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【彼女感ポトレMVの金字塔】もぐもぐMV考察#3「mol-74 / エイプリル」


はじめに

映像制作活動のアウトプットとしてこのnoteを書いています。
都内で副業映像クリエイターをしているまひかんと申します。

今回は、いまや様々なバンドのMVで使われる
可愛い女の子を主軸とした「彼女感ポトレMV」(と僕は呼んでいます)の
金字塔であると個人的に思っている、
mol-74の「エイプリル」についてゆるく考察していきたいと思います。


制作情報

director : Takayuki Hayashi
cinematographer:Takayuki Hayashi , Hiroaki Muranaka
production manager : Takahiro Tarui
editor : Koshiro Nakamura (dadab)

YouTube概要欄から引用


ジャンル

  • バンド

  • ロック

  • ポストロック


目を引いたポイント

僕が初めてこのMVを見たのはおそらく2017年頃だったと思います。
その時点ではこういった
特に演技を意識しない素の状態の女の子が、
彼氏の記録映像としての目線で、
フィルムチックな編集で儚さを感じられるMVはそこまで主流でなかったように感じます。

2023年現在では、最近だと優里の「ドライフラワー」や、あたらよのMVが記憶に新しいかと思いますが
この手法、構成でのMVの中では群を抜いてエイプリルが
哀愁や儚さを感じられ、MVを見終わった後に軽くロスになるような気さえします。

今回はそんな彼女感ポトレMVの金字塔である
エイプリルのMVについて、
なぜこんなにも儚い印象を受けるのか。
他の彼女感ポトレMVとの差はどこにあるのかについて
自分なりにゆるく考察していきたいと思います。

撮影について

京都を舞台に、スナップ写真や彼氏目線のスマホ動画を混ぜ合わせつつ
最終的にはシネマカメラで撮影したと思われる美麗な桜ショットで締めくくっています。

撮影手法に縛りはなく、このMVのテーマである
ありのままの彼女との思い出を損なうことなく映しています。


これから考察していく内容はどうしても
他の同ジャンルMVと比較する形になってしまいますが、

決して。

決してその他のMVを下げたり批判したりするものではないということはご理解頂きたいと思います。


冒頭に記載したこのMVに特に感じる儚さについて、
自分は以下の要素があるのではないかと考えました。

  1. (元)彼女との思い出の総量の多さ

  2. 一目見て感じられる彼女との関係性

  3. 最後の最後に訪れた「春」


ひとつひとつお話していきます。

最初に書いた「彼女との思い出の総量」ですが、
このMVのカット数、めちゃくちゃ多いんですよね。
数えてみたら約130カットありました。

参考までに、同ジャンルトップ再生回数の
優里の「ドライフラワー」と、
エイプリルと同じくらいの再生回数の
あたらよの「夏霞」と比較してみると、
(300万ぐらい違いますがあと数年で追いつくとして…)

優里の「ドライフラワー」は約95カット
あたらよの「夏霞」は約62カットでした。

さらに各カットのうち、
彼女との思い出シーンの中で
シチュエーションや季節感、衣装の種類も数えていくと

「エイプリル」
■シチュエーション
湖ボート、ドライブ、買い物、川遊び、神社、喫茶店、ご飯、ギター、カメラ撮りあいなど、その他細かい点も含めて約15パターン
■季節感
春、夏、秋
(コートにマフラー衣装はあるが、明確に冬なシーンは見つからず)
■衣装
約9パターン

「ドライフラワー」
■シチュエーション
鎌倉旅行、家、ドライブ、ごはん、温泉卓球、花屋、海、花火
計8パターン
■季節感

■衣装
3パターン


「夏霞」
■シチュエーション
古民家、海岸
計2パターン
■季節感

■衣装
2パターン


このように異なるシチュエーションカットの豊富さ=彼女との思い出 に直結し、
より今まで過ごしてきた時間を感じられるのではないかと思います。
どれだけ一緒に過ごしてきたか、思い出を共有してきたかを表現するには、
ストレートにその量を増やすことが一番の近道なのかもしれません。


2つ目に書いた「一目見て感じられる彼女との関係性」ですが、
エイプリルに登場する女性カットでは
とにかく彼氏目線で、常にそばに居るような人懐っこいシーンがとても多いです。

距離感から男女の関係性の良さが感じられると思います。

「ドライフラワー」も旅行カットや手持ち花火カットなど
親密さを感じるシチュエーションではありますが
エイプリルに比べると一歩引いた様な画角の印象を受けます。

正直ここら辺の印象は
女優さんから滲み出るキャラクターや演技力に依存するところも多いかと思いますが、
より親密な感じで撮影したい!と思うのであれば、
手持ちのスマホカメラカット程度であれば
女優さんの仲のいいお友達にお願いしてもらうのも一つの手法かもしれません。


3つ目は「最後の最後に訪れた『春』」です。

アウトロまで登場しなかった春の代名詞「桜」のカットを最後の最後まで引っ張ることで、
曲名「エイプリル」をストレートに表す超絶美麗カットに一気に感情が浄化されます。

またこの綺麗な桜を背に、無表情で歌詞を口ずさむ女性のカットで終わります。


これまでずっと表情豊かで、天真爛漫な印象だった彼女から正反対の表情に。

これまでの関係性が過去のものであったこと。
もう終わってしまった関係である現実を突き付けられます。

これまでの大量の思い出の映像や彼女との親しい関係性のフリが強烈だっただけに、
綺麗な背景と対照的な表情のコントラストにとても惹きつけられますね。


編集について

ラスサビ終わりまで、
スナップ写真に合わせて4:3比率の画角で基本構成しています。

映像は白飛び黒つぶれどんとこいなコマ落ちフィルムチック。
記憶の中の思い出ってこんな画質だよね、というエフェクトを感じます。


2番が終わり、Cメロの間奏前にだけコマ落ちしていない
これまでより画質の良いカットが挟まれています。


またすぐ画質の落ちた映像に戻るのですが、
ここで彼氏(カメラマン)の記憶が
一瞬だけ現実に引き戻される様子を描写しているように感じます。


ラストの桜カットはシネマスコープも使用せず、
画面いっぱいに映しています。
これまで4:3に留めていた写真、映像から解き放たれたような演出が、
フィルムチックで少し暗めだった画面を一蹴して気持ちを浄化してくれます。


もし自分が再現するなら

撮影に必要なのはお金ではなく
時間かなと。

それは四季をさまざまなシチュエーションで撮影する為の時間であり、
女優さんの親しみ深い関係性を構築する為の時間でもあるかなと思います。

さいごに

今となってはありふれた表現方法だからこそ
感情移入出来なければ浅い映像になってしまいます。
リアルな関係性を汲み取って詰めることができれば、多くの人に刺さるMVになる可能性を秘めたジャンルだなと感じました。

ではまた次回。

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