子どもの自己肯定感を左右する、親の「比べる病」

比べられた子供はどう育つ?
本当はよくないとわかっているのに、ついわが子とほかの子どもを比べてしまう……。あの子はちゃんとできるのに、どうしてうちの子はできないんだろう……。このように悩んでいる親御さんも多いのではないでしょうか?

とくに最近では、子育てや教育にまつわる情報が氾濫していて、「うちの子のレベルは平均くらいなのだろうか」「人より劣っているのではないだろうか」と不安を煽られる状況も増えてきています。

今回は、子どもをもつ親を悩ませる「比べる病」について考えていきましょう。

「比べる病」が引き起こす深刻な状況

「保護者はみんな『比べる病』にかかっている」とは、教育評論家の親野智可等先生の言葉です。たしかに生まれた瞬間から、あの子よりも大きい・小さい、歩き始めるのが早い・遅い、言葉を覚えるのが早い・遅い、勉強やスポーツができる・できない……。常にほかの誰かや平均値と比較しながら、子どもの成長を感じているような気もします。

「このように人と比べられてばかりいることが、日本の子どもの自尊感情が低いといわれる原因でもあります」と指摘するのは、保育者として30年以上子どもたちと関わってきた柴田愛子先生です。

やんちゃな子は「どうして、あなたはいつも落ち着きがないの!」と、静かに遊んでいる子と比べられ、おとなしい子は「あの子はちゃんと、こんにちはと言えるのに」と、挨拶のできる子と比べられる。「いい子」でいてくれれば親は鼻が高いわけです。

親は少しでも子どもの成長が早ければ喜び、逆に遅ければ顔が曇ることも。子どもは意外と親の顔色を敏感に察知します。不安そうな顔を見るたびに、「自分のせいだ」と感じて自尊感情が育ちにくくなってしまうのでしょう。

さらに外に出ると周りの目が気になって、必要以上に人と比べて叱っていませんか?
「みんなちゃんとやってるでしょ!」
「見てごらん、○○くんはできてるのにどうしてできないの?」
と比べてしまうのは、「子どもへの評価=親への評価」と思っていることが原因です。わが子が周囲から変だと思われると、親である自分も否定されたように感じてしまうのです。

そして周りのお友だちだけではなく、兄弟・姉妹で比べてしまう親御さんも多いようです。
「お姉ちゃんはできたのに、どうしてあなたはできないの」
「弟のほうが上手にできるじゃない。お兄ちゃんなんだからもっとがんばりなさい」
このように兄弟・姉妹と比べられた子どもは、「どうせ自分なんかダメだ」と感じて、自己肯定感が持てなくなるケースが多いそう。さらに、比べられた相手を恨む気持ちも出てくるので、兄弟仲にも影響するといわれています。

比べられると子どもはどう育つ?

ほかの誰かと比べられることは、子どもの心理面にどのような影響を与えるのでしょうか。

『子どもを追いつめる 親のひと言』(PHP研究所)の著者で教育者、カウンセラーとしての顔をもつ波多野ミキ先生によると、子どもは友だちや兄弟・姉妹と自分を比べながら「自分はどういう人間か」という自己概念を育てていくそう。しかしこの段階で親から比べられ、叱られてばかりいると、マイナスの自己イメージができてしまうのです。

柴田先生は、「子どもは常に『親に捨てられたくない』という危機感を持っています」と述べています。親から「あの子はできているよ」と言われると、「僕よりあの子がいいの?」と不安になってしまうそう。

このように、うちの子はあれができない、これができない、と嘆いて叱り続けていると、子どもは自信を失い、悲観的な思考を持つようになってしまうのです。

また、親自身が自分の子どもの頃とわが子を比べるケースも多いといいます。

たとえば、生活習慣がしっかりしている人や整理整頓が上手な人、物事を要領よくテキパキできる人。こういったタイプの人は、自分自身が子どものころからできていたので、無意識のうちに自分の子どもも「できて当然」と思い込んでいるのです。そのため、親のイメージ通りにできないわが子を見て、「この子は怠けている。ちゃんとしつけなければ」という使命感が芽生えてしまうというわけです。

いずれにせよ、「○○(お友だちや兄弟・姉妹)と比べてどうしてあなたはできないの」「お母さんはあなたくらいの頃にはとっくにできてたわよ」と、ほかの人と比較され続けることで、子どもの自信はどんどん失われ、親からの愛情を実感できないまま成長していきます。

比べられた子どもはどう育つ?3

わが子とほかの子を比べないためにすべきこと

わが子と誰かと比べてしまうのは、人より劣っていると不安で、優れていると安心できるという理由から。しかし、優越感というのは決して自信にはなりません。

少しでもほかの子よりも優位に立たせたくて、入学前に字の読み書きができるようにしておいたり、英語の塾に通わせたりする親御さんも多いでしょう。もちろんその結果、一時的には優位に立てます。しかしあっというまに追いつかれるでしょう。せっかく優越感を手に入れても、それは追い越される不安や、追い越されたときの挫折感と背中合わせなのです。

子育てとコーチングをミックスしたプログラムを確立し、全国で講演活動をしている谷 亜由未さんは、「比べることが悪いのではなく、それによって優劣をつける、ジャッジをすることが問題」だと述べています。

優劣をつけてしまう原因はいくつかあり、親の過去の経験、思い込みや価値観、また親自身が自己否定していることも関係しているそうです。

たとえば、積極的なお友だちと消極的なわが子を比べてしまう場合、これは親自身による「積極的でならなければならない」という思い込みが影響しています。積極的でないとチャンスを逃したり、人から評価されなかったりするため、将来幸せになれないかもしれない……。このような悲観的な価値観が、優劣をつける起点になっているのです。

しかし、積極的でない人が幸せでないと決めつけるべきではありません。「こうでなければいけない」という思い込みに縛られずに、ありのままの自分と子どもを受け入れましょう。

教育・子育てアドバイザーでエッセイストの鳥居りんこさんは、尊敬する中高一貫校の校長先生の言葉「横で比べず、縦で比べよ」を借りて、次のようにアドバイスをしています。

「もし、子育てで悩んだら、お母さんはわが子を偏差値、成績、運動神経、体格……。そういう同級生やらご近所やらの『横』と比べずに、去年と今年のわが子、3ヶ月前と今のわが子、昨日と今日のわが子というように、わが子自身の『縦』の成長で比べなさい」

(引用元:プレジデントオンライン|“良かれ良かれ”で子供を壊す母の共通点5)

周りと比べるのではなく、その子自身のがんばりや成長に気づいてあげましょう。そして、些細なことでも「できて当たり前」と思わずに、ちゃんと口に出して褒めてあげてください。

自分のありのままを受け入れてくれて、肯定してくれる相手に対して、子どもは絶大な信頼を寄せるようになります。「比べる病」を克服したとき、親子関係は今よりももっと深く、強い絆で結ばれるでしょう。

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「比べる病」の原因は、子ども自身ではありません。親御さんの価値観や思い込み、そして自分自身と子どもを同一視しているといった問題もはらんでいます。まずはわが子と向き合い、今もっている「いいところ」や、成長したなと感じる部分に目を向けてみませんか?

以下転載元

ttps://kodomo-manabi-labo.net/kuraberu-byouki


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