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地震への備えは学びから知る

地震予測を知ることが日頃、よく出てくる社会ニュースで私たちの防災を見直すという時期である。東日本大震災だけではなく、宮城県や福島県の大地震が最近起こっている。まだ先日、新しい地震予測が発表され、発生確率が高くなっていることの調査結果が出ている。

 地震が起こりやすい大国といわれる日本は、なぜそうなってしまったのか。理科と社会科を関連付けて学ぶ必要性が高まっているのが新しい科目「地理総合」「地理探究」の一つになっている。(先日の投稿「高校の教科書は変わる」でも述べている。)そこで私は、ある大学の履修において提出したレポートの内容をそのまま引用し、改めて学びなおしたものであることをみなさんに読んで頂ければ幸いである。なお今回のレポートテーマは、「ウェゲナーの大陸移動説と世界プレートの運動について説明しなさい。」である。

1、はじめに
 このレポートのテーマは、地球がどのような構造になっていて、どのように動いているのかということである。その答えを解釈するために有力な説として後世まで語り継がれ、実際に私たちが学ぶ地理学として知っておく必要があるのが、「大陸移動説」をはじめ、「海洋底拡大説」、「プレートテクトニクス」である。従って、これらの内容を理解するために、まずは歴史の流れに沿って諸説を簡易にまとめ、次に「大陸移動説」と「プレートテクトニクス」の二つの説から、世界プレートの運動について整理して述べていきたい。
2、3つの諸説から概観する
 まず時系列で諸説を概観すると、「大陸移動説」から始まり「海洋底拡大説」、「プレートテクトニクス」の順で発見されていくことが分かる。この文献など記録に記すことが多くあるが様々な捉えであり、今回のレポートを執筆するにあたっては重複する点を参考文献からまとめて熟読したものとしておさえたい。
 水野(2015)では、1912年にドイツの地球物理学者ウェゲナーが大西洋を挟むアフリカ大陸と南アメリカ大陸の海岸線の形状が一致することに注目して、もともと一つの大陸が分かれて移動して現在の姿になったのではないかという予想の大陸移動説を提唱し、これが「プレートテクトニクス」理論の発達に繋がったといわれている。鹿園(2006)によると、ウェゲナーは注目する時に地質構造の連続性、化石分布、氷河の痕跡などの有力な証拠を提示し、一定の支持を得たが大陸移動の原動力を説明できなかったとして、この説は徐々に衰退していったのではないかという。しかし、1950年代に入り、各大陸の岩石に記録されている残留磁気から求められる磁北移動曲線が異なることが明らかとなり、大陸移動説が復活したということが研究者の間で広まって定着していったことが分かる。(内藤、2002)
 1960年代前半にヘス、ディーツらが海底地形、熱流量などの研究成果から「海洋底拡大説」を唱え、さらに海底岩石の古地磁気磁化方位が海嶺をはさんで対称の縞模様となることが発見されたことで、海嶺でマントル物質が沸き上がり海洋底をつくってそれが両脇に動いていくと言う「海洋底拡大説」がのちに多くの地球科学者に受け入れられるようになった。ここでいう対象の縞模様は、「断層」であり「広がる境界」を指している(水野、2015)。
 1960年代後半にマッケンジー,モーガン,ルピションらが地震の起こり方,トランスフォーム断層の走向,地磁気縞模様から推定される海洋底拡大速度などのデータを用いて、地球表面を剛体として移動するプレートという概念を導入し、主要なプレートの運動を決定したのが「海洋底拡大説」である。前者が記述してわかっている「大陸移動説」を更に取り込んだ説でのちに「プレートテクトニクス」理論の発達に繋がった経緯である。当レポートでは詳細を述べることについて省くが、このように、地球の仕組みが少しずつ解釈できた。
3、「大陸移動説」とは
 次に、各説の内容や、その説の根拠となる現象や事実について詳しく述べる。「大陸移動説」とは、現在の大陸はかつて全てひとつにまとまっていたとする説であるがウェゲナーによると、大西洋を挟むアフリカ大陸と南アメリカ大陸の海岸線の形の類似性から、かつてこの2つの大陸はひとつではなかったかというのを述べていた。
 この説の根拠となる現象や事実では、内藤ら(2002)によると大陸間で見られる地質構造の類似、化石の分布、氷河の痕跡である。つまり地質構造の連続性があること、両大陸にまたがって、メソサウルスと呼ばれる爬虫類の化石やグロッソプテリス植物群と呼ばれる化石が分布していること、氷河が流れた時にできる削り跡から、古生代後期の大陸氷河が、南米南部、アフリカ南部、オーストラリア、インドにまで広がっていたことを根拠としている。これらを説明するために、古生代石炭紀後期(約3億年前)の頃には、現在の諸大陸はパンゲアという名前の一つの巨大大陸であり、時代が進むにつれて分裂し現在の大陸の配置に近づいていったとしている。このことを水野(2015)は、2億5千万年前ごろにローラシア大陸やゴンドワナ大陸が衝突してパンゲアという一つの大陸が誕生し、2億年前には大陸の移動により再びローラシアとゴンドワナに分かれた。ゴンドワナ大陸は、その後アフリカ大陸、南アメリカ大陸、インド亜大陸、南極大陸、オーストラリア大陸、マダガスカル島と分割されていく。4500万年前には、北上し続けてたインド亜大陸がユーラシア大陸と衝突してヒマラヤ山脈が形成されたと述べている。

4、「プレートテクトニクス」理論とは
 ウェゲナーの大陸移動説から発達したという「プレートテクトニクス」とは、地球の表面が十数枚の硬いプレート(岩盤)からなっており、互いに相互運動をしており、これが造山運動や地震の発生、火山活動などのさまざまな地殻変動を説明することができるという理論である。また「海洋底拡大説」により、地殻の下にあるマントル上部が流動性あることが分かったことで、その上にあるプレートが滑りやすく移動しやすいことが今の地球上の構成で成り立っていることが分かっている。
 つまり、プレートは海嶺で生まれて海溝へ沈み込むことで、プレートどうしが衝突したり、すれ違ったりすることが起こることある。要するに、地震などの地殻変動はプレートの境界部分において発生しやすいからである。プレートには、大陸プレートと海洋プレートの2つがあり、海洋プレートは大陸プレートよりも強固で密度が高いため、2つがぶつかると海洋プレートは大陸プレートの下に沈んでいくことになる。(図A)でみると、北西に進むフィリピン海プレートは日本でいうと南海トラフのところで、ユーラシアプレートの下に沈み込んでいることを指している。(水野、2015)

5、まとめ
このように具体例を挙げたが、さいごに日本は地震の多い国である。これは、ユーラシアプレート、北アメリカプレート、太平洋プレート、フィリピン海プレートの4つのプレートが集まっている場所だからである。
この2つの説をそれぞれ掘り下げて見ながら取り組むことで、世界のプレートの運動が私たち人間の存在しない大昔の働きがこのように成り立っていることが見えてきた。今の地震大国である日本に住む私にとっては、この「プレートテクトニクス」という説が身近であり、地球上の恐ろしさを改めて実感した。その中で私たちのいる日本に目を向けていくと、環太平洋地域では、海洋プレートの沈み込みによる海溝や島弧、陸弧がみられ、日本列島は島弧の例であることに気付く。また海溝がある場所ではマグニチュード8クラスの巨大地震が発生するということが多く報道され、一番恐れているのは前節で取り上げたように南海トラフ大震災(図B)のプレートに注意していきたいと思う頃だ。

 プレートが重なり合っている地域に住んでいるかどうか。それぞれ事前に調べておくことで、自身の生活の中における防災意識を高めることが今からでも遅くない。ちなみに私は、胆振東部地震の影響を受けこのような調査結果を受け、地震の備えを進めていかなければならないことを認識している。(以下、北海道新聞2021年3月27日付記事より引用)

 札幌市内の場合、近くにある月寒断層を震源に震度7の大地震(地図上では赤くなっている部分を指す)が起きれば、ブラックアウト以上に過酷な避難生活をする可能性があるという。また直下型地震の場合、5千人以上の死者が出る、20万人の帰宅困難が出る見込みだという。私の場合、避難所ではなく車中泊での避難から聴覚障がい者の支援などを中心に体制は作っていけたらと思っているが、関心の駐車場に不安がある。とりわけ、これを機に防災意識を高め合うコミュニティづくりも一つ意識して欲しいことを綴じる。

【引用文献】
内藤玄一・前田直樹「地球科学入門」米田出版、2002年
気象庁「南海トラフ地震とは」https://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/nteq/nteq.html
河野長「地球科学入門-プレートテクトニクス」岩波書店、1987年
鹿園直建「地球学入門」慶応義塾大学出版会、2006年
水野一晴「自然のしくみがわかる地理学入門」、ペレ出版、2015年

【参考文献】
高校の時に使用した教科書「新地理A―暮らしと環境―」、教育出版、2008年
権田雅幸・佐藤裕治・藤山佳貴・堀顕子「地図と地名による地理攻略」、河合出版、2007年
西村祐二郎ほか「基礎地球科学」朝倉書店、2002年