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スポットライト

中学三年時だった
突然、担任のS先生(保健体育)と生活指導のI先生から呼び出された
オイラ何かしたかな?まぁ何もやってないって事はない日々だったから
呼び出されても不思議では無い・・・
「おぉ来たか、ちょっとお前に頼があるんだ」
「頼み?何すか?」
「実は今度の文化祭で演劇部が講演をやるのは知ってるよな」
I先生は国語科で演劇部の顧問でもあった!

「はい、まぁ~」
「そこでちょっと力を貸して欲しいんだ!」
「えぇ~!」と言いながら心の奥底で(うん?将来の俳優としての第一歩?)
(ここから始まるスターへの階段?)なんて事も呟きつつ・・・
「何をやるんですか?」
「ちょっと大変なんだ、責任感と根性それと情熱がないと出来ない!」
「えぇ~なんで俺なんすか?」
「お前ならというよりお前しかいないだろって
 I先生が言ってんだからその期待に応えろよ!選ばれたんだよ!」と担任!
単純なオイラはそう言われると・・・・
「どうだ、やってくれるか?」
「はい、じゃぁ~やります!で何すればいいですか?」と頭の中は「役」
ヤンチャ仲間になんて言おうとか、役によっては馬鹿にされねぇかなぁとか
期待と不安がグルグル・・・・
「ありがとう!で、頼みたいのは照明だ!これは本当にその劇の命だからね」
「ハァ~しょ・しょ照明???照明って照明?あの照明?」

「そうだよ、劇全体を把握して主役にスポットをタイミングを考え的確に当てる」
「やり甲斐のある役割じゃない」と担任
「・・・・・」コイツらグルだな、騙しやがったな!なんて思いつつ・・・
男が一度吐いたツバは飲めねぇぜ!・・・・

「う・うんまぁ~頑張ります!トホホ(涙)」
その後担任には数分間にわたり「ふざけんなよ~!何だよ~!」と駄々こねる!
演劇の練習では、ひたすら台本を読み流れを把握し…
どうライトを当てるのかをシュミレーションする・・・
実際に使う照明機材はボロボロで補修だらけちょっと粗雑に扱うとガチャガチャと
崩壊する、移動させると「キィ~」って音が出るので持ち上げて移動させないといけない、ライトの持ち手部分はものすごく熱いので軍手を少し湿らせてと一手間!
「おいおい、どうなるんだこれ・・・」
いよいよ本番
機材をセットしスポットを当てる位置を確認し構える・・・ものすごい緊張が走る
幕が上がりナレーションが始まるゆっくりナレーターの子のライトを当てる・・・
「よし!」次はあのライトで・・・奥から手前へと動く演者を追うんだな・・・
いつの間にか無心に照明を当て続けている
劇は順調に進んでいる・・・
メインのスポットで舞台中央の主役を照らしている時ライトの持ち手がバキッ!
「わっ取れちまった!やばい!」片側だけでは持ちきれず光がぶれる・・・
「照明はその劇の命だからね!」というI先生の言葉が頭をよぎる・・・
舞台中央で一生懸命演じている部員たち軍手を濡らしライトを抱えた!
熱い!重い!汗が目に入る!しかし手を離すことができない・・・
「まだかよ!あとどれくらい続くんだっけ?この台詞こんな長かったか?」
この辺からもう記憶はない、ただただ熱さととの戦い・・・
震える腕を必死に止めようとした・・・ただその事だけが思い出される。
出演を終えた1年生が手伝いに来た「何か手伝いますか?」
助かったぁ~と思ったことは覚えている。しかし何を指示したのか?
何をしてもらったのかは全く記憶にない。
無事に劇は終わった…というより終わったようだった。
疲れ果て、もうぐったり!
I先生が来て
「1年生から聞いたよ!大変だったな、ありがとうお前に頼んでよかったよ」
「あぁ~大丈夫でしたか?」
「うん、よかったよ!みんな教室に集まるから来なさい!」
教室に入るとみんなから拍手が・・・「なんだ?」とちょっとはにかむ!
「はい、みんなお疲れ様、主役・脇役・それぞれの役はあるけど、これ全てなくてはならない役なんだよ、どの役も絶対に欠けてはならい大切な存在なんだ、だからお互いの役を尊重して大切に思って助け合う事を今日実感できたと思う。その気持ちを忘れないように・・・みんなとても輝いていたよ!」
I先生の言葉に部員たちの目に涙・・・オイラもちょっと感動!
「それから、もうひとつ一番大切なことだ!今日みんなは舞台でものすごく輝いていた、それをより美しく照らしてくれていた人がいることを忘れないでほしい!
埃紛れになって、汗でびしょびしょになって壊れた照明機材をあの熱くなった機材を必死で抱え君たちを照らし続けてくれた人がいることを絶対に忘れないこと!

その人には一度もスポットライトは当たっていないんだ!それでも必死にみんなを支えてくれていたってことだ!
〇〇、ありがとうな、自分自身が輝くことも素晴らしいことだけど、人を輝かせることって、簡単にできることではない、それだけにとても価値があって素晴らしいことだ!
今日の経験を活かせよ!人を輝かせる人間になって欲しい、それができる人だと思うよ!

君のおかげでみんな輝いた、同じくらい君も輝いていたって事を伝えておきます。
本当にありがとう!はい、みんな心から拍手!」
ただただ照れ臭かった!でもものすごく嬉しくて感動した!
「さぁ~片付けて帰ろう!」
「はい!」部員たちの明るい声
なぜかオイラも率先して特に照明機材はまるで自分のもののように大切に丁寧に片付けた
担任がS先生がニヤニヤしながら「やってよかったろう!なぁ~!よかったろう!」
「畜生!」この先生には色々・・・学ばせてもらったなぁ~
片付けを終えヤンチャ坊主たちが屯すもんじゃ焼き屋に急いだ・・・・
何だか気分が良く何かをおごったような記憶が・・・馬鹿だねぇ~!
卒業アルバムのフリースペースに
文化祭では演劇部のお手伝いありがとう!
本当に嬉しかった、みんな心から感謝していました。
演劇部部長〇〇〇〇〇〇
とメッセーを書いてくれたクラスメイト!・・・オイラも感謝してるよ!

人を輝かせる、人を笑顔に、人の成長に関わる・・・
あの時の経験からずっと心のどこかにそんな思いがあった・・
ヤンチャしながらも何処かで思い続けていたんだな!
素晴らしいことに気づかせてくれた、植え付けてくれた先生に今更ながら感謝!

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