春はあけぼの、夏はBBQ


ちりちりと、うなじが日に焼ける音がする。

夏は嫌いだ。

出かける前の準備時間が延びるくせに、駅に着くころには全てが台無しになっている。
だらだらと流れる汗は留まることを知らないし、冷房に冷やされたお腹はすぐにトイレへと私を誘う。

食べ物だってちょっと置いておいただけですぐに傷むし、晴れてるかと思ったらすぐに土砂降りになるし、台風は楽しみな予定も吹き散らす。


四季の中で、夏が一番嫌いだ。

なんだか街中のすべてがキラキラ、いやギラギラしているし、夏が好きだと言う人は、なんだかんだ根が明るい気がする。


ありがたいことに、この年になって友人からバーベキューに誘われることが増えた。

増えたというか、今までバーベキューなんていう行事は、陽キャと呼ばれる私とは別世界に住んでいる人間が好んでやるものだと思っていたし、実際、私の中では、アウトドアが好きな親戚と夏休みに家族ぐるみで行う、一年か二年にいっぺんの法事みたいな行事でしかなくて、友人とのバーベキューなんてしたことがなかった。

実際にやってみると、友達とやるバーベキューは楽しい。

普段は絶対に喜んで食べないようなスーパーの安い肉も、なんだか雰囲気が美味しくさせる気がするし、そもそも炭で焼くと大抵なんでも2ランクくらい美味しさがアップする。

焼くのが下手なのに焼きたがりで、なんどもひっくり返すくせに、最後には焦がすやつ。焼くのがやたら上手で、いい感じにやけたらみんなのお皿に取り分けてくれるやつ。ちょっと凝った料理を網の端っこで作ってくれるやつ。飲み物の入ってるクーラーボックスの上に座って、飲み物担当してるやつ。適度に動いて痒い所に手が届く担当のやつ。下準備もしないし、片付けもしないで、ずっと食べて遊んでるやつ。全てがこの空間を作っている気がする。

でも、結局はバーベキューありきで楽しいわけじゃない。

この場にいる友人と過ごすことが楽しいのであって、これが室内の冷房の効いた、ホットプレートでの焼肉でも、別に同じように楽しいだろう。

ただ、たまには”それ”らしい、非日常的な楽しみを享受するのもそれはそれでいいかなと、川で冷やしたスイカや、氷水に浮かぶビールと缶チューハイ、買いすぎた肉なんかを見ながら思うのだ。


夏の雨の匂いがする。また明日も東京は暑いだろう。

やっぱり夏は嫌いだ。

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