チョコボールの箱を解体してそれが紙一枚でできてると知った夏
小学6年生の頃には「動く!光る!音が出る!」みたいなものへの興味は少しずつ遠ざかっていた
湊かなえの「告白」が映画化し、予告映像にめちゃくちゃハマったものの「R15+」なる表記があるから劇場で観ることは叶わないらしいと知った
あとから原作を読んで吐きそうになった。おすすめです
妙に漫画に興味を持ち、ただ飽きない体質だったのでシリーズの1巻さえあれば何周も夢中で読んでいた
小学生の頃はまだ「親しい友人」と「クラスのみんな」との境目は曖昧で、甘く、長く感じた、ただ本当は残酷にも短いあの時間を、未来のことなんて大人のことなんて100年先くらいのことだと思って生きていた
謎解きの問題を自分で作って出題したり、友人と漫画を描いたり、人工言語を編み出したり。あの頃はお金なんかなくてもめちゃくちゃ楽しくて、いろんなことに夢中になれた
お下がりの重いDELL PCを手に入れてからはインターネットも身近で、調べた画像を眺めるだけでもう楽しくて、ランダムにいろんなものを調べまくっていた
その年の夏、親にも友人にも誰にも話さなかった趣味に辿り着いた
それがオーディオドラマだった
人に言いたくなかった訳じゃないし、隠しておきたかった訳でもなかった
他に体験したどれとも全然違う世界だった。今までにないほど夢中になった
高校生なんて遠い遠い先の話だと思っていたのに、高校生が主人公のものでもお構いなしに、オープニング完コピできるまで聞きつぶした
オーディオドラマはその名の通り音しか情報がない。登場人物はどんな見た目で、どこにいて、どんな仕草をしているかは聞く側の想像次第だ
小学生は人生で一番想像力のある時間だ。小さいながら「高校生」という夢の世界を脳にふわふわと思い描いた。それが当時とても楽しかった
その趣味を人に言わなかったことに理由はないが、そのおかげでオーディオドラマという趣味はとても自然に「自分だけのもの」になっていて、そのことを意識せずとも楽しんでいたのかも知れない
先週Twitterで、あるアカウントのツイートをずいぶん久々に見かけた。アカウントが凍結から復活したそうだ
その昔聞きつぶしたオーディオドラマの一つを作った人で、この人の作ったものにハズレはなかった
見かけたことがきっかけだったのかもしれないし、そうじゃないかもしれない。そのオーディオドラマを聞き直すことにした
内容こそ主人公の自分語り甚だしい(後々の話でそこを裁かれる)が、あの時聞いたものと1ミリも変わらず面白かった
最初に聞いたあの時から5年経ったけどストーリーなんて全然忘れてなくて、キャラクターの仕草なんて手に取るように覚えてた
想像と少しの妄想を膨らませながら没頭していたあの頃の自分に一気に戻った気がした。たった一瞬のことだった
今思えば小学生であった時間なんて一瞬だった。宇宙のあらゆることを考えまくっていたが、今の自分よりも全然無垢でそれはそれは輝いていて、何も知らなかったが、なんでも知っていた
その記憶とか空気とか時間ごとイヤホンを通ってきて体じゅうを駆け巡った。夜中の2時とかだったのでいつの間にか少し涙が出ていた
戻りたいとは思わない。でもあの夏がとても眩しいし、好きだ。たぶんこれからもずっとそうなんだろう
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