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邂逅/幕開

僕が本格的にお笑いに興味を持ったのは大学生のときだった。
親が厳しく、実家ではあまりお笑いを見ることができない状態だったので、反動がきたのだと思う。
とはいえ、当時長崎の田舎に在住していたため、東京のライブシーンはさっぱりだった。いつか上京してK-PROのライブを見るのが夢だった。

それで、Twitterをはじめた。
千代園ジャンクションとは別名義の、生でライブを見ている人と交流するためのアカウントを開設した。
タイムラインに流れるライブの感想や演目に目を通して、行ったつもりになって楽しんでいたのを覚えている。
そこで相互フォローになったうちのひとりがまごまごだった。彼女はよくツイートし、よくライブに行く、大切な情報源だった。
タイムラインで見るまごまごは、自分の考えを大切にした、思慮深いひとだという印象だった。リプライを飛ばすと、ハイテンションだが低姿勢で反応してくれた。キングオブコントの知識をそれなりに持った僕のことを「大統領」と呼称してくれる、優しいひとだった。

僕が東京に物件探しに来るタイミングで会おうということになった。
当時新卒で入った会社でセクやパワなどのハラスメントを受け、精神的に参っていた僕は、唯一の救いだったお笑いの話をできることが本当に楽しみだった。正直かなり浮かれていた。
新横浜駅で待ち合わせると、黒髪ボブの、大人しそうな女の子がいた。
「はじめまして」と挨拶すると「(芸人の)顔ファンっぽい顔してんね」と言われたのは未だに忘れられない。

春水堂に入って、タピオカを飲みながらお互いの話やお笑いの話をした。
ストレスで胃がうさぎのそれくらい小さくなってしまった僕はタピオカ1杯を飲みきれず、ありえねー、と笑われた。
はじめて会ったのに「芸人と繋がることを生きがいにしてそう」「バティオスの裏で出待ちしてストレッチーズの連絡先聞いてそう」「メチャクチャ尖ってる」「性格悪っ」「存在自体が大喜利」「ぶっ殺す」「カキタレ女じゃん」と様々な暴言を吐かれた(これらの暴言は密かにメモをしていたので、とりあえず全部貼り付けておいた)。
友達として見てもらえているのがすごくうれしかった。
その後サイゼリヤに行き、結果13時から23時まで喋り続けた。あまりにも気が合うのでLINEを交換した。
2019年8月27日のことだった。

無事家も決まり、晴れて上京した。
LINEでライブの話や他愛もない話をしつつ、遊ぶ回数も増えていった。
すっかり今の関係になったときに「大喜利をやってみないか」と言われ、コント一筋だった僕は大喜利の知識があまりなかったのだが、とりあえず出されたホワイトボードとペンを手に取った。渋谷のパセラの一室だった。

「こんな遊園地は嫌だ。どんな遊園地?」というお題を出され、「メリーゴーランドで馬の剥製が回っている」と答えたのが、僕のはじめての大喜利だった。
まごまごは「面白いじゃん!大喜利やりなよ」とたくさん褒めちぎってくれた。心底うれしかった。

その後、まごまごの勧めで田んぼマンさん主催のスプレッドシート大喜利に初参加した。初心者会だったが完全な初参加は自分だけで、それはもう振るわなかった。自分は向いてないのかも、とも思った。
そんな時、先輩枠として参加なさっていたFANさんから「面白かった」とお褒めの言葉をいただいた。この一言で、もう少し大喜利をやってみるか、と決意した。そして現在に至る。

まごまごとは喧嘩もするし、泣かされたこともある。でも、渋谷のカラオケで身の上話をしたり、24時間ぶっ通しで通話したり、ここには書けない暴露話をしあったり、喜怒哀楽を共有できるのが本当にうれしい。そんなこと、これまであまり体験してこなかったから。

僕が挫けそうなときにいつも助けてくれる存在。もっと感謝しないとね。

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