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聴講リポート「僕が、社会課題に立ち向かう理由」村上 臣さん×永田 暁彦さん対談

LinkedIn News編集部LIVE!として10月14日に開催された、LinkedIn日本代表の村上 臣さんと、リアルテックファンド代表 永田 暁彦さんの対談から、自主リポートしてみます。

リアルテックファンド代表 永田 暁彦さんのご経歴は以下です。

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2019年には、将来の課題解決に向き合うため、永田さんが副社長を務める株式会社ユーグレナに18歳以下を条件とするCFO(Chief Future Officer)のポストを創設したことでも話題を呼びました。

今回のLIVEでは、「リアルテックやディープテックとは?」という疑問への解説も含めて、永田さんが社会課題の解決に取り組む理由や、ユーグレナに創設されたCFOポストについてのトークも展開されました。とてもスピード感のあったトークから、以下に簡単にまとめてみます。

●リアルテックやディープイシューについて

まず冒頭は「そもそもリアルテックやディープイシューとは?」という質問からスタートしました。
その解説として永田さんからは、

・リアルテックよりもディープテックの方が広い概念
・ディープテックは、グローバルな言葉では研究開発型(AIやR&Dなど)のテクノロジーにあたる

上記に、リアルテックファンドの概念では「ディープイシュー」を加えており、
地球規模の社会課題を解決につながるテクノロジーを「リアルテック」と呼んでいる、とのこと。

では「ディープイシュー」とは何か。
最近では、SDGsなどが挙げられ、社会の中で解決するべき課題とのこと。
さらに具体的な例として、安全な水を世界中に届けることは、仕組みや意識だけでは解決できず、技術的要素が欠かせない、といったケースのように、テクノロジーで解決するという概念が伝えられました。

これらの課題に対するアプローチとして、村上さんからの次の質問は、
例えばビル・ゲイツ財団など、富裕層やビジネス成功者が得た資金をもとに組織を作り、社会課題を解決するアプローチも最近は目立つ中で
「永田さんはなぜファンドをやっているのか?」というものでした。

この問いへの永田さんからの以下のお答えにも、とても明確なストーリーがありました。

・日本とアメリカではお金の持ち方に違いがある
・日本の場合は、現金を多く持っているのは個人より企業(あくまで傾向)
・1つの技術を大規模な機能に活用するには、更に多くの要素技術が必要
・オープンイノベーションでも必然性が高いものがディープテック領域
・念頭にあったのは、いかに大企業を最初から巻き込むか
日本中の企業が参画してくれるように呼び掛けた
・目的は資金に限らず、機能(function)にも一緒に投資・連携すること

一方で、副社長を務める株式会社ユーグレナについては、以下のポイントが語られました。

上場して8年経つ株式会社ユーグレナは、日本のヘルスケアマーケットで売り上げを出しつつ、グローバルな貧困問題と環境問題を解決することに、利益を使っているとのこと。この環境問題にはバイオ燃料開発で貢献されており、永田さんが熱中されているテーマも環境問題だそうです。この話題で興味深かったのは、社内では貧困問題に熱中する人も、環境問題に注力する人も、さまざまだという意外な点でした。

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●社会課題と世代について

次の話題では、LIVEメインテーマでもある「社会課題に立ち向かう理由」についてトークが交わされました。
ここでは永田さんから示された2つの視点がありました。

・先天的な人は、幼い頃から将来はこの課題解決を目指してきたタイプ
・後天的な人は、ビジネス上の成功体験などを通じて始まるタイプ

永田さんもLinkedIn村上さんも、後天的なタイプだそうです。
この視点は、自分はどちらだろう?と多くの人にとって考えるキッカケになりそうです。

また「社会課題について考えるのは若い世代が向いている?」との質問には
「若い世代の方が向いているとは思う」と答えつつも、この点について世代差で優劣がつけられるべきではない、とも語られ、その理由は以下のような点です。

自分たちの祖父母の世代は、ご飯を食べることにも苦労した世代であり、食事やモノへの優先度が高くて当たり前。またその時代ごとのマーケティング手法によっても価値観は影響されている。
逆にミレニアル世代やZ世代と呼ばれる層は、食べることなど基本的な欲求が既に満たされている人も多いからこそ、若くして社会問題に意識が向くのだろう、という視点には、LinkedIn村上さんも共感しておられました。

どの世代が優れているかではなく、歴史的背景の違いを踏まえて考えることが重要、との永田さんの中での結論は、具体例も交えて聞くと、とても納得感があります。

この流れを受けて、LinkedIn村上さんからは、最近のユーグレナの取り組みとして注目された、「18歳以下を条件とするCFO(Chief Future Officer)のポストを創設」についての想いが質問されました。
永田さんはこの点について、自分たちの会社は誰のためのものか、と考え、以下のポイントを重視したと語られました。

・自分たちにとって痛い人(正論を言う人)を意思決定層に入れよう
・この取り組みで日本の大企業経営陣に何かを感じて欲しかった
若者はもっと経済や政治に参加するべきだと伝えたかった

更に、永田さんの「リアルテックファンド」に関して深堀された時間での、
「横並びの大好きな日本の大企業をどうやって巻き込むのか?」といった質問に対しては
「企業の横並び好きを利用した」との答え。
そして最初の数社に参画してもらうための「狙った企業への1点突破の方法」などは、このLIVEでは語られませんでしたが気になった方も多いかと思います。

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●技術を社会実装するための船

永田さんは社会を変える方法として「人の意識を変えること」「仕組みを変えること」に触れつつ、リアルテックファンドでは「技術が変わること」を重視し、そのためには技術そのものに限らず、素晴らしいテクノロジーを見つけて、その「船」に乗る人として、資本家も起業家も社会実装するために必要、との考えが伝えられました

リアルテックファンドでの投資は、
既に資金があるベンチャーではなく、誰も見向きもしないベンチャーに投資をする、人も連れていく、その結果の成功体験を伝えていく、という点を重視されているとのことです。
この話題の際に、永田さんは日本とアメリカでの研究者の立場違いにも触れられ、「成功につながる技術を作った人が儲かるようにしたい!」と熱い想いを語られたシーンも印象的でした。

トーク終盤では、リアルテックファンドでの地方企業への投資が多い点も深堀されました。
地方に技術があるが、ベンチャー企業がない点にも触れられ、地方での成功モデルを作ることで、日本の技術をグローバル展開することもより可能性が高まりそうです。この理由として、日本では各都市間の交通網が発達していることから、新幹線で1~2時間の距離を地方と呼ぶのか、という視点も納得感がありました。都心から、各地は決して遠すぎる場所ではないですね。

私たち一個人ができることについて、永田さんからのアドバイスでは、自分の興味・関心や解決したい課題について、アンテナを張ったり、気になる人の近くに行ったりする(オンライン上を含め)ことで、ディープテックやディープイシューというものが、身近な存在になるとのことでした。

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▼参加者として今回のトークを聞いて感じていること

最近は、世代でカテゴリー分けした記事も増えた気がします。
「〇〇世代は分からない」などの声が世の中に多いからでしょうか?
多くの人が他の世代を知るためのヒントを探している?
別に知らなくても…と思う方もいるでしょうか?

今回のトークでは、永田さんが他の世代について語られた箇所が、とても印象に残っています。「僕の中では既に結論が出ていて・・・」とされつつも、否定ではなく理解や共感した上で、その結論を共有されていた点。こうすることで、違いを活かすことが出来るのかも、と感じた時間でした。

【参考】今回の詳しいトーク内容は、下記アーカイブでも視聴可能です。
LinkedIn Live:
https://www.linkedin.com/feed/update/urn:li:ugcPost:6719546268911210496/

Youtube Live:
https://youtu.be/zVgJfWsMsic

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