心理検査結果報告書

●実施テスト

1) ロールシャッハ・テスト (性格検査)

2) バウム・テスト (性格検査)

令和2年10月2日実施


【各検査の結果及び所見】

1) ロールシャッハ・テスト

 反応数は11と、非常に少なかったです。今回の少なさは、うまく退院ができない苛立ちや、むしろ憔悴しているような様子から、検査への意欲も低くなっていたことは要因として考えられます。反応数が13以下の記録は、数の少なさから信頼性がなく、解釈の妥当性に欠けるとされます。一応その前提の上で、反応の中で繰り返し出される内容などから、大まかな傾向だけ以下にまとめていきます。
 今回反射反応が2つ見られていましたが、通常期待値が0の反応であり、短い反応の中でもかなり多いと思われました。これは自分の価値を高く持っている人が出しやすいものとされています。ご両親の職業や、自分自身も勉強ができて進学校に合格できていることを考えると、自己価値の高さはあっても不思議ではないでしょう。しかしこのような傾向があると、価値が高い自分という感覚を絶えず再確認せずにはいられないので、それは自身の行動の動機付けにも繋がりやすくなります。異性関係でトラブルが起こりがちだったのは、自分を求められ、価値があることが再確認できる唯一の手段となっていたからかもしれません。自分の価値のあることが再確認させてくれる相手であれば、自分に不利なことがあっても受け入れてしまいやすかったり、欺かれやすい部分が少しあるかもしれません。人との関わりや相手の見極めは慎重にすることが大切でしょう。
 損傷反応は4つあり、全反応の1/3以上も出されていました。思考には悲観的な構えが強くなっており、自己イメージもネガティブで損傷感のあるものとなっているでしょう。通常自己価値の高い反射反応とは同時に多くならないこの反応の多さは、自己評価と自己イメージの間で、強い葛藤があることが考えられます。しかも損傷のレベルは非常に激しく、”ズタボロ” な状態に近いです。ご本人は非常に”傷ついている人” なのでしょう。依存的な傾向を示す反応もみられ、今はたくさん傷つき、他者に助けを求めている状態であるとも思われました。
 全反応数は少ないですが、多くの人によく見られる平凡反応の数や、反応は追認可能なものが8割以上あったことを踏まえると、現実は多くの人と同じように見られるのだと思われました。きちんと分かっている部分はあり、今何が起きているのか、自分のしていることや、周りの状態も把握できているのでしょう。分かっているのに、一見不適応と見られるような行動をなぜ止められないかというと、おそらく、”こんなに傷ついているんだから、仕方がないじゃない” という思いがあるとも考えられました。逆を言えば、傷ついた感覚が癒されれば、多少道を外したりしても、結果現実に即した生活ができる力は持っているとも考えられるでしょう。

2) バウム・テスト

 2分ほどで絵を完成させていました。筆圧はそこまで強くはないですが、用紙に収まるくらいの大きい木を描いていました。まず特徴的なのは、樹冠の中に広がる枝が、右手のような形で広がっていたことでした。このような形は、外向性や環境の多方面に興味を抱きやすい傾向があるとされています。印象としては、手を広げて何かを強く求めているような様子にも見えました。
 樹冠は幹の半分ほどまで茂みが広がっており、いわゆる「頭でっかち」な思考優位の分析的な様子が伺えました。情緒反応はかなり統制されて表出されることが考えられます。幹の部分は木の部分で唯一線が何度も重ねて描かれており、感受性の強さが伺えました。色々感じているものはありそうですが、思考の囲いでうまく外に出せていないものがあるとも想像されました。

【まとめ】

 現実検討に大きな問題はないですが、ご本人はかなり”傷ついている人” でした。自己の価値が高いがゆえに、「傷つけられた」という感覚は強く持ちがちではあるかもしれません。ですが、その感覚があること自体は確かではあるので、そこを癒していくことは、今の行動が変化しうる可能性にも繋がってくることでしょう。何がご本人の「癒し」となるかは、押さえていくべき部分だと思われました。感受性は強く色々感じていそうな様子だったので、感じたことはそのままに話して良いのだと、ご本人が思える関係性が持てると良いとも思われました。
 WAISの結果も参考にすると、表面的な関係であればそれなりにこなせると思われましたが、発達傾向や自己価値の高さからも、人との深い関係は維持が苦手であるかもしれません。ご本人の自尊心はむやみに傷つけないよう大事に扱ってあげながら、困りごとは一緒に共有できるようになると、ご本人も安心して過ごせるでしょう。

以上

※【WAIS-IV 結果】(令和2年6月6日実施)

全検査IQ(FSIQ) : 111 
言語理解(VCI) : 121 
知覚推理(PRI) : 95 
ワーキングメモリー(WMI) : 106 
処理速度(PSI) : 114 


どうやら傷ついているらしい!たすけて〜




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