ウマ娘にない(と思っていた)もの

ご家庭4人がそれぞれアカウント作って育成してる有芝さんです(挨拶)

黄金頭さんやtoyaさんのエントリとかを読みつつ

はてさて、そんな有芝さんも、そもそも今年の頭くらいまではウマ娘のゲームが世の中に出ること自体を信じてなかった訳ですが、実際ゲームが何らかの形で出たとして、それが「競馬ゲームと呼べる何か」になること自体が、ちょっと信じられなかったってのはありました。だって、擬人&女体化競走馬が陸上競技よろしく走るレースだぜ(笑)

しかし、フタを開けてプレイしてみたら、これは競馬ゲームだった。

案外、競馬をシミュレーションできていた。

これは正直驚いたな、と。

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継承システムの妙

自分はサラブレッドの血統や配合というのについては、少なからず人よりも熱心にハマって色々と勉強したりモノを書いたり、10万円出してファミリーテーブルを自家用に購入したりするとかしてたのですが、ある意味この継承システムはそういう知識をすっ飛ばすレベルでは「良く出来てる」としか言いようがなかった。

無論、血統論・配合論って意味では、せいぜい2代の血統でしか影響力を語らないようなものってオモチャ的なものに過ぎないのだけれど、単にそういう話であれば、ダビスタだって牝系をまるっきり無視しても「血統のゲーム」として良く出来てるってのと似た意味で、「リアルな素質の伝わり方」を上手いこと表現してるとは思う。

それを担保してるのは、いわゆる因子ガチャと、それの適度なランダムさの調整である。

本作では、主な遺伝要素としていわゆる「青因子」「赤因子」という2種類がある。「青因子」は、トレーニングで鍛錬されるスピード・スタミナ・パワー・根性・賢さの継承力で、育成終了時に上記5つの何れかのパラメータが選ばれてそのスコアをもとに★1~3で因子として与えられる。一方「赤因子」は、馬場・距離・脚質適性の10個のうちランクA以上の何れかの高適性のうち一つが選ばれて、こちらも★1~3がランダムに与えられる。

このランダムさのいたずらが、なかなかに愉しい。

我々は競馬ファンは誰しもが、競馬場での活躍が必ずしも種牡馬としての資質を担保しないという引退後の名馬の難しさを経験しているが、実際どれだけトレーニングでパラメータを上げても意外と★1にしかならなかったり、そこまで鬼のように強かったわけではない馬から★3が出たりするのは、むしろそういう経験のある側にとっての方が面白かったりはするのではないか。

個人的には、何となく育てていたウオッカが中距離の因子を自分と自分の継承元両方でたまたま★3になったことがあるのだが、これを使ったら、ある日タイキシャトルの中距離適性(デフォルトでE)が突然Bに上がって結構ビックリした。配合相手にもこの中距離適性があれば、最終的に適性Aまで上げられる。

これで何が出来たかというと、タイキシャトルでダート七冠馬が出来た。

有馬記念や宝塚記念がそういう文脈で強制出走となると、同じ週に設定された帝王賞や東京大賞典に使うのが難しくなるのだが、そこでマイラーのタイキシャトルはもう少し自由度高い状態で使える反面、距離適性的には中距離難しいのだけど、こういうちょっと配合を捻ってカベを超えられるみたいな仕掛けはなかなか嬉しいところ。一方でウララだとデフォで中距離Gだから物理的に難しいという辺りのバランスも、良く出来ているとは思う。

こういう配合の工夫とままならなさを上手く工夫しつつ、直感的には遺伝ってそんなもんだろという感じで2代でスパっと影響力を切りながら、割とバランスよく作れている辺りは、「血統」が存在しないゲームなのにダビスタ的な血統のシミュレートをしてるような感覚があるようにも。

生産者、馬主としてのシミュレーション

ウマ娘のプレイヤーキャラクターは「トレーナー」である。一方で、上記のような継承でウマ娘を作るところからゲームが始まるので、その意味では「生産者」的な要素も備え持つとこはある。

その中で、より良いウマ娘を作るためには、まず継承の段階で上記のような因子の強いウマを「レンタル」という形で選ぶこととなる。言うなれば、生産者が種牡馬ならぬ種ウマ娘をつけにマネーを払って、というノリに近い。そして、その中でたまたま自分の方に★3因子がついたウマ娘が現れてくれれば、言わば「自分の牧場に種ウマ娘が出来た」状態となる訳だ。

また、今度はそのウマ娘とレンタルした★3種ウマ娘を配合した継承で★3が出ることによって、「自身とその両継承元がともに★3を持つ」という、いわゆる「★9」のウマ娘を作ることが可能となる。それを例えばTwitterなどで自分のIDと一緒に晒したら、何か周りのプレイヤーでそれを借りてくれる人が出て来て、貸したら何かのポイントが自分に回ってきたりするという、「種ウマ娘場ビジネス」的な状態になる。こうした「ブリーダーとしての格を上げて行く」のをソーシャルな仕組みを交えて実現していくのは、なんか「おお、普通の競馬シミュレーションゲームみたいだ!」みたいな感覚はありましたね。

一方、「馬主」としてのシミュレーションの場としては、「チーム競技場」が存在する。馬主ってのは詰まるところ賞金云々以前に「どうだ、ウチのウマが強いだろ」という優越感を争う趣向のゲームなんだけれど、3シーズン育成したウマ娘のプレイヤー間での実力を試す場としてチーム競技場が用意されているだけに、単に生産してこのレースを勝てた的なところに完結しない「馬主としてのコンペティション」が成立している。これもやはりランダム要素が強くて完璧な必勝法は存在しない(ように見える)反面、ある程度ウマ娘のステータスを上げたり必要なスキルを揃えて適切な距離にチーム配分するなどの工夫でスコアを上げられる面もあるだけに、なかなかゲームとして終わらせてくれない。

そういう意味では、騎手も生産者も馬主もいないゲームではあるけれど、少なくとも生産者と馬主って意味でのシミュレーションが提供できているゲームであり、美少女化したウマとのギャルゲをイチャイチャと楽しむようなものではないクオリティとして成立してる(そのくせギャルゲ的な方向にも抜かりが無い)のは、正直「いやナメてた。脱帽だ」とはなりましたね。

でも流石にないもの

はい、上に書いた通り、「騎手」ですね。

指示は逃げ・先行・差し・追い込みのレース前の指示のみ。そして掛かった馬を折り合わせることはできず、前のウマ娘がバテて来たら、位置取り次第では無慈悲にバテたウマ娘とともに後方に吸い込まれて、たづなさんは「ブロックされてましたねパワーを上げましょう」っていうけどお前事前予想でパワー◎って言うとったやんみたいなツッコミを入れたくなることも。正直、こういうフトシとかいっくんの馬券持ってぶっ倒れる的なリスクは回避できないのが、ゲームの綾ではあり。

あと、その上でそういうバ群の捌きという意味では、逃げ馬以外は大体外回す方が強いのよね、という辺り。たまに前がバラっとしたらイン突いておおってなるケースもあるはあるけど、一方でインを取ることが距離得としてパラメータに織り込まれてるようには、少なくともレース見てる感覚としてはあんまりないなぁ…ってのが正直なところ。もうちょい競馬場のシミュレーションとしては、そういう内外の有利不利のバランスが練られてもいいとこかとは、思うかな。

あと、故障とか審議とかは当然現実界に比べたら割と甘いけど、ぶっちゃけ競馬ゲームってその辺を甘くすることで現実競馬では求めえない馬を作れるのも一つの楽しみではあろうから、まぁ、とも。

いうても、ストーリーモードで、メジロマックイーンが秋天で降着したエピソード再現された時は「この世界、審議あるんかい!!」と盛大にツッコミ入れちゃったけどね!

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