【逃げ上手の若君】保科弥三郎の戦い方•怒り方について

『逃げ上手の若君』に出てくる川中島の領主・保科弥三郎についてつらつらと考えたことを書きました。

・戦い方から見える領主としての責任感
・怒り方とデバフ具合
・保科領の男たちについて
の3本でお送りします。

【戦い方から見える領主としての責任感】
保科弥三郎の戦い方(4巻29話川中島蜂起)は、心技体揃ったまさに武士の鑑で最高に格好良いんです。ブレない軸で相手の打ち込みを捌き(体)、相手の隙をついて得物を払い渾身の一撃で倒す(技)。そうしながらも周りに気を配り声を掛ける(心)。

しかし結構まどろっこしい戦法というか、一人を片付けるのに時間がかかりそう、初めから一撃で倒すこともできるのでは?と思ってもいました。

しかし、これは彼の領主としての責任感から来るものかもしれません。小領主の保科は武士団の規模が小さい故に郎党と共に奮戦せざるを得ません。ただ領主が突然死んでしまうと郎党や領民に混乱が生じるので、死へと軽々しく突っ込むわけにはいきません。そこで、確実に自分がやられずに相手を倒す方法として、相手を無力化してから(隙の大きい)渾身の一撃を放つ戦法を取るようになったのではないでしょうか。

論理としてはそれが容易に死なないために正しいとしても、勢いや衝動のためにリスクを取って敵を一撃で倒していきたくなるのが、剽悍な武士の心理だとは思います。しかし保科はあくまで領主としての責任を優先させて確実に敵を倒していく、とても思慮深い人なんだなと思いました。


【怒り方とデバフ具合】
領主としての責任といえば、4巻で保科の頭に血が上ったのもそれこそ領主にとっての命である「領民」「領地」を侵されたからでした。それ以降保科の頭に血が上ることは今の所ないので、保科の頭に血が上るのは、武士としてというよりも領主としての誇りを害された時なのではないでしょうか(4巻の件を反省して冷静になるよう工夫した可能性もありますが)。

頭に血が上ることは、渋川義季のようにバフになることは特になく、却ってデバフになっているようです。いつも最優先している領主としての思慮深さがなくなり、大局を見据えた戦略を取ることもできず、更には些細な侮辱にも激昂して分別なく仲間も殺そうとしてしまう。

殺そうとした仲間というのは時行様のことですが、保科にとって彼は「諏訪明神様の御使い様」です。それは単なる使者を超えて、保科が厚く信仰する神の遣わした神使とも言えます。本来なら丁重に扱うべき御使い様を、酒をかけられたくらいで殺そうとしてしまうほどに、頭に血の上った保科からは分別が飛んでしまっていることが分かります。

【保科領の男たちについて】
ちなみに、保科党の郎党も4巻で保科と同様に頭に血が上っていましたが、彼らは普段から割と血の気が多そうです(6巻44話前哨戦ラスト)。保科は郎党と比べると普段は穏やかにも見えます。それは領主として意識的にそうあろうとしている部分もあるのかもしれませんが、ひとたび頭に血が上ると他の保科領の男たち同様に、いや誰よりもワイルドになってしまうのが、保科領の男たちの胸の底に共通して流れている血の気の多さみたいなものがありそうで、面白いです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?