが大事かなと。そのツールとして今回のエイプリルフールのSNSの取り組みがあると思うので、ネタを仕込んで行くというところでやっていければいいなと思います。

オリックス・山本:3チーム横断的に行う取り組みとして、エヴェッサの清水さんが話したようにファン感謝デーのようなライトな取り組みを一緒に行うのは良いと僕も思います。
例えば、野球やバスケットボールの凄さをいきなり試合を見て感じて欲しいというよりは、バスケットの選手はこんなに上手にフリースローを決めるのか。じゃあ、野球選手のT-岡田選手がやったらどのくらい入るのか、というような企画を楽しんでいただくというようなことが面白いのではと考えています。舞洲の体育館などで、3チームのファンにそれぞれのトップアスリートの技を見てもらうというような取り組みです。ファン感謝デーとしてチアも入れてチケットを売るのも良いかなと。コアファンは向けの取り組みではないかと思いますが、ライトなファンが獲得できるかもしれないですからね。

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