見出し画像

【視聴リポート】zoom図夢歌舞伎『忠臣蔵』

2020年7月25日(金)アメリカ西海岸時間の19時~zoom環境で配信された「図夢歌舞伎」を、初めて視聴してみました。
私は、歌舞伎のファンという訳でもなく、「初めて歌舞伎の舞台を観る」という初心者。さらに小学生の子供のいる自宅での鑑賞でした。今回はその特別な体験をリポートしてみたいと思います。

●オンライン歌舞伎の視聴と盛り上がりのキッカケは…

まずは、今回zoomで視聴してみようと思った理由を振り返ってみます。海外に住んでいる今だからこそ、「自分が日本人である」ということを実感する機会は多く、現地の人々とのコミュニケーションで、自分は何をアウトプットできるだろう、という事をよく考えています。例えば、日本の文化に関心を持ち質問下さった時に、何を伝えられるか?急には答えが出ないこともありました。

更に自宅での観劇ということで「家族とも何かを共有できるかチャレンジしてみようかな?」という気持ちもありました。結果的には、子供が歌舞伎の写真をみて、一番に興味を持った「鬼みたいな怒った顔(隈取)について」をYouTubeで松本幸四郎さんが化粧の様子を配信されていた動画を観て、ちょっとした予習をしてみると、子供に限らず親でも豆知識として楽しめる内容でした。このように少し枠を広げて考えたりすることも、楽しみ方の一つだと思います。

さらに、今回の告知記事内にあった
「別空間で演じる俳優や事前収録の役者さんが画面上で共演するという驚きの演出」
というものに個人的にも開演前から期待していました。

視聴環境は、PCをTVモニターに繋いで大画面で観ることにして、自宅ならではの「リラックスした空間を楽しむ気持ちだけ準備」していました。子供は隈取についての予習で満足したようで、本編中は傍らで遊びながらチラチラ観ていました。

前置きが長くなってしまいましたが、本題のzoomでの歌舞伎の内容はどうだったのか?

画像1

●400年を超える歴史でオンライン上映は初

今回の作品は、松本幸四郎さんがオンライン配信専用の作品として構成・演出を手掛けられたそうです。これは長年の歌舞伎歴史の中でも初!とのことで、その記念すべきLIVE上映をオンタイムで視聴できたことは「予想以上に自分にとって特別な体験」となりました。
『忠臣蔵』というストーリーは、今までTV番組を通じても、何度か目にしていたことも、幸いしたように思います。多くの日本人の方にとって、馴染みのある作品ですね。

それでも細かな台詞は、自宅ならではの様々な雑音(遊ぶ物音、食洗器の音など…笑)に紛れつつ、聞き取りが曖昧な部分もありましたが、「視覚効果」は存分に活用されていたように感じました。
役者さんの表情・化粧・髪や衣装・動きなどが、引きと寄りを駆使して表現されていました。
また、画面分割しながら同じシーンを演出されていた点や、視聴者のチャット内容を口上人形を使って中継する一幕もはさむなど、現代のオンライン視聴環境にとても馴染む手法だった印象です。

●本編後の千穐楽インタビューの素晴らしさ

この『忠臣蔵』は第1回~5回までの講演となっており、今回は千穐楽でした。その終了直後にスタッフの方から松本幸四郎さんへの単独インタビューも盛り込まれており、その内容が更にこの日を特別なものにしてくれました。
印象的だったインタビューからの言葉を、メモしておきたいと思います。
・歌舞伎の底力を伝えたい
舞台でないところでお芝居を、との想いから、進みながらも、もう一歩先は分からない中での制作だったとのこと。それでも、こういう歌舞伎の楽しみ方もある、という1つの選択肢を作りたいとの想いから、前に進んでおられたようです。
・自信がないのにやる勇気に自分でも呆れるほどだった
それが出来たらビックリするかもしれない、楽しんでもらえるかもしれない、などの松本幸四郎さん自身の想いから、会を重ねる度に新たな挑戦を取り入れられたそうです。
・歌舞伎を作れる感動
この制作に向けて、稽古を再開された時の想いを涙ながらに語っておられた松本幸四郎さんに限らず、インタビュー役のスタッフさんの想いも含め、心打たれました。

●この体験から何を一番強く感じたか

この視聴を経験して最も価値があったと感じたのは、
「伝統芸能を後世に伝えていこうとする、役者の方の熱い想いを感じ取れたこと」だと思います。そして、時代にあった形を模索する姿は、どんな分野であっても学べる点が多いと実感しました。
「過去に経験したことのないような困難な状況下でも、明日は必ずやってくる」という主旨の松本幸四郎さんのクライマックスでの台詞は、とても熱い想いが有り、このシーンはアーカイブにはない印象深さを感じるものでした。

申込当初は、世界各地からの視聴を想定していないのかな?という疑問を持ちましたが、プラットフォームの仕様云々ではなく、日本人として伝統芸能の魅力を認識できているか、それをまず一個人のレベルから意識してみたいと視聴後には感じました。