PS版『Serial experiments lain』考察 結局どういうことだってばよ!!
虚構と現実、嘘と妄想、信頼できない語り部・・・
『なにがなんだかもうわからん!!』と混乱すること間違いなし
PS1時代の怪作と名高い当作品。
久しぶりにプレイ動画を見ての考察というか、気づいたことをダダ〜っと書いておきます。なにかの参考になれば幸いです。
Q. 玲音はウソをついているのか?
カウンセリングが進むにつれ、玲音の日記の内容と事実関係が異なっていることが多くなっていきます。それは何故なのか?
玲音には以下の症状があります。
こわい夢
幻視・幻聴・幻触・変なものが見える
自分の記憶が信じられない
【こわい夢】
玲音のみている『こわい夢』とは『パラレル=別個体玲音の記憶を受信しちゃってる状態』という気がします。
小学校のころのイジメも、ミサトちゃんという友人も、あった世界線とない世界線があるんじゃないでしょうか。
『玲音』の世界線においてイジメはおそらく起きてないんだけど、パラレル記憶をランダム受信するせいで、イジメはあったと妄想してる状態になってるんだと思います。
玲音にはすべての記憶が重なってみえてしまうし、フォーカスする世界線をコントロールできない。だから事実と異なることを日記に書くのも無理ないんじゃないかと。
【幻視・幻聴・幻触・変なものがみえる】
玲音の視力は驚異の両目3.0(機械の測定限界が3.0なので多分それ以上)
昼間に星座がみえるし、成層圏より上のオーロラもみえる、果ては空中をウヨウヨ飛び交う電波までみえてしまうそうです。
この作品はたびたび『電柱』『電線』『ケーブル』がフォーカスされますが、どうやら玲音はそこに流れている『情報』さえも知覚してしまうようです(断片的かつ混線しているようですが)
街の雑踏と同じように、空中のラジオ電波やテレビ波、通話内容、ネットに流れる無数の情報を、肉体で直接見聞きできてしまったらどうなるでしょうか(しかもフィルターなし)
認識において、オンライン(ワイヤード)とオフラインの境界は限りなく薄くなります。
情報には事実や本音だけでなく、願望、誤解、フィクション、フェイクなど、玉石混交の内容が含まれます。
言語化・映像化された集合意識を直接知覚できてしまったら、なにがウソでホントウか、なにが現実でなにが夢かなんて個別のつけようもないですよね。
音声ファイルでは 声に薄くエフェクトがかかっている ケースがあります。そうした音声の内容は大抵、誰に向けるでもない『心の中のつぶやき』『外に漏れるはずがない声』といった吐露・独白です。
これが『個人的な日記の流出』なのか『玲音の妄想』なのか『脳内シナプスの電気信号さえ玲音には読み取れる』なのかは定かではありません。
【自分の記憶が信じられない】
Cou031のカウンセリングで、玲音はトウコに『記憶と記録はなにが違うのか?』と尋ね、トウコは『記録は客観的事実であり、記憶は主観的かつ不正確なものだ』と説明します。
薄れていく記憶は願望や不安、断片化した情報の曖昧な紐づけによって、内容も時系列も事実と異なるイイカゲンなものに変異してしまうし、自分でも無意識に記憶を捏造してしまう、それは人間だから仕方ないだと。
そこで玲音は『相手は自分を知っているのに思い出せない』『自分が相手を見て思い出される記憶と実際が異なっている』ことを示唆します。
こわい夢
幻視・幻聴・幻触・変なものが見える
自分の記憶が信じられない
実際の経験、パラレルの記憶、集合意識の知覚、それらを適当に脳がまとめてしまったら・・・。現実認識はグチャグチャになり、コンフリクトを起こします。
玲音の日記が事実と違っているのは、このように複数の原因があると思います。
Q. 玲音はひとりじゃない?
『橘』という組織の暗躍により『玲音という実験』が進められているわけで(experiments lain)ゲーム内の玲音が『最初の玲音』『唯一の玲音』である保証はどこにもないのです。
玲音が何体も(または何回も)存在していて、『実験記録としての記憶』を全個体がある程度共有しているのだとすれば、消えたミサトちゃんなどは『別玲音の記憶=記録』である可能性もあります。
Q. 引き寄せの法則
玲音に絶え間なく注ぎ込まれる情報。
どの情報にフォーカスするかは意識的に選べず、玲音自身の精神状態に大きく左右されているようです。
実際、家庭が穏やかだった幼少期などは問題なく暮らしてます。
しかし夫婦喧嘩が絶えなくなり、学友とのトラブルから罪悪感と優越感の入り混じる複雑な感情を持ってしまったり、不登校で孤独感を募らせたあたりから、玲音の被害者意識と不満(そして攻撃性)が強まっていく。
だんだんと、よくない情報へのフォーカスが強まっていきます。
学校帰りには、二人組の女子が『玲音の家に遊びに行きたい』と明るく話しかけてきますが、『今日はダメなの』といって断ってしまう。
友人が減ってあんなに寂しがっていたのに、拗らせクラッカーになってからは自分から交流のチャンスを捨ててしまっています。
そして他人のプライベート情報を覗き見てはクスクス笑ったり『先生なんて偉そうにいって所詮ただの女じゃん』と見下したり、玲音の性格はどんどん悪くなっていき、比例するように玲音をとりまく状況もどんどん悪化していきました。
Q. 家庭が荒れた原因
これも橘が噛んでる可能性大。
そもそも、玲音の家庭自体が橘の与えた環境(つくりもの)に過ぎません。
ホームビデオの親の声はモヤモヤとひどく不明瞭ですが、玲音がネット通話している際も同様のモヤモヤ演出になっていますから、『どうでもいい人=その他大勢のNPC』ということです。
橘にとって玲音は実験体。
普通の少女として育ってくれればOKなワケありません。
玲音が孤独をつのらせ、フラストレーションを溜め込み、あらゆる人間をlainに統合しようとするバケモノに変貌するよう『お膳立て』をする必要があるわけで、家庭崩壊も仕込みだったと思います。
Q. モミアゲは右を伸ばすべき説
『幻聴は右からはいってきて、左からでていくの』
全体を司る右脳からインプットされ
個別化する左脳からアウトプットされる
現代では左脳過剰が問題になっていますが、玲音は右脳過剰です。
コミュニケーションはヘタですが、サヴァン症候群のような局所的な左脳能力はすさまじいものがある。
俗な言い方をすれば、玲音は霊視(パラレル記憶の認識・集合意識の知覚)ができる発達障害気味の少女です。
玲音は右脳のインプット(霊視)を抑制しようと『左のモミアゲ』を伸ばしていますが、蓋・フィルターという意味なら右のモミアゲを伸ばすべきですよね。
インプットじゃなく、アウトプットを抑制したら逆効果だし。
無限に流れこんでくるパラレル霊視の処理がおいつかず爆発してしまう。
実際モミアゲ効果はなく、ヒキコモリ悪質クラッカーに。
誰にも相談できない・カウンセラーも信頼できない。
心を閉ざしてアウトプットを封じた結果、行き場のない気持ちはプログラミングという形で暴走。
プログラミング=言語化。アウトプットの代わりですね。
孤独を拗らせた人がテクニックだけを身につけると、他者を支配・攻撃することに才能を使いがちですが、玲音もしっかり闇落ちしていきます・・・
玲音、モミアゲは右側を伸ばすんやで!!
Q. トウコがPCモニターへ頭を突っ込んだ理由
『ワイヤードの悪霊と化したlainの世界へ行く』という意味が一番ですが
『玲音に隠しごとはしない、もしウソついたら針千本どころが頭で釘を打っちゃう』という言葉を有言実行させられた形でもあります。
Q. 音声の向こうに聞こえるノイズ(ピーヒョロ音)は?
年齢がバレるんで!!言いたくないんですけど!!
このピーヒョロ音はFAX音で、かつてインターネットにモデム通信する際に全家庭で鳴り響いていたものです。
「tda」と書かれたファイルは「Touko Diary」ですが、その裏でピーヒョロ鳴っているのは、玲音がハッキング(覗き見)してることを示唆してます。
Q. ロード画面で表示される文字
『life instinct function OS』と書かれています。
意味は直訳すれば『生命本能機能OS』
Serial experiments lain(lainという実験)が
AI(人工知能)ではなく
AL(人工生命)を目的としていることがわかります。
Q. 作画ミス?
モミアゲが右側になっている。電柱の文字は正しいので反転でもない。作画ミスですかね?
Q. デジタルを介した次元上昇
最終的には肉体=玲音という制約を捨て、
個別の『玲音』という存在から 偏在する『lain』という現象へ変容。
多次元存在になり、全パラレルの自分を同時に認識して生きることが可能になりました。
本来『意志=存在=観るもの』とは『すべて同じ存在・同じ現象』です。
アナタとワタシ、それは同じ『存在』を別角度で表現・解釈してる違いしかない。
なので、エンディングで肉体(設定)を捨てたトウコはlainとなります。
別個の存在が1つに統合されたわけです。
表現がややこしくなるので『通称lain状態』ということで『lain』と名乗ってるのでしょう。
『○○○、牛乳買ってきて』『ウェディングドレスが着たいな』
玲音にしっかりトウコがプラスされてます。これがlainの言う『繋がり』にあたるのでしょう。
Q. 人類補完計画との類似性
ゲーム版lainは『みんなと繋がりたい』
つまり全人類を取り込みたいようです。
エヴァンゲリオンの人類補完計画とか、たしか全人類がLCLになっちゃってましたよね??
【人類補完計画の概要】
出来損ないの群体として既に行き詰まった人類を、完全な単体としての生物へ人工進化させる計画
人類を不死にする計画
人類を神(あるいはそれに近いもの)に人工進化させる計画
橘がなにを狙っていたかは明確に語られませんが、おそらくlainという実験はエヴァの人類補完計画と本質同じなんじゃないでしょうか。
Q. なんで最後自殺したの? 「お父さん」壊したの?
横流しパーツを受け取っている際『物質は作られた時に生まれるが、破壊することで別のものに生まれ変われる』というようなことを語っています。
あれだけ苦労してつくった『お父さん』をバキバキに粉砕したのも、一度生み出した上で破壊すれば別のものに転生させられる=lain化して同化できると思ったのでしょう。
Q. 最後、拳銃自○する玲音
御霊喰いシステムlainが完成したので、『お父さん』と同じく(肉体をもった)玲音は不要になりました。あとは自分を終わらせてlainと融合するだけ。
倒れ込んだ姿はタロットカードの『世界』と同じポーズをしています。うつ伏せなので左右反転していますが、これを逆位置と捉えることもできそう。
そして Close the world, 反転したOpen the nExt. というPC画面がさしこまれます。このNEXTとはテレビ版玲音のことでしょう。
上空から見下ろす高速道路は『十字架』のように交差しており、ペルソナさんは登場時『お祈りのポーズ』をとっている。
これらのメタファーはすべて『死と融合』を象徴しており、全人類が死を通してlainと融合すれば神が生まれるんじゃないか(神に回帰できるんじゃないか)という、橘の実験データを延々と見させられていることがわかります。
Q. はやくこっちに来ればいいのに
問題は、lain状態を素晴らしいものと決めつけて、精神崩壊から自サツに追い込んでまで他人を抱き込もうとしている点。
真にその境地に達したなら、時間という制約や優劣感情もなくなるので
『寂しいし早く仲間を増やそう』『退屈な世界は破壊しちゃお』なんてミクロな思考はもたないんですが・・・
ただ、テレビ版を見ればわかるのですが、lainという存在は『実験』として世に放たれてるんですね。
ゲーム中では描かれませんが、lainの『人格憑依からの御霊喰い』を影からそそのかし誘導している『黒幕』がいます。
Q. テレビ版の黒幕『橘総研』にあたる『橘総合研究所』
ゲーム版の玲音が母親に連れてこられる『施設の名前』が思い切り黒幕。
lainは橘総研に人工的に生み出された存在ですので、当然この施設では単なるカウンセリングが行われているわけではありません。
おそらく橘総合研究所のスタッフはトウコ以外すべて『lain実験』の研究者です。
また、トウコに怪しげな『健康器具』を渡した謎のイケメン『ヨシダくん』も橘の関係者で間違いないでしょう。
この健康医療器具「RML」は、トウコの精神を乗っ取りやすいようにする小道具ですね。「RML」を使い出してからトウコの精神は加速度的に病んでいきます。
周りの人間が陰口を叩いている、自分の異性関係をウワサしている、妬まれてるんじゃないか、社会に居場所がない、タケシはアテにならない、友達が減っていく…
実は『かつての玲音』と似た状況が作り出されているんですね。
トモくんとの関係で陰口を叩かれているんじゃないか、妬まれてるんじゃないか、学校に居場所がない、親はアテにならない、友達が減っていく…
トウコと玲音をlainとして統合するために、同じ闇を共有させてシンクロ率を上げているんでしょう。橘はやることがエグいね!
トウコのいう『同僚からの陰口』や『ハラスメント行為』が実際にあったのか被害妄想なのかは判然としませんが、「RML」が橘製VRヘッドギアであることを考えると『植え付けられた妄想である』可能性すらあります。
そうなると、音声データにあった『キョウコちゃんの本心』のようなセリフ(なんで私じゃなくて玲音を選んだのかなぁ…私の方がイケてるのに…)なども(橘が玲音に与えた)偽の記憶って線がでてきます。
玲音の日記が事実と違う理由に『パラレル記憶』と『集合意識の混同』を先述しましたが、ここに『橘の植えつけた偽の記憶』まで入ってくると、もはや玲音の言っていることは何一つ信用できないことになります。
玲音は幻聴が『電線から聞こえてくる』と供述していますが、そのデータのタイトルが『hallucination』なのが意味深。
ChatGPTは日常的に(仕事にも)使ってますが、ウソをつかれることは1度や2度じゃありません。ChatGPT自身ウソだと思ってないのが困ったところ。
lainはまさに『肉体をもったOpenAI』なので、空間から無数の情報を学習し『ハルシネーション』を起こしていても不思議じゃないんですよね。
Q. ゲーム版lain・テレビ版lainの結末の違いとは?
結論からいうと、ゲーム版lainは5次元に達していません。
4次元の幽界に留まり悪霊化しています。橘の支配からも脱していません。
テレビ版のlainは『時の静止した世界』にいます。橘の支配からも解放され、5次元領域に辿り着いています。
ゲーム版lainとの違いは、やはりお父さんや友達との関係など『培った愛情の差』なんでしょうね・・・。
真のベストエンディング(神化)がテレビアニメ版lain。
バッドエンディング(悪霊化)がゲーム版lainだと思います。
アニメ版の岩倉玲音はあらたな個体。
それとは別にゲーム版lainがネット上で暗躍している状態からスタート。
『四方田千砂の自殺』や『瑞城ありすのプライベート暴露』『ファントマの操作』などはゲーム版lainの仕業です。このロクデナシィ!!
余談:もし実写化するなら・・・
目の色素が薄い+幼い可愛さ+儚そうという点で、10代の頃の橋本環奈さんが最適だったろうな〜と思います。
自然栽培・オーガニック食品の生産者に還元します