アメリカにおけるprison industrial complexとは何か

12月12日(木)

今日はポスト構造主義について書こうと思っていたんですが、Queer migration scholarshipの勉強をしているときにふと見つけた「Prison Industrial complex」が分からずリサーチをしているうちに、なかなか闇の深いアメリカ社会の問題として扱われていたので今日はそれについて書こうと思います

全く話は変わるんですが、最近、日本語よりも英語の方がニュアンス的に通じるなあっていう言葉がちょこちょこあって、言語って難しいなあとひしひし感じております(小並感

ディベートやってるときもあったんですが、英語でインプットしてしまうと、どうしてもその時に用いられたワーディングと内容が結びついた状態で脳の中に入ってくるので、アウトプットの時にうまい日本語で説明ができないんですね

まあ、自分で勉強するときにはいいんですが、日本で誰かに説明しろと言われたときに、たまに英語が入った説明をしちゃうと、聞いてる側が嫌になっちゃうと思うので、ちゃんと日本語でも説明できるようになりたいなあと思いつつ日々勉強しております、いやあ真面目

ただ、今回取り上げるPrison Industrial complexについては、良い日本語訳がどうしても見つからないのでこのまま説明します(以下PIC)

で、このPICとは何か?っていうことなんですけど、簡単に言ってしまえば、アメリカ政府と民間の刑務所が手を組んでいて、刑罰システムCriminal Justice systemが政治的に腐敗しちゃってるよーっていう状態です(全然簡単じゃない)

このPICを知るには、まずアメリカ合衆国がどういう国なのか、コンテクストを知る必要があります

そもそも、アメリカではMass incarceration、つまり大量の監獄送りが行われていて、具体的に数字で見ると、世界全体の人口に対するアメリカの人口比率は1%ほどであるにもかかわらず、犯罪者数の比率では世界の4分の1を占めています

だからと言って、単純にアメリカがそれほど犯罪大国で、人口に占める犯罪者数が他の国に比べて圧倒的に多いのか?と言われるとそうではありません。この数字は意図的に多く捕まえられている、という事実が反映された結果であり、その分、軽犯罪やドラッグによる大量取り締まり、また免罪の多さも現実としてあります

では、なぜ政府は意図的に犯罪者を増やしているのか?ここで、民間刑務所と政府の怪しい関係が問題になってくるわけです

そもそも、アメリカでは刑務所は国の手によって運営されたものでした

しかし、犯罪者の数が増え、刑務所のキャパシティが足りなくなってくると、刑務所の運営を民間企業に委託、つまり民営化を始めます

具体的には、 the GEO Group,the Corrections Corporation of America(CCA)が有名です

そして、民営化すると必ず起きるのが、利益追求による施設・看守のクオリティの低下です

刑務所の部屋やトイレが不衛生であったり、更生のためのプログラムが不十分であったりと、いずれ社会復帰しなければならない犯罪者が更生するための施設としての刑務所の役割が果たされなくなります

そしてさらに問題であったのが、Prison Industrial complex、つまり、政府に対する過度なロビイングと政府からの賄賂という政治的腐敗です

民間企業は囚人が増えれば増えるほど収入が増えるため、積極的に政党にロビイング活動を行い、警察にさらに取り調べを厳しくするようにお願いします

一方で政府側、政党は選挙時に、民間刑務所にお金を渡すことで政党支持者を維持しようとします

このようなお金のやり取りは何百万ドルを優に超え、さらに、政府から得られる収入も億を超えるといいます

このような政治腐敗によって苦しむのは市民で、取り調べの強化により、偶然に居合わせただけの無実の市民に違法薬物の取引をしたとして逮捕したり、政府に反発する思想を持っているとして動物愛護団体会員を不当に逮捕したり、英語を話すこともできないムスリム移民を不当に逮捕しています

さらに、刑務所のクオリティの低下、アメリカ社会の犯罪者を社会から排除しようとするナラティブにより、刑務所を出所しても家がもてなかったり、仕事に就けなかったり、さらにフードスタンプや社会福祉的サービスも受けられない、という現実が待っています

国は、より多くの人を取り締まることで罰金による収入が増えたり、民間刑務所との濃厚な金銭授与の関係が築けるかもしれませんが、無実の市民を不当に逮捕し、法外な刑罰を科すことは明らかに問題であるといえます

さらに、政府と民間刑務所の間で行われている金銭のやり取りや、大量な犯罪者の管理に必要な費用はすべて国民の税金によって賄われているため、逮捕されないといっても無関係ではありません

この民間刑務所と政府の関係は近年問題視され始め、州によっては民営化を打ち切りにするところもありますが、トランプ大統領就任によって移民の取り締まりが強化された今、民間刑務所の需要が再び高まっています

これは、アメリカでの問題ですが、国の予算案で年金や社会保障費の減少を提案したり、水道民営化を図ろうとしている日本政府の現状を考えると、日本も無関係とはいえないと思います

日本は福祉国家と夜警国家の中間のような国ですが、今後の政府の方針によってはアメリカのような自由市場任せの国になる可能性も否定できず、注意深く政府の動向を監視する必要があります

このPrison Industrial complexはなかなか日本語での資料や記事が出てこなかったので、英語の資料をベースに書いていますが、もし新たな情報や間違った解釈等あれば随時修正を加えようと思います